HarveyやLegoraのような法律特化AIは強力ですが、エンタープライズ契約が必須で費用が高く、文書を外部サーバーへ送ることへの抵抗もあります。2026年4月29日、その代替となるオープンソースの法律AIプラットフォーム「Mike」がGitHubで公開されました。公開から数日で1,500スターを超え、開発者・法律事務所双方から注目を集めています。

この記事でわかること

  • MikeがHarveyやLegoraの代替となる理由
  • チャット・プロジェクト・タブレビュー・ワークフローの4機能の詳細
  • 自己ホストに必要な構成要素とセットアップの流れ
  • 料金体系(ライセンス費用ゼロの仕組み)

https://github.com/willchen96/mike

Harvey・Legoraへの不満が生んだOSS

法律事務所向けの主要AI製品、Harvey(評価額$110億)やLegoraは、複数文書の同時解析や契約書の自動レッドライン生成など優れた機能を持っています。しかし共通の問題があります。エンタープライズ契約が必要、シートごとの課金が毎年上がる、文書がベンダーのサーバーへ送られる、という3点です。機密性の高い法的文書を扱う事務所にとって、外部サーバーへのデータ送出は大きなリスクです。

Mikeはその問題を正面から解決します。コードがすべて公開されており、自社インフラへのデプロイが前提の設計です。ライセンス費用は発生せず、支払うのはAnthropicやGoogleへのモデルAPIコストだけです。

4つの主要機能

アシスタント

Mikeの中心となるチャットインターフェースです。アップロードした文書を読み込み、回答に使った箇所を逐語引用で提示します。通常の質問応答だけでなく、契約書の条項を修正・新規起草するエンドツーエンドの編集機能も備えています。AIが提案した変更はトラックチェンジとして記録され、ユーザーが承認・拒否を選べます。使用するモデルは環境変数でClaudeとGeminiを切り替えられます。

プロジェクト

案件単位のワークスペースです。信用契約書、SPA(株式譲渡契約)、リース契約、デューデリジェンス一式など複数文書を1つのプロジェクトに格納でき、アシスタントはすべての会話とすべての文書にまたがったコンテキストを保持します。サブフォルダによる整理や、他のユーザーとの共有機能も持っています。

タブレビュー

数百件の文書を横断して情報を抽出するスプレッドシート形式のインターフェースです。たとえば「支払期日」「解除条項」「準拠法」といった列を設定しておくと、アップロードした文書ごとにAIが各列を埋めます。すべてのセルはページ番号と引用文字列で裏付けられており、ハルシネーションによる誤回答の検出が容易です。

ワークフロー

実績あるプロンプトをチームで再利用するための仕組みです。CP(Conditions Precedent)チェックリスト、信用契約サマリー、支配権変更レビューといった頻繁に使うタスクをワークフローとして保存しておき、ジュニアスタッフがワンクリックで実行できるテンプレートとして共有できます。

自己ホストに必要なもの

Mikeは以下の4サービスに依存しています。

  • Supabase — 認証(Auth)とPostgreSQLデータベース
  • S3互換オブジェクトストレージ — Cloudflare R2推奨。文書ファイルの保管先
  • モデルAPIキー — AnthropicのClaude、またはGoogleのGemini
  • LibreOffice — DOC・DOCX形式をPDFに変換するために必要

フロントエンドはNext.js、バックエンドはExpressで構成されています。セットアップは依存パッケージのインストール、.envファイルの設定、SupabaseのSQLエディタでスキーマを一括適用する3ステップで完了します。

npm install --prefix backend
npm install --prefix frontend
npm run dev --prefix backend
npm run dev --prefix frontend

ライセンスはAGPL-3.0です。自社内での利用は制限なく行えますが、Mikeを改変してSaaSとして提供する場合はソースコードの公開義務が生じます。

HarveyやLegoraとの違い

Mikeが独自に強調するのは「コードの透明性」です。プロンプトの構築方法、引用の解析ロジック、データの流れがすべてリポジトリで確認できます。Harvey・Legoraはいずれもブラックボックスであり、AIが回答を生成するプロセスを第三者が検証する手段がありません。

コスト面では、Mikeの直接費用はゼロです。Claude Sonnet 4でテキスト処理を行う場合、実費はAnthropicへのAPI料金のみになります。百人規模で使う事務所がHarveyに支払う年間ライセンス費用と比較すれば、数十万〜数百万円単位での削減が見込めます。

HackerNewsのスレッドでは「判例データベースへのアクセスがない点でWestlawの代替にはなれない」という批判も上がっています。Mikeは汎用LLMのラッパーであり、ThomsonReutersが独占するケースロウ(判例集)を内包していません。契約書レビューや法的ドラフティングには有効ですが、法律調査ツールとしての用途には限界があります。

まとめ

Mikeは、HarveyやLegoraの機能セットをライセンス費用なしに自社インフラで動かせるオープンソースの選択肢です。自社サーバーへの文書保存とモデルAPIキーの自己管理が許容できる環境であれば、エンタープライズ契約不要で法律AIの導入が現実的になります。

https://mikeoss.com