AIエージェントが、アプリの設計からビルド、公開までを人手なしで回せる時代が始まりました。
この記事では、Anything(@anything)が2026年6月10日に発表した「CLI-Anything」連携の内容と、Claude Code・OpenClaw・Codex・Hermesの4プラットフォームで何が変わるかを整理します。
この記事でわかること
- CLI-Anythingがアプリ開発フローを自動化する仕組み
- 7段階パイプラインの各フェーズで何が行われるか
- 4つのAIコーディングエージェントごとの導入方法
- 既存のGUI操作型エージェントとの違い
エージェントがアプリ開発の全工程を担う
2026年6月10日、Anything(@anything)はXで次の内容を発表しました。
BREAKING: agents are taking over app dev
Claude Code, OpenClaw, Codex, and Hermes can now design, build, and publish through the Anything CLI with no human in the loop
要するに、Claude Code、OpenClaw、Codex、Hermesの4つのAIコーディングエージェントが、CLI-Anything(投稿では「Anything CLI」と表記)を通じてアプリの設計・構築・公開までを無人で実行できるようになった、という告知です。
CLI-Anythingは香港大学(HKUDS)が公開するオープンソースプロジェクトで、GUIベースのソフトウェアに対してエージェントが操作できるCLI(コマンドラインインターフェース)を自動生成します。GIMP、Blender、LibreOfficeなど40以上のCLIハーネスがCLI-Hubに登録され、リポジトリ全体で2,461件以上のテストが通過していると公式READMEに記載されています。
なぜGUIではなくCLIなのか
AIエージェントが既存ソフトウェアを使う場合、画面を見てクリックする方式は不安定です。解像度の違い、UIの更新、読み込み待ちがエラーの原因になります。
CLI-Anythingは別のアプローチを取ります。対象ソフトウェアのソースコードを解析し、GUIの操作をコマンドに変換したCLIを生成します。生成されたCLIは--helpで自己説明でき、--jsonフラグで構造化データを返します。REPLモードではセッション状態を保持し、undo/redoにも対応します。
エージェントはwhich cli-anything-gimpのようにコマンドを発見し、cli-anything-gimp --helpで機能を把握してから操作を始められます。テキストベースの入出力はLLMの処理形式と相性がよく、パイプでコマンドを連鎖させることもできます。
7段階パイプラインが「設計から公開」まで担う
CLI-Anythingの中核は、人手を介さずに走る7段階の自動パイプラインです。公式ドキュメントでは次のフェーズに分かれています。
- Analyze(解析) — ソースコードを走査し、GUI操作とAPIの対応をマッピングする
- Design(設計) — コマンドグループ、状態モデル、出力形式を設計する
- Implement(実装) — PythonのClickフレームワークでCLIを構築する
- Plan Tests(テスト計画) — 単体テストとE2Eテストの計画をTEST.mdにまとめる
- Write Tests(テスト実装) — テストスイートを実装して実行する
- Document(文書化) — テスト結果を反映したドキュメントを更新する
- Publish(公開) — setup.pyを作成し、PATHにインストール可能なパッケージとして公開する
フェーズ6.5ではSKILL.mdも自動生成されます。これはAIエージェントがCLIの機能と使い方を自律的に発見するためのスキル定義ファイルです。フェーズ7でPyPIへの公開も行えるため、「設計から公開まで」という投稿内容は、このパイプラインの範囲と一致します。
4プラットフォームでの導入方法
今回の発表で名前が挙がった4エージェントは、いずれも同じ7段階メソドロジーを共有します。導入手順だけがプラットフォームごとに異なります。
Claude Code
Claude Codeではプラグインとして提供されます。マーケットプレイスにHKUDS/CLI-Anythingを追加し、cli-anythingプラグインをインストールした後、/cli-anything ./gimpのように対象ソフトウェアのパスを渡すだけでパイプラインが起動します。Claude Code向けの最もテストが充実した環境です。
OpenClaw
OpenClawは2026年3月15日にコミュニティ経由でサポートが追加されました。リポジトリのopenclaw-skill/SKILL.mdを~/.openclaw/skills/cli-anything/にコピーしてインストールします。セッション内では@cli-anything build a CLI for ./gimpのようにスキルを呼び出します。
Codex
Codex向けにはcodex-skill/ディレクトリにバンドルされたスキルが用意されています。bash CLI-Anything/codex-skill/scripts/install.shでインストールし、Codexを再起動します。「Use CLI-Anything to build a harness for ./gimp」のような自然言語でタスクを指示できます。READMEではExperimental(実験的)コミュニティサポートと明記されています。
Hermes
Hermes向けスキルは2026年5月30日に提案(#320)され、インストーラスクリプトとHARNESSフォールバックガイダンスが追加されました。bash CLI-Anything/hermes-skill/scripts/install.shで$HERMES_HOME/skills/cli-anything-hermesに配置します。Hermesのterminal、execute_code、delegate_task、read_file/write_file/patchツールを7段階ワークフローにバインドする設計です。こちらもExperimental扱いです。
既存CLIを使う場合はCLI-Hub
新しいCLIを一から生成する以外に、コミュニティが既に構築したCLIハーネスを使う方法もあります。pip install cli-anything-hubでCLI-Hubを導入し、cli-hub listで一覧を確認、cli-hub install gimpでインストールします。
CLI-Hubのメタスキルをエージェントに入れておけば、タスクに応じて適切なCLIを自律的に検索・インストール・実行する流れも可能です。npx skills add HKUDS/CLI-Anything --skill cli-hub-meta-skill -g -yでスキルを追加できます。
動作の前提と注意点
CLI-Anythingを使うにはPython 3.10以上が必要です。対象ソフトウェアのソースコードまたはリポジトリへのアクセスが前提で、コンパイル済みバイナリのみの場合はハーネスの品質が低下します。GIMPやInkscapeのような比較的シンプルなアプリから始めることが推奨されています。
CodexとHermesの連携はExperimentalと位置づけられており、Claude Code以外では動作にばらつきが出る可能性があります。生成されたCLIは実際のソフトウェアバックエンドを呼び出す設計で、LibreOfficeはヘッドレスモード、Blenderはbpyを使うなど、偽の成功を返さない点がテストの信頼性につながっています。
開発フローの自動化が意味すること
CLI-Anythingが示しているのは、エージェントにGUIを操作させるのではなく、ソフトウェア側をエージェント向けに変換するという発想の転換です。各アプリの開発者が個別にAPIを用意するのを待つのではなく、ソースコードからCLIブリッジを自動生成する道を選んでいます。
4つの主要エージェントが同じパイプラインを共有したことで、使っているツールが違っても「ソースコードを渡せばCLIが生成され、テストを通してPATHに載る」という体験が共通化されました。アプリ開発の設計・構築・公開をエージェントに任せる実験は、CLI-AnythingとCLI-Hubのエコシステムを通じて現実のワークフローに入り始めています。