ローカルLLMを試したいのに、環境構築だけで数日かかる——そんな悩みを一気に解消するミニPCが登場しました。

本記事では、GMKtecのAI特化ミニPC「EVO-T2S」のスペック、プリインストールソフトの使い方、実測ベンチマークの結果を整理します。

この記事でわかること

  • EVO-T2SのCPU・GPU・メモリ構成とAI性能の内訳
  • ローカルLLMソフト「herdsman」とAIエージェント「GMKtec Claw」の連携方法
  • PC Watchの実機レビューで確認された性能と価格

EVO-T2Sとは何か

https://www.gmktec.cn/product/8671/

EVO-T2Sは、中国のミニPCメーカーGMKtecが2026年3月に発売したハイエンドAIミニPCです。筐体サイズは154×151×73.6mm、重量は約950g。デスクトップPCの机占有面積のわずかなスペースに、最新CPUと64GBメモリを詰め込んでいます。

最大の特徴は、Intelの次世代プロセッサ「Panther Lake」(正式名称はCore Ultraシリーズ3)をいち早く搭載した点です。採用チップはCore Ultra X7 358Hで、Intel 18Aプロセスで製造されています。コア構成はPコア4基、Eコア8基、低消費電力Eコア4基の計16コア16スレッド。Pコアの最大ターボクロックは4.8GHzです。

ローカルLLMが動かない理由と、この製品の解決策

ローカルLLM(大規模言語モデルを自分のPC上で動かす仕組み)を実用レベルで使うには、大容量メモリと高速GPUの両方が必要です。一般的なミニPCはメモリ16GB前後が多く、70億パラメータ級のモデルでもギリギリです。さらに、Ollamaなどのソフトを自分で入れ、モデルをダウンロードし、GPUドライバを調整する手間もかかります。

EVO-T2Sはこの課題をハードとソフトの両面から解きます。まず、LPDDR5X-8533の64GBメモリをオンボード搭載。GPUには最大48GBのVRAMを割り当て可能で、中規模モデルの推論に必要なメモリ帯域を確保しています。次に、ローカルLLM実行ソフト「herdsman」とAIエージェント「GMKtec Claw」(OpenClawベースのデスクトップアプリ)がプリインストール済みです。開封後、herdsmanでモデルをダウンロード・ロードし、GMKtec Claw側でそのモデルを選べば、クラウドを経由せずにAIエージェントを動かせます。

PC Watchの実機レビューでは、Qwen 3.6 35B A3Bが実用的な速度で動作したと報告されています(参考)。機密文書の横断検索や複数資料の要約など、データを外に出したくない業務にも向きます。

AI性能180TOPSの内訳

EVO-T2Sがうたう「最大180TOPS」は、CPU・NPU・GPUのAI演算性能を合算した数値です。内訳は次のとおりです。

  • NPU(ニューラル処理ユニット)単体:最大50TOPS(INT8演算)
  • GPU(Intel Arc B390)のAI性能:最大122TOPS
  • システム合計:最大180TOPS

Intel Arc B390は12基のXeコアを備え、最大動作周波数2.5GHz。ハードウェアレイトレーシングにも対応し、内蔵GPUとしては高いグラフィックス性能を持ちます。PC Watchのレビューでは、前世代のLunar Lake(Core Ultra 7 256V)搭載機と比べ、3DMarkのスコアが概ね2〜3倍、実ゲーム相当のFF XIVベンチマークでは最高画質で2.5倍の結果が出ています(参考)。

なお、現時点ではほとんどのAI処理はNPUかGPUのどちらか一方で動くため、180TOPSを同時に使い切る場面は限られます。PC Watchのレビューでも、今後OpenVINOによる最適化が進むことを期待する、と触れられています。

主なスペックと拡張性

項目 仕様
CPU Core Ultra X7 358H(16コア16スレッド)
GPU Intel Arc B390(12 Xeコア、最大2.5GHz)
メモリ LPDDR5X-8533 64GB(オンボード、増設不可)
ストレージ 1TB SSD(レビュー機構成)
OS Windows 11 Pro
無線 Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4
有線LAN 10Gbps + 2.5Gbpsのデュアルポート
電源 148.2W ACアダプタ

インターフェイスも充実しています。前面にUSB4(DisplayPort Alt Mode・USB PD対応)、USB 3.2 Gen 2×2、USB 2.0、音声入出力。背面にUSB4、USB 2.0×2、HDMI 2.1、DisplayPort 1.4、OCuLink(外部GPU接続用)、10G/2.5Gイーサネットを装備。最大4画面出力にも対応します。

ストレージはM.2 2280スロットを2基搭載。1基はPCIe 5.0 x4、もう1基はPCIe 4.0接続で、合計最大16TBまで拡張可能です。オプションでPhisonの「AI SSD」(aiDAPTIV+技術搭載、容量の一部をVRAMとして割り当て可能)も選べます。差額は4万7,000円です(参考)。

冷却はベイパーチャンバーとデュアルファンを採用。BIOSから電力モードを選べ、Quiet(35W)、Balance(45W)、Performance(54W、ピーク60W)の3段階です。Cinebench 2026のマルチコアスコアは、Lunar Lake搭載の同社K13と比べ約2倍の結果が出ています(参考)。

料金と購入時の注意点

64GBメモリ+1TB SSD構成の直販価格は38万3,840円。2026年6月時点ではセール価格32万3,999円(7,000円オフ適用)で販売されています(参考)。

購入前に押さえておきたい点が2つあります。1つ目は、64GBメモリがオンボードのため購入後の増設ができないこと。ローカルLLM用途では64GBは十分ですが、将来さらに大きなモデルを動かす予定がある場合は最初から余裕を持った構成を選ぶ必要があります。2つ目は、ローカルLLMの賢さはクラウドの最先端モデルには及ばないこと。PC Watchのレビューでは、趣味の情報収集や社内文書の検索程度に割り切るのが現実的だと指摘されています。用途に応じてGMKtec Clawのクラウドモデルと使い分けるのがよいでしょう。

類似製品との違い

ミニPC市場には、AMD Ryzen AI Max+ 395搭載のMINISFORUM MS-S1 MAXなど、AI性能を訴求する競合も存在します。Ryzen AI Max+ 395はGPU規模とメモリ帯域で優位な場面がありますが、TDPも2倍以上あり、消費電力と発熱のバランスはEVO-T2Sのほうが穏やかです。

ゲーム目的なら、ディスクリートGPU搭載ミニPCのほうが快適な場面も多いです。EVO-T2Sはメモリ64GBとAI向けプリインストールソフトで、ローカルAI環境を最短で試したいユーザー向けに設計されています。GMKtec Clawやherdsmanのプリインストールは、同社のローエンドモデルにも入っていますが、そちらはクラウドモデル利用が前提です。EVO-T2Sはハード性能がローカル推論を支える点が決定的な差です。

Panther Lakeは2026年1月に正式発表され、ノートPCへの搭載も始まっています。EVO-T2Sはその最新チップをミニPCに早く載せ、64GBメモリとAI向けソフトをセットにした、ローカルAI時代の入門機として位置づけられます。