折り紙が宇宙で開くと、体積比25倍のアンテナになる。
この記事でわかること:
- JAXAの「OrigamiSat-2」が何を実証したか
- 折り紙技術が宇宙アンテナに使われる理由
- Kakushin Risingミッションの詳細
宇宙でアンテナを広げることの難しさ
ロケットに搭載できる体積は限られている。大型アンテナをそのまま積むのは現実的でなく、打ち上げコストも上がる。一方、通信・地球観測・科学探査では、アンテナが大きいほど感度が上がり、より弱い信号を拾える。「小さく畳んで、宇宙で広げる」という設計の需要が高まっている背景がここにある。
折り紙技術が選ばれる理由
折り紙の技術は1970年代から工学に応用されてきた。宇宙物理学者の三浦公亮氏が考案した「三浦折り」は、地図の折りたたみに使われ、宇宙工学にも採用されている。宇宙で最初に折り紙技術を使った衛星は1995年に打ち上げられた。
展開型構造への折り紙の応用で得られるメリットは明確だ。打ち上げ時はコンパクトに収納でき、軌道上では段階的に展開できる。剛体アンテナより軽量で、展開後の形状精度を保ちやすい。
JAXAはこれまで複数の折り紙技術を試験してきた。今回打ち上げた「OrigamiSat-2」では「フラッシャーパターン」と呼ばれる渦巻き状に展開する手法を採用している。
OrigamiSat-2:10cmが2.5mになる仕組み
2026年4月23日(日本時間)、JAXAの「Kakushin Rising」ミッションがRocket LabのElectronロケットで打ち上げられた。ニュージーランドのMāhia半島から発射し、8基の衛星を高度540kmの低地球軌道に投入することに成功した。
搭載衛星の1つ「OrigamiSat-2」は3U CubeSat(10cm角の標準規格)だ。収納時は10cm角の立方体に収まるアンテナが、軌道上で展開すると約2.5mのアレイアンテナになる。体積比で25倍に広がる。JAXAはこれを「前例のない軽量・高収納性の展開型アレイアンテナ」と表現している。
アンテナ素子は2層の展開膜に取り付けられており、フラッシャーパターンの折り方によって渦巻き状に展開する。この設計は展開の確実性と収納効率を両立させるために採用された。
Kakushin Risingミッションの全容
今回の「Kakushin Rising」はRocket LabとJAXAの2回目の専用ミッションだ。1回目の「RAISE and Shine」は2025年12月に実施され、複数の先端技術を搭載したRAISE-4衛星を打ち上げた。
「Kakushin Rising」にはOrigamiSat-2を含む8基が搭載された。海洋監視衛星のMono-Nikko、超小型マルチスペクトルカメラの実証機FSI-SAT2、教育用小型衛星のKOSEN-2RとWASEDA-SAT-ZERO-IIなど、大学・研究機関・企業が開発した多様な技術実証機が含まれる。
Electronにとって87回目の打ち上げとなり、2026年の打ち上げは8回目になる。Rocket Lab CEOのSir Peter Beckは「数か月以内に2回の専用ミッションを連続成功させたことで、国家宇宙機関に選ばれる理由を示した」と述べた(参考)。
CubeSat時代に折り紙工学が持つ可能性
CubeSatは開発コストが低く、大学や新興企業が宇宙実験に使いやすい標準規格だ。小型ゆえにアンテナ性能に限界があったが、折り紙技術の成熟によってその制約が薄れつつある。
展開型アンテナが広く実用化されれば、通信衛星のコスト低減や、観測解像度の向上が現実的な選択肢になる。JAXAが先導する折り紙宇宙工学の研究は、今後の小型衛星設計に影響を与える。今回の実証データをもとに、実用衛星への搭載検討が次のステップになる。
