スキルライブラリを自分で整理するAIエージェントが登場した。

NousResearchが開発するOSSのAIエージェント「Hermes Agent」がv0.12.0をリリースした。”The Curator release”と銘打たれた今回のアップデートは、バックグラウンドで動くスキル管理エージェントAutonomous Curatorを目玉に、複数エージェントが連携するKanbanボード、LM Studioの正式プロバイダー化、Spotify・Google Meet・Microsoft Teamsとの統合など大規模な拡張を含む。

この記事でわかること:

  • Autonomous CuratorがHermes Agentのスキルをどう自動管理するか
  • Kanbanボードで複数エージェントをどう協調させるか
  • LM Studioが正式プロバイダーになった意味と使い方
  • v0.12.0のその他の主要変更点

v0.12.0の全体像

v0.12.0はv0.11.0から1,096コミット、550のマージPR、1,270ファイル変更を経た大型リリースだ。213名のコミュニティコントリビューターが関与しており、週次リリースが続くHermes Agentの中でも規模が大きいアップデートに位置づけられる。リリースは2026年4月30日。

スキルを自動整理する「Autonomous Curator」

v0.12.0の中心にあるのがAutonomous Curatorだ。Hermes Agentはスキルファイルを学習・蓄積していくが、使い続けると重複・陳腐化したスキルが溜まっていく。これまでは手動で整理するしかなかった。

CuratorはHermes自身がバックグラウンドで動くエージェントとして、スキルライブラリを定期的に見直す。デフォルトは7日サイクルで、以下の3つの処理を自動実行する。

  • 採点(grade) — 各スキルを使用頻度と品質でスコアリング
  • 統合(consolidate) — 関連するスキルをまとめて整理
  • 削除(prune) — 使われていない不要なスキルを除去

実行結果はlogs/curator/run.jsonREPORT.mdに書き出されるため、何が変わったかを後から確認できる。アーカイブされたスキルは「統合済み」と「削除済み」に分類される。

操作はシンプルだ。

hermes curator status   # スキルの使用頻度ランキングを表示
hermes model            # Curatorが使うモデルをダッシュボードから変更

バンドルされたスキルや重要なスキルには保護ゲートが設けられており、Curatorが誤って削除するリスクは抑えられている。

Kanbanボードで複数エージェントを協調させる

v0.12.0に合わせて公開されたもう一つの大きな機能がKanbanマルチエージェントボードだ。NousResearchがX(旧Twitter)でデモ動画を投稿し、注目を集めた。

KanbanはSQLiteで永続化されたタスクボードで、複数のHermesプロファイルがタスクを分担して処理する仕組みだ。Hermes内蔵のdelegate_taskとの違いを一言で表すなら「関数呼び出し vs. 作業キュー」だ。

項目 delegate_task Kanban
形式 RPC(fork → join) 永続メッセージキュー
再開 失敗したら終了 ブロック → 解除 → 再実行
担当者の記憶 匿名サブエージェント 名前付きプロファイル(記憶あり)
人間の介入 不可 任意のタイミングでコメント可
監査ログ コンテキスト圧縮で失われる SQLiteに永続保存

ディスパッチャーはゲートウェイ内に組み込まれており、60秒ごとにタスクを自動で拾い上げて対応するプロファイルを起動する。基本的な使い方は以下の通りだ。

hermes kanban init                                          # ボードを初期化
hermes gateway start                                        # ゲートウェイ起動(ディスパッチャー内蔵)
hermes kanban create "ドキュメント要約" --assignee writer  # タスクを作成
hermes kanban watch                                         # リアルタイムで進捗を監視

ダッシュボードには専用のKanbanタブが追加されており、GUIでカードを操作したりコメントを追加したりできる。エージェントが行き詰まったときはhuman-in-the-loopとしてコメントを書いてアンブロックする運用も可能だ。

LM Studioが正式プロバイダーに昇格

v0.11.0まで、LM Studioはカスタムエンドポイントの別名として扱われていた。v0.12.0では独立した正式プロバイダーに昇格し、以下の機能が利用できるようになった。

  • 専用の認証設定
  • hermes doctorによるヘルスチェック
  • 推論トランスポートの対応
  • /modelsエンドポイントからモデル一覧をリアルタイム取得

ローカルLLMとHermes Agentを組み合わせる構成で、設定のわかりやすさが大きく改善された。

その他の主要な変更点

新しいインプロバイダー4つ

v0.12.0ではさらに4つの推論プロバイダーが追加された。GMI Cloud(コミュニティ貢献)、Azure AI Foundry(自動検出対応)、MiniMax(OAuth PKCE)、Tencent Tokenhub だ。

メッセージングプラットフォームの拡充

Tencent 元宝(Yuanbao)が18番目のメッセージングプラットフォームとして追加された。また、ゲートウェイがプラグインホスト化したことで、Microsoft Teamsがプラグインとして19番目のプラットフォームに対応した。

SpotifyとGoogle Meetの統合

Spotifyは7つのツール(再生・検索・キュー・プレイリスト・デバイス操作)をPKCE OAuth経由で提供し、インタラクティブな初期設定ウィザードも付属する。Google Meetプラグインでは通話参加・文字起こし・発話・フォローアップまでを一連のパイプラインで処理できる。

ComfyUI v5とTouchDesigner-MCPがデフォルト同梱に

v0.11.0まではオプション扱いだったComfyUI v5とTouchDesigner-MCPが、v0.12.0からデフォルトで組み込まれる。ComfyUIは公式CLI + RESTに対応し、ハードウェア要件に応じたローカルインストールも可能だ。TouchDesigner-MCPはGLSL、ポストFX、オーディオ、ジオメトリ操作のリファレンスも追加された。

起動速度が約57%改善

TUIのコールドスタート時間が約57%削減された。主な改善点は、lazy agent init、Hermes関連ライブラリの遅延インポート、load_config()のmtimeキャッシュ、get_tool_definitions()のTTLキャッシュだ。

ワンショットモード hermes -z

非インタラクティブなhermes -z <プロンプト>が追加され、CI・スクリプトからの呼び出しが簡単になった。--model--providerオプションで実行時にモデルを切り替えられる。またhermes update --checkでアップデート前の事前確認もできるようになった。

まとめ

Hermes Agent v0.12.0は「エージェントが自分自身をメンテナンスする」設計を一歩進めたリリースだ。Autonomous Curatorによるスキル自動管理、Kanbanボードによるマルチエージェント協調、LM Studioの正式対応と、v0.11.0から大きく機能が拡充された。

GitHubリポジトリからインストールし、hermes updateで既存ユーザーはアップデートできる。