Claude Codeを複数ターミナルで動かしても、セッション同士は本来つながりません。フロント用・バックエンド用・レビュー用と役割を分けて並列作業したいのに、進捗の共有は人間が窓口になる——そんな状態を、ローカル上のメッセージングでつなぐのが claude-peers です。

2026年6月初旬、開発者のSuryansh Tiwari氏がXで紹介した話題の中心がこの仕組みです。「APIでもエージェント基盤でもなく、Claude Codeのセッション同士が同僚のようにメッセージをやり取りする」と説明され、コミュニティ製の実装が注目を集めています(元ポスト)。

この記事では、claude-peersが何を解決するのか、仕組み、導入手順、公式機能との違いまでを整理します。

この記事でわかること

  • claude-peersが複数のClaude Codeセッションをどう接続するか
  • MCPサーバーとローカルブローカーを使った実装の概要
  • 導入に必要な環境と起動コマンド
  • サブエージェント・worktreeなど公式機能との使い分け

複数セッションが孤立する課題

Claude Codeは1セッションあたり独立したコンテキストを持ちます。大規模な開発では、フロントエンド実装、API実装、コードレビュー、テストを順番に1セッションで進めると、コンテキストが膨らみ、以前の判断を見失いやすくなります。

並列化の選択肢として、Anthropic公式のサブエージェント(同一セッション内で子タスクを任せる)やworktree(複数ブランチを同時に扱う)があります。これらはClaude Codeの公式機能として統合されています。

claude-peersは別のレイヤーです。完全に独立した複数セッションのあいだに、Slackのようなメッセージング層を挟みます。セッション間でメモリやコンテキストウィンドウは共有しません。メッセージパッシングだけで協調する設計です。各セッションは自分のタスクに集中しつつ、他セッションへ状況報告や依頼を送れます(解説記事)。

claude-peersとは

claude-peersは、Anthropic公式製品ではないコミュニティプロジェクトです。GitHub上の louislva/claude-peers-mcp(作者: Louis Arge)として公開されており、MCP(Model Context Protocol)サーバーとして動作します。

同一マシン上で動いている複数のClaude Codeインスタンスが互いを発見し、リアルタイムにメッセージを交換できます。5つのプロジェクトで5セッションを開いている場合でも、どれか1つのClaudeが他のピアを一覧し、「今何を編集しているか」を尋ねる、といった操作が可能です。

仕組み:MCPとローカルブローカー

中核は broker daemon です。localhost:7899 でHTTPを待ち受け、SQLiteにピア登録とメッセージを保存します。各Claude Codeセッションはstdio経由でMCPサーバー(server.ts)を起動し、ブローカーへ登録します。受信メッセージは1秒間隔のポーリングに加え、claude/channel プロトコルでセッションへプッシュされ、Claudeが即座に気づけるようになっています。

通信はすべてローカルホスト内に閉じます。最初のセッション起動時にブローカーが自動起動し、応答のないピアは自動削除されます。外部APIを経由したオーケストレーションではなく、マシン内のブローカーがルーティングする構成です。

Claudeが使える主なツール

ツール 役割
list_peers 他セッションを検索。スコープは machine / directory / repo
send_message ピアID宛にメッセージ送信。channel経由で即時配信
set_summary 自分の作業内容を他ピア向けに表示
check_messages channelモード未使用時の手動受信確認

list_peers では、作業ディレクトリ、Gitリポジトリ、要約が確認できます。フロントエンド用セッションがバックエンド用セッションに「新エンドポイントのJSON形状は?」と送り、応答がそのまま会話に入る、といった連携が想定されています。

環境変数 OPENAI_API_KEY を設定すると、起動時に gpt-5.4-nano で作業要約を自動生成する機能もあります。未設定の場合は set_summary でClaude自身が要約を登録します。

導入手順

前提: Bun、Claude Code v2.1.80以上、claude.aiログイン(channel利用のためAPIキー認証のみでは動作しません)。

  1. リポジトリをクローンして依存関係を入れる。
git clone https://github.com/louislva/claude-peers-mcp.git ~/claude-peers-mcp
cd ~/claude-peers-mcp
bun install
  1. MCPサーバーをユーザースコープで登録する。
claude mcp add --scope user --transport stdio claude-peers -- bun ~/claude-peers-mcp/server.ts
  1. 開発用channelを有効にしてClaude Codeを起動する。
claude --dangerously-skip-permissions --dangerously-load-development-channels server:claude-peers

別ターミナルでも同じコマンドで2つ目のセッションを開き、「このマシン上のピアを一覧して」と指示すれば、両方が相互に見えます。CLIから bun cli.ts status でブローカー状態を確認することもできます。

ブローカーのポートは CLAUDE_PEERS_PORT(既定7899)、DBパスは CLAUDE_PEERS_DB(既定 ~/.claude-peers.db)で変更できます。

料金と運用上の注意

claude-peers本体はオープンソースで、利用料は発生しません。ただし各Claude Codeセッションはそれぞれ独立してトークンを消費します。4セッションを並列で動かせば、おおむね4倍のAPIコストがかかります。小さなタスクでは公式サブエージェントの方が効率的な場合があります。

プロジェクトは早期段階です。メッセージは人間の会議やホワイトボードのような豊かな文脈を持たず、テキストのみのやり取りになります。セッション間の認識ズレや、調整コストが並列化の利益を食うリスクもあります。

--dangerously-load-development-channels--dangerously-skip-permissions は開発向けフラグです。本番環境の運用ポリシーに合わせて判断してください。

公式機能との使い分け

方式 特徴
サブエージェント 同一セッション内。統合度が高く信頼しやすい
worktree 複数ブランチをClaude Code内で並行処理
claude-peers 完全独立セッション間のP2Pメッセージング。柔軟だが調整は自分で設計

「1つのClaudeに任せて子タスクを分割したい」ならサブエージェント、「別プロジェクトの別ターミナル同士をつなぎたい」ならclaude-peers、という切り分けが現実的です。

実務で試すときの視点

claude-peersは、マルチエージェント開発が「1人1AI」から「1人複数AI」へ移る過程で、コミュニティが先に試している層です。公式のサブエージェントやworktreeが内製の協調を担う一方、セッション横断のメッセージングはまだ実験的な領域にあります。

すでにClaude Codeを複数開いている開発者にとって、ピア一覧と即時メッセージは、手動でのコンテキスト共有を減らす一手になります。大規模案件で並列セッションを常用するなら、一度セットアップしてフロント・バックエンド・レビュー役の3セッションでメッセージのやり取りを試す価値があります。早期プロジェクトである点は踏まえつつ、複数Claudeを「チーム」として動かす発想を試す入口として押さえておくとよいでしょう。