AIエージェントの開発で壁になりやすいのが「ローカルでは動くのに本番に持っていくとうまくいかない」問題です。Google Cloud Next ’26で発表されたAgents CLIは、この断片化した開発フローをコマンド一本で解決します。
この記事でわかること:
- Agents CLIが解決する課題
- セットアップから本番デプロイまでの流れ
- AIコーディングエージェントとの連携方法
https://github.com/google/agents-cli
AIエージェント開発を阻む3つの壁
AIエージェントを本番環境へ持ち込むには、ローカル実行・品質評価・クラウドデプロイという3段階をそれぞれ異なるツールで行う必要があります。コーディングエージェント(Gemini CLIやClaude Codeなど)を使う場合、大量のドキュメントを読み込ませて各コンポーネントの連携方法を理解させるだけで時間とトークンを浪費します。
Google Cloudが2026年4月22日に発表したagents-cliは、この問題を解消するためのCLIツールです。Agent Development Lifecycle(ADLC)全体——スキャフォールド・評価・デプロイ——をひとつのCLIに統合し、コーディングエージェントが直接操作できる設計になっています。
Agents CLIとは
Gemini Enterprise Agent Platformの一部として公開されたオープンソースのCLIツールです。Gemini CLI、Claude Code、Codex、Cursorなど主要なAIコーディングエージェントに対応しており、これらのエージェントが「スキル」を通じてGoogle Cloudのagentスタック全体を操作できます。
前提条件はPython 3.11以上、uv、Node.jsの3つです。ローカル開発はAI Studio APIキーだけで始められ、クラウドへのデプロイ時のみGoogle Cloudアカウントが必要です。
セットアップと主要コマンド
インストールはuvxで一行です。
uvx google-agents-cli setup
このコマンドを実行すると、CLIと一緒にスキルが接続済みのコーディングエージェントへ注入されます。以降、エージェントはAgents CLIのコマンドとAPIリファレンスを把握した状態で開発を支援できます。
スキルなしでCLIだけを使いたい場合は、agents-cliコマンドを直接ターミナルで実行するHuman Modeも利用できます。
3段階の開発フロー
1. プロジェクトの生成
コーディングエージェントに「旅費精算エージェントを作りたい、50ドル未満は自動承認にしたい」と伝えると、エージェントが以下のコマンドを実行してプロジェクトをスキャフォールドします。
agents-cli scaffold finance-agent --deployment-target agent_runtime
デプロイ先(Agent Runtime、Cloud Run、GKE)もこの時点で指定できます。
2. ローカル評価
本番稼働前に精度を検証します。グラウンドトゥルースデータセットに対してテストを実行し、2つの評価結果を比較することも可能です。
agents-cli eval run
agents-cli eval compare evals/run_v1.json evals/run_v2.json
軌跡スコアやメトリクスを確認してから次のステップへ進む設計なので、「動くが品質不明」の状態で本番に出すリスクを減らせます。
3. 本番デプロイ
インフラのプロビジョニングからCI/CDパイプラインの設定、クラウドへのデプロイまでをコマンド数行で完了します。
agents-cli infra single-project
agents-cli deploy
agents-cli publish gemini-enterprise
最後のpublishコマンドでGemini Enterpriseに登録すると、社内の他メンバーがエージェントを利用できる状態になります。
提供されているスキル一覧
Agents CLIはコーディングエージェントが参照する「スキル」を7種類提供しています。
| スキル | 役割 |
|---|---|
google-agents-cli-workflow |
開発ライフサイクルとモデル選定 |
google-agents-cli-adk-code |
ADK Python API全般 |
google-agents-cli-scaffold |
プロジェクト生成・アップグレード |
google-agents-cli-eval |
評価手法・メトリクス |
google-agents-cli-deploy |
Agent Runtime / Cloud Run / GKEへのデプロイ |
google-agents-cli-publish |
Gemini Enterprise登録 |
google-agents-cli-observability |
Cloud Trace・ロギング |
料金と現在のステータス
agents-cli自体はオープンソースで無料です。ただしデプロイ先のGoogle Cloudリソース(Cloud Run、Agent Runtimeなど)は通常のGoogle Cloud料金が発生します。
現在はプレビュー段階(Pre-GA)のため、本番ワークロードへの採用は慎重に判断する必要があります。フィードバックはGitHubのissueまたはagents-cli@google.comで受け付けています。
まとめ
Agents CLIはAIコーディングエージェントを前提に設計されたGoogle Cloud向けのCLIです。スキャフォールド・評価・デプロイという断片化しがちなフローを一本化し、エージェントが直接コマンドを実行できる点が特徴です。現在プレビューですが、ADK(Agent Development Kit)を使ってGoogle Cloud上にエージェントを構築・運用したい開発者にとって、試す価値のあるツールです。