AIコーディングエージェントに「Clean Codeの原則で書いてくれ」と毎回伝えるのは手間だ。しかし一度設定すれば、その指示を常に守らせる仕組みがある。
この記事でわかること
ciembor/agent-rules-booksが解決する課題- 収録されている13冊の書籍と対象領域
- mini・nano・fullの3サイズの使い分け
- Claude Code・Codex・Cursorへの導入手順
AIエージェントはルールを知らない
Claude CodeやCodex CLIは優れたコードを生成するが、チームが採用しているアーキテクチャ上の規律や設計哲学は最初から知っているわけではない。毎回「Clean Architectureに従え」「DDDのユビキタス言語を使え」と指示すれば動くが、それを忘れずに書き続けるのは人間側のコストだ。
ciembor/agent-rules-booksはこの問題に対して、古典的なソフトウェア工学書のエッセンスを、エージェントが直接読み込めるルールファイルとして提供している。MITライセンスで公開されており、v0.5が2026年5月4日にリリースされた。
収録されている13冊
ルールファイルが用意されている書籍は以下のとおりだ。
- Clean Code(Robert C. Martin)— 命名、関数の小ささ、可読性
- Clean Architecture(Robert C. Martin)— 依存方向、レイヤー境界
- Code Complete(Steve McConnell)— 実装品質、防御的プログラミング
- Refactoring(Martin Fowler)— 小さなステップによる安全な改善
- Refactoring.Guru — コードスメル分類とリファクタリング手法
- Domain-Driven Design(Eric Evans)— 境界づけられたコンテキスト、集約
- Domain-Driven Design Distilled(Vaughn Vernon)— DDDの入門的な実践
- Implementing Domain-Driven Design(Vaughn Vernon)— DDDの実装パターン
- Patterns of Enterprise Application Architecture(Martin Fowler)— エンタープライズパターン
- Designing Data-Intensive Applications(Martin Kleppmann)— 分散システムとデータ設計
- A Philosophy of Software Design(John Ousterhout)— モジュールの深さ、複雑性の抑制
- The Pragmatic Programmer(Hunt・Thomas)— DRY、フィードバックループ
- Release It!(Michael T. Nygard)— サーキットブレーカー、本番耐性
- Working Effectively with Legacy Code(Michael Feathers)— テストなしのコードへの安全なアプローチ
日常のコード品質ならclean-codeやcode-complete、アーキテクチャ設計ならclean-architectureやdomain-driven-design、本番システムの信頼性ならrelease-itを選ぶのが基本だ。
3サイズの使い分け
各ルールセットはfull・mini・nanoの3サイズで提供されている。
miniは多くのケースで最適な選択だ。書籍のコア原則、判断ルール、最終チェックリストが凝縮されており、エージェントの実装選択に十分な影響を与える。プロジェクト全体のデフォルトルールとしてAGENTS.mdやCLAUDE.mdに追記するのに適している。
nanoはコンテキスト予算が極めて小さいツールや、複数エディタをまたいで同一ベースラインを持ちたいときに使う。miniが大きすぎる場合のフォールバックだ。
fullは完全版で、監査や一回限りの深いレビューセッションに向く。常時読み込むには大きすぎるため、プロジェクトのルールとして登録するのには不向きだ。
Claude Codeへの導入
Claude Codeで使う場合、推奨構成は次のとおりだ。
project/
AGENTS.md ← miniルールセットを置く
CLAUDE.md ← @AGENTS.md でインポート
.claude/
rules/
skills/
まずAGENTS.mdに使いたいルールセットのminiファイルの内容を貼り付ける。たとえばClean Codeを適用したい場合は、リポジトリのclean-code/clean-code.mini.mdの内容をそのままコピーする。次にCLAUDE.mdから@AGENTS.mdとしてインポートすれば、すべてのセッションで自動的に読み込まれる。
@AGENTS.md
## Claude Code
- 手順やチェックリストの長いものはskillsに入れる
- サブシステム固有のルールはscoped rulesに分ける
長い手順や繰り返し使うワークフローはrootのCLAUDE.mdではなく.claude/skills/に置くのが望ましい。CLAUDE.mdを短く保つことで、より重要なプロジェクト固有の指示と競合しなくなる。
CodexとCursorへの導入
CodexではAGENTS.mdをリポジトリルートに置くだけで読み込まれる。サブシステムごとに異なるルールを適用したい場合は、ネストしたディレクトリにAGENTS.mdまたはAGENTS.override.mdを追加する。.agents/skills/にスキルファイルを置けば、繰り返しの手順をコマンドとして呼び出すことも可能だ。
Cursorでは.cursor/rules/に.mdcファイルとして配置するか、シンプルなプロジェクトならAGENTS.mdをルートに置く方法で対応できる。Alwaysタイプのルールにすれば常時適用され、Auto Attachedにすれば特定ファイルパターンに一致した際にのみ適用される。
複数書籍の組み合わせ方
ルールセットは1つから始め、必要に応じて追加するのが基本方針だ。複数のfullファイルをグローバルに読み込むと、コンテキスト消費が増えてかえって効果が薄れる。
書籍間の相性はリポジトリのCOMPATIBILITY.mdにまとめられており、組み合わせの可否が確認できる。たとえば日常のコード品質改善であればclean-codeとthe-pragmatic-programmerを組み合わせ、ドメイン設計が絡む場合はdomain-driven-designを追加するといった使い方が現実的だ。
まとめ
ciembor/agent-rules-booksは、AIコーディングエージェントに設計哲学を繰り返し伝えるコストを下げるための実用的なツールだ。Claude Code・Codex・Cursorに対応しており、miniサイズをAGENTS.mdまたはCLAUDE.mdに追記するだけで導入できる。
どの書籍から始めるかは作業内容で決める。毎日のコード品質にはclean-code、アーキテクチャの境界にclean-architecture、本番耐性にはrelease-itが出発点になる。