MicrosoftのAI事業が、数字で語れるフェーズに入りました。2026年4月29日に発表されたQ3 FY2026(2026年1〜3月期)決算では、AI関連の年間収益が370億ドルに達し、前年比123%の成長を記録しています。
この記事でわかること
- Copilotの有料ユーザーが2,000万を超えた背景
- Azure 40%成長を支えるAIワークロードの実態
- 設備投資1,900億ドルの内訳とメモリ価格高騰の影響
- OpenAI契約見直しがクラウド市場に与える変化
Copilot有料シートが2,000万を突破
https://www.cnbc.com/2026/04/29/microsoft-msft-q3-earnings-report-2026.html
Microsoft 365 Copilotの有料シート数が2,000万を超えました。2026年1月時点では1,500万だったので、3か月で約33%の増加です。
CEOのSatya Nadellaは決算説明会で、Copilotの週間エンゲージメントがOutlookと同水準に達したと述べています。Outlookは法人向けMicrosoft 365の中核アプリです。そのOutlookと同じ頻度で使われているという事実は、CopilotがAIツールの枠を超え、日常の業務インフラに組み込まれ始めていることを示しています。
9月期(Q1 FY2027)にはさらにシート数が増える見通しで、CFOのAmy Hoodが明言しました。
AI年間収益370億ドル、前年比123%増の中身
AI関連の年間収益ランレートは370億ドルに達しました。この数字には、Azure上でAIサービスを利用する顧客からの収益と、モデルビルダー(OpenAIなど)からの全収益が含まれます。一方、AIモデルを使わない標準的なCPU・ストレージの利用は除外されています。
前年同期の約166億ドルから2倍以上に膨らんだ計算です。Microsoftにとって、AIはもはや研究開発費を食うだけのコストセンターではなく、全社売上の約18%を占める収益の柱に育っています。
Azure 40%成長、アナリスト予想を上回る
Azureおよびその他クラウドサービスの売上は前年比40%増でした。アナリストの事前予想は39%前後だったため、わずかに上振れた形です。Intelligent Cloudセグメント全体では346.8億ドルを計上し、こちらもコンセンサスの342.7億ドルを超えました。
Q4(4〜6月期)のAzure成長率ガイダンスは39〜40%(為替一定ベース)で、StreetAccountのコンセンサス37%を上回っています。AI需要がAzureの成長を底上げしている構図は、少なくとも次の四半期まで続く見通しです。
設備投資1,900億ドルの背景にメモリ不足
決算で最も目を引いた数字は、2026年暦年の設備投資見通し1,900億ドルです。前年比61%増で、アナリスト予想の1,546億ドルを大きく上回りました。
この急増には理由があります。AI需要の拡大に伴い、世界的なメモリ不足が発生しています。Hood CFOによると、メモリなどの部品価格の高騰だけで約250億ドルの上乗せが生じました。AIデータセンターの建設ラッシュは、推論チップだけでなくメモリの需給バランスにも波及しています。
この投資がどこまで利益に変わるかが次の焦点です。Q3の粗利益率は67.6%で、2022年以来の低水準でした。データセンター関連の減価償却費が利益率を圧迫しており、売上が伸びても利益率が下がる構造が続いています。
OpenAI契約の見直しで独占終了
決算の2日前(4月27日)、MicrosoftはOpenAIとの提携契約を大幅に改定しました。最大の変更点は、MicrosoftがOpenAIモデルに対して持っていた独占ライセンスの終了です。今後はAWS BedrockなどAzure以外のクラウドでもOpenAIモデルを提供できるようになります。
Microsoftはレベニューシェアの支払いも終了しています。一方で、OpenAIの知的財産に対するライセンスは2032年まで6年間継続し、ロイヤリティフリーで利用可能です。
Nadellaは決算説明会でこのライセンスについて言及し、2032年まで完全に活用する方針を示しました。独占は失ったものの、コスト構造は改善されます。
人員削減と効率化の加速
決算説明会では、2027年暦年(2026年7月〜2027年6月)に人員数が前年比で減少するとの見通しも示されました。Hoodは「運営方法を進化させ、スピードと機動力を高めている」と説明しています。
AI投資を拡大しながら人員を絞るという方針は、AIによる社内業務の自動化が進んでいることの裏返しでもあります。
まとめ:AIが稼ぎ始めた一方で利益率は圧迫
MicrosoftのQ3決算は、AI事業が収益の柱として確立されつつある一方で、インフラ投資の重さが利益率に影を落とす構図を浮き彫りにしました。Copilotの定着、Azure AIの成長、370億ドルの収益ランレートは、AIが実需を伴うビジネスになった証拠です。ただし、1,900億ドルの設備投資と67.6%の粗利益率が示すように、投資回収の道のりはまだ途中です。