SlackやDiscordを使わずに、チャット環境を完全に自前で持ちたい。データを外部サーバーに置きたくない、あるいはライセンス費用を削りたいというニーズは、チームの規模を問わず存在します。
HuLaは、Tauri(Rust製)とVue 3を組み合わせたオープンソースのIMアプリです。Windows・macOS・Linux・iOS・Androidの全プラットフォームに対応し、Apache-2.0ライセンスで無償公開されています。GitHubスターは7,266を超え、フォーク数は961に達しています。
この記事でわかること:
- HuLaが解決する課題とアーキテクチャの考え方
- Tauri+Rustを選択した技術的な意味
- 搭載されている主な機能の全体像
- インストールと起動の手順
- SlackやDiscordとの違い
SlackやDiscordで難しいこと
SlackやMicrosoft Teamsはクラウド管理型SaaSです。会話ログはベンダーのサーバーに保管され、料金はユーザー数に応じて増加します。無料プランでは過去メッセージの保持に制限があります。
DiscordはもともとゲーマーコミュニティSNSとして設計されており、企業向けの権限管理や監査ログは後付けの機能です。
HuLaはサーバーを自前で立てる前提で設計されています。会話ログが自社インフラに収まり、外部送信を遮断できます。コードはApache-2.0ライセンスで公開されており、監査も改変も自由です。
Tauri+Rust+Vue3という技術選択の意味
https://github.com/HuLaSpark/HuLa
HuLaのデスクトップ部分はTauriで構築されています。Tauriはフロントエンドのレンダリングにシステム標準のWebViewを使い、Chromiumをバンドルしません。ElectronアプリはNode.js+Chromiumで数百MBのバイナリになりますが、TauriはRustのバックエンドとWebViewだけで動作するため、インストーラーサイズが大幅に小さくなります。
バックエンドにRustを採用することで、メモリ安全性とパフォーマンスを確保しています。フロントエンドはVite 7とVue 3の組み合わせです。Composition APIとTypeScriptによる型安全な実装が可能で、UnoCSSとSassでテーマ切り替えにも対応しています。
主な機能
メッセージングでは、1対1のプライベートチャットとグループチャットを利用できます。メッセージの取り消し、@メンション、既読表示、リアクション、リンクプレビューカード、履歴管理が実装済みです。
ビデオ・音声通話も内蔵しています。外部ツールに依存せず、テキストチャットと同じ画面から発信できます。
AI統合機能として、複数のAIプラットフォームに接続できるAIチャットアシスタントが組み込まれています。チャット画面からそのままAIへ質問できる設計になっています。
認証は、アカウント/パスワードログイン、QRコードスキャンログイン、マルチデバイス管理の3方式に対応しています。QRコードによるグループ参加も利用できます。
ファイル・メディアでは、画像ビューワー、スクリーンショット機能、独立したメディアビューワー、七牛クラウド経由のファイルアップロードが使えます。
テーマは、ダーク・ライトの切り替えに加え、スキンテーマの変更に対応しています。i18n(国際化)は98%実装済みで、多言語環境でも動作します。自動アップデートも組み込まれています。
対応プラットフォーム
最新バージョンv3.0.9(2026年1月19日リリース)の時点で以下のOSに対応しています。
| プラットフォーム | 対応バージョン |
|---|---|
| Windows | 10・11 |
| macOS | 10.5以上 |
| Linux | Ubuntu 22.0以上 |
| iOS | 9.0以上 |
| Android | 12以上(SDK30+) |
Web版は現時点では未対応です。デスクトップ向け機能を取り除くカスタマイズが必要なため、公式では「暫定サポート外」と明記されています。
起動手順
クライアントはGitHubからクローンして起動できます。Rustのツールチェーンとpnpmが事前に必要です。
git clone https://github.com/HuLaSpark/HuLa.git
cd HuLa
pnpm install
pnpm run tauri:dev
本番用ビルドは pnpm run tauri:build で実行します。macOSでダウンロードしたインストーラーが「壊れている」と表示される場合は、ターミナルで以下のコマンドを実行してください。
xattr -r -d com.apple.quarantine /Applications/HuLa.app
バックエンドは別リポジトリのHuLa-Serverで管理されています。実運用では、このサーバーを自社インフラにデプロイしてクライアントと接続します。
類似ツールとの位置づけ
RocketChatやMattermostも自前ホスティング型のチャットツールです。ただし、どちらもモバイルクライアントとデスクトップクライアントを別々に提供しており、ビルドのベースも異なります。
HuLaは1つのTypeScript+Vueコードベースから全プラットフォームのクライアントをビルドします。フロントエンドの変更が全OS同時に反映される構造で、メンテナンスコストが低く抑えられます。また、AI統合を標準で組み込んでいる点も差別化要素です。
Apache-2.0ライセンスなので商用利用・改変・再配布いずれも可能です。GitHubとGiteeの両方にリポジトリがあり、国内ネットワーク環境でもソースコードを取得しやすい構成になっています。