AIエージェントを使うたびに会話の文脈が消えてしまう、という問題を解決するツールが登場しました。

RsClawは、Rustで書かれたオープンソースのAIエージェントエンジンです。15MBのバイナリ1本で動き、セッションをまたいで会話を記憶し、使うほど精度が上がる設計が特徴です。OpenClawの後継として設計されており、1ステップでデータを移行できます。

この記事でわかること:

  • RsClawがどの課題を解決するか
  • 三層メモリシステムの仕組み
  • 対応する13チャンネルと15のLLMプロバイダー
  • OpenClawとの性能比較と移行手順
  • インストール方法

https://github.com/rsclaw-ai/rsclaw

AIエージェントが「忘れる」問題

多くのAIエージェントは、セッションを終了すると会話の文脈がすべて消えます。次に開いたとき、ユーザーの好みも作業の続きも、設定も何も残っていません。毎回ゼロから始めなければならない設計です。

RsClawは、この問題を三層の永続メモリで解決します。redb(ホットKVストア)、tantivy(全文検索)、hnsw_rs(ベクトル類似検索)の三つを組み合わせ、過去の会話をキーワードでも意味でも検索できる仕組みを実装しています。

コンテキストウィンドウが80%に達すると自動でコンパクションが走ります。/compact コマンドで手動圧縮と記憶への書き出しも可能で、/clear では会話の要約を保持しながらセッションをリセットします。

15MBバイナリ、アイドル時20MB

Node.jsベースのAIエージェントツールは、node_modulesだけで300MB以上になることが珍しくありません。RsClawは純粋なRustで書かれているため、バイナリサイズは約15MB、アイドル時のメモリ使用量は約20MBに収まります。

項目 RsClaw OpenClaw(Node.js)
バイナリサイズ 約15MB 300MB以上
起動時間 約26ms 2〜5秒
アイドルメモリ 約20MB 1,000MB以上
長期記憶 三層ストレージ なし
ブラウザ自動化 内蔵ヘッドレスChrome なし

エッジデバイスや低スペックサーバーでも安定稼働できる軽さです。

13チャンネルをまとめて管理

RsClawの特徴の一つが、メッセージングチャンネルの多さです。Telegram、Discord、Slack、WhatsApp、LINE、Signal、Matrixといった国際的なサービスに加え、WeChatやFeishu(Lark)、QQ Bot、WeCom、DingTalk、Zaloにも対応しています。カスタムWebhookも追加できます。

どのチャンネルも、DM/グループポリシーの設定、ヘルスモニタリング、メッセージリトライ、ペアリングコード(8文字・1時間有効)、ストリーミングをサポートしています。

15のLLMプロバイダーと自動フォールバック

接続できるLLMプロバイダーは15以上あります。QwenやDeepSeek、Kimi、GLMといった中国系モデルから、Anthropic、OpenAI、Gemini、xAI(Grok)、Groq、Ollamaまで幅広く対応しています。OpenAI互換APIであれば追加の設定なしで接続できます。

プロバイダーが落ちたときのフォールバックチェーン設定、モデルごとのthinking budgetの指定、Responses APIとcompletions APIの両対応が標準で備わっています。

マルチエージェントアーキテクチャ

RsClawのエージェントは4種類に分類されます。

  • Main: 永続エージェント。設定ファイルに書かれ、システム起動時に自動で立ち上がる
  • Named: ユーザーが作成する永続エージェント。再起動後も保持される
  • Sub: LLMがセッション中に生成する一時エージェント。再起動で消える
  • Task: 一回限りのタスク実行用。完了後に自動削除される

これらを最大4段階で委任できます。MainがNamedを生み、NamedがSubを生み、SubがTaskを並列で走らせるような構成です。

実行バックエンドも4種類から選べます。デフォルトのNative Rust、Claude Code、OpenCode、そしてACP(Agent Client Protocol)対応の任意のエージェント。エージェントごとに異なるバックエンドを割り当てられます。

{
  agents: {
    list: [
      { id: "main", default: true, model: { primary: "qwen-plus" } },
      { id: "coder", model: { primary: "deepseek-chat" },
        claudecode: { command: "claude-agent-acp" } }
    ]
  }
}

ブラウザ自動化とA2Aプロトコル

ブラウザ操作もRsClaw単体で完結します。ヘッドレスChromeをCDPで制御する機能が内蔵されており、ChromeDriverやPlaywright、Node.jsは不要です。クリック、入力、スクロール、スクリーンショット、JavaScriptの実行など50以上のアクションを備えています。

クロスマシンでのエージェント連携には、Google A2A v0.3プロトコルを実装しています。/.well-known/agent.json で自動ディスカバリーが動き、JSON-RPC 2.0でタスクをディスパッチします。

インストール

macOS/Linuxでは1行で導入できます。

curl -fsSL https://app.rsclaw.ai/scripts/install.sh | bash
rsclaw setup    # 初期設定
rsclaw onboard  # ウィザードでプロバイダー・チャンネルを設定
rsclaw start

Windowsはcargoまたはリリースページの .exe からインストールできます。Rustに慣れていればソースビルドも選択肢です。

最初の起動時に、セマンティック検索用の埋め込みモデル(BGE-small-zh、約91MB)が ~/.rsclaw/models/ にダウンロードされます。デスクトップアプリ版ではこのモデルが同梱されているため、初回ダウンロードは不要です。

OpenClawからの移行

OpenClawからの移行は3ステップで完了します。

openclaw gateway stop
rsclaw setup    # OpenClawのデータを検出して移行を提案
rsclaw start

~/.openclaw/ のデータは一切変更されません。移行後もOpenClawは独立して起動できます(ポート番号が異なるため競合しない)。

ライセンス

MITとApache-2.0のデュアルライセンスです。商用製品への組み込み、SaaSとしての提供、改変後の再配布が可能で、オープンソース義務は生じません。

リポジトリのスター数は186(2026年5月7日時点)と伸び始めたばかりですが、機能の充実度は高く、OpenClawからの乗り換え先として注目が集まっています。最新バージョンは app-v2026.5.2(2026年5月2日リリース)です。