JavaScriptでAIエージェントを作ろうとしたとき、どこから手をつければいいか迷った経験はないでしょうか。MicrosoftがJS/TS開発者向けに「LangChain.js for Beginners」をGitHubで無料公開しました。Chat modelsの基礎からMCP統合、エージェント、RAGシステムまでを1つのコースで学べます。
この記事でわかること:
- LangChain.jsとは何か、このコースの位置づけ
- 8章で構成されたカリキュラムの内容
- MCPサーバーとエージェントをTypeScriptで実装する流れ
- 無料で受講できる環境のセットアップ方法
LangChain.jsとは
LangChain.jsは、JavaScriptおよびTypeScriptでAIアプリを構築するためのフレームワークです。LLMへの接続、プロンプト管理、ツール連携、エージェントのループ処理といった実装をシンプルなAPIで扱えます。
Python版のLangChainが先行して普及しましたが、LangChain.jsはNode.js環境の開発者が同等の機能をJavaScriptのエコシステムで利用できるよう設計されています。
JavaScriptでのAI開発が抱える課題
AIアプリ開発の学習リソースは、PythonやJupyter Notebook前提のものが大半を占めます。ReactやExpressのプロジェクトにAIを組み込もうとしても、TS/JSで書かれた体系的な教材は少ないのが現状です。
このコースはその空白を埋める目的で作られました。npm installとasync/awaitが扱えれば、AIやMLの事前知識なしで始められます。
コースの構成
セットアップを含む全9章で構成され、70以上の実行可能なTypeScriptサンプルが含まれています。各章に概念説明・コード例・ハンズオン課題が用意されており、手を動かしながら学べる形式です。
第1〜3章: 基礎
第1章でLangChain.jsの全体像をつかみ、第2章でChat modelsを使ったメッセージのやり取りとストリーミング処理を実装します。第3章では、ZodスキーマとLangChain.jsを組み合わせたStructured Outputsを扱います。LLMのレスポンスを型安全なオブジェクトとして受け取ることで、後続処理のコードを安定させられます。
第4〜5章: ツールとエージェント
第4章ではFunction Callingによってモデルに外部ツールを使わせる実装を学びます。第5章はエージェントの構築です。ReActパターン(推論と行動を繰り返すサイクル)を使い、AIが自律的にどのツールを選ぶかを判断しながら動作するエージェントを実装します。
第6章: MCP統合
Model Context Protocol(MCP)は、AIが外部サービスと通信するための標準規格です。第6章では、MCPサーバーの構築からHTTPおよびstdioトランスポートを使った接続、複数サーバーを組み合わせるパターンまでを学びます。この章を終えると、既存のMCPサーバーに対してエージェントを接続する実装ができるようになります。
第7〜8章: セマンティック検索とRAG
第7章ではドキュメントのロード、テキストのチャンキング、ベクトル埋め込みを使ったセマンティック検索を実装します。第8章はエージェントとRAGを組み合わせた構成です。ユーザーの質問に応じて、エージェントがドキュメントを検索するかどうかを自律的に判断するAgentic RAGシステムを構築します。
使えるAIプロバイダー
学習用にはGitHub Modelsを使います。GitHubアカウントがあれば追加コスト不要で複数のモデルにアクセスでき、APIキーの取得も容易です。本番環境を想定する場合はMicrosoft Foundryが推奨されています。
OpenAIやAzure OpenAIのAPIキーを持っている場合も、環境変数を差し替えるだけで利用できます。
前提知識と環境
受講に必要な前提は次のとおりです。
- JavaScript/TypeScriptの基礎(変数、関数、async/await)
- Node.js(LTS)とnpmの基本操作
- LLMやプロンプトについての概念的な理解
AI開発の実務経験は不要です。生成AIの基礎から確認したい場合は、同じくMicrosoftが公開している「Generative AI with JavaScript」コース(github.com/microsoft/generative-ai-with-javascript)が入門として適切です。
TypeScriptでAIエージェントを書く時代へ
LangChain.js for Beginnersは、JavaScriptエンジニアがAIエージェント開発を体系的に学べる無料コースです。Chat modelsの基礎からMCP統合、Agentic RAGまで、実務で使える知識をTypeScriptのサンプルコードとともに学べます。GitHubで公開されており、Codespacesを使えばブラウザ上で環境を用意せずに始められます。