AIの計算資源を確保する競争が、発電所規模のインフラ投資へと広がっています。

この記事では、OpenAIがオハイオ州で検討している10ギガワット(GW)級データセンターの借り入れ交渉と、Nvidiaが関与する理由を整理します。

この記事でわかること

  • オハイオ・ポーツマス拠点の規模と立地の背景
  • OpenAI・SB Energy・Nvidiaが担う役割の違い
  • Stargate計画や米国全体のデータセンター容量との比較

10GW級キャンパスの借り入れ交渉が進行中

2026年6月9日、米メディアThe Informationは、OpenAIがオハイオ州南部の連邦所有地に建設予定の10GW級データセンターキャンパスを借り受ける交渉を進めていると報じました(参考)。Reutersも同内容を転載していますが、OpenAIとNvidiaはコメントを控え、交渉は未確定の段階です。

報道によると、契約は20年のリース形式で、OpenAIが設備を管理します。支払いは稼働開始後に始まり、第1期の800メガワット(MW)は2028年の稼働を想定しています。チップ、人件費、電力など現在の価格で試算すると、キャンパス全体の建設費は少なくとも5000億ドルに達する可能性があるとされています。

10GWとは、大規模発電所の出力に匹敵する規模です。オハイオ州の公共放送WOUBの報道では、フル稼働時の10GWは、米国内の稼働中データセンター総容量の半分以上に相当すると説明されています(参考)。

旧核施設の土地で動き始めた現場

対象地は、米エネルギー省(DOE)が所有するポーツマス・サイトです。ピケットン近郊のパイク郡にあり、冷戦期にウラン濃縮を行ったポーツマス・ガス拡散プラントの跡地です。濃縮作業は2001年に終了し、現在は環境浄化と再開発が進んでいます。

開発主体はソフトバンクグループ傘下のSB Energyです。2026年3月20日に起工式が行われ、DOEは「世界最大のAIデータセンター」を建設する官民連携を発表しました(参考)。初期フェーズはサイト内の189エーカーで、今年中の開発開始を見込んでいます。DOEは10GWの新規発電設備を建設し、地域の電力網に接続して家庭の電気代負担を抑える方針を示しています。

電力面では、SB Energyが日本からの資金で9.2GWの新規天然ガス発電に333億ドルを投じる計画が報じられています(参考)。WOUBによると、付随する330億ドル規模の天然ガス発電所はデータセンター専用の電源として位置づけられ、ソフトバンクの孫正義氏は地域住民の電気代が上がらないよう自社で発電する旨を表明しています。

Nvidiaがハードと資金の両面で関与

この案件でNvidiaの役割は二つに分かれます。ひとつは、データセンター向けGPUなどのハードウェア供給です。もうひとつは、OpenAIのリース契約とSB Energyのプロジェクト資金調達に対する金融保証です。巨額の長期リースと発電・送電インフラを同時に組むには、半導体メーカーが信用の裏付けになる構図と読めます。

OpenAIとSB Energyの関係は、すでに資本面でも結びついています。2026年1月9日、OpenAIとソフトバンクグループはそれぞれ5億ドルをSB Energyに投資し、テキサス州ミラム郡の1.2GWデータセンター運営契約も発表しています(参考)。オハイオ案件は、その延長線上にある次の大型拠点候補と見られます。

Stargate計画との接続と今後の焦点

2025年1月に発表されたStargateは、OpenAI、Oracle、ソフトバンクなどが関与する米国向けAIインフラ構想で、5000億ドル・10GWの投資を掲げました。2025年9月時点でOpenAIは、複数拠点を含め計画容量が約7GWに達したと公表しています。オハイオの10GWキャンパスは、Stargateが目指す規模と同じ桁の単一拠点になり得ます。

一方で、巨額投資には常に実行リスクが付きまといます。土地の環境浄化、送電網の増強、地域住民への電力料金への影響、連邦土地のリースに伴う税収の扱いなど、技術以外の論点も残ります。パイク郡ではSB Energyとの協議で、私有地と同様の税の代替納付(PILOT)を求める動きが報じられています。

交渉が成立すれば、OpenAIは単一拠点でStargate全体と同等の計算規模を確保する道が開きます。Nvidiaにとっても、次世代AI向けGPUの長期需要を固定する契機になります。確定情報は限られますが、AI競争の主戦場がモデル開発から「電力と土地を含む物理インフラ」の確保へ移っていることは、オハイオの動きからも読み取れます。