AIコーディングエージェントは、ファイルの内容は読める。ただし、コードベースの「文脈」は理解できない。

この記事では、コードの依存関係・変更履歴・設計思想をAIエージェントに渡すMCPサーバー「Repowise」を紹介する。

この記事でわかること:

  • Repowiseが解決する問題と仕組み
  • 4つのインテリジェンスレイヤーの内容
  • 7つのMCPツールと使いどころ
  • インストールから使い始めるまでの流れ
  • 料金と競合ツールとの比較

AIエージェントが「ファイルしか読めない」問題

Claude CodeやCursorといったAIコーディングエージェントは、指定したファイルの内容は読める。しかし、以下のような情報はソースコードのどこにも書かれていない。

  • このファイルを主に変更しているのは誰か
  • このファイルとセットで変更されることが多いファイルはどれか
  • このアーキテクチャの設計理由は何か
  • このコードが使われていないかどうか

エージェントはこうした「制度的な知識」を持たないため、コードを変更するたびに数十のファイルを読み込み、推測に基づいて答えを出す。その結果、コンテキストウィンドウを大量に消費し、コストが膨らむ。

Repowiseはこの問題を解決するために設計されたMCPサーバーだ。コードベースを4つのインテリジェンスレイヤーとして索引化し、7つのMCPツール経由でAIエージェントに渡す。

Repowiseとは

Repowiseは、コードベースインテリジェンスをAIエージェントに提供するオープンソースツールだ。ライセンスはAGPL-3.0で、pip install repowiseの1コマンドで導入できる。Claude Code、Cursor、Clineなど、MCPに対応したエディタで動作する。

GitHubのスター数は1,400を超えており、441以上のリポジトリで使われている(2026年5月時点)。

4つのインテリジェンスレイヤー

repowise initを実行すると、コードベースを以下の4つの形式で分析・索引化する。

グラフインテリジェンス

tree-sitterを使い、10言語以上のソースコードをAST(抽象構文木)で解析して依存グラフを構築する。ファイルノードとシンボルノード(関数・クラス・メソッド)の2階層で表現され、PageRankや媒介中心性により「プロジェクトの中核となるコード」を特定できる。コミュニティ検出アルゴリズムにより、ディレクトリ構造に依存せず論理的なモジュールを発見する。

Gitインテリジェンス

500コミット分の変更履歴を分析し、ホットスポット(変更頻度が高く複雑なファイル)、コードオーナー、そして「importリンクなしに一緒に変更されるファイル(隠れた結合)」を検出する。隠れた結合は、変更時の予期せぬ破壊を事前に警告してくれる。

ドキュメントインテリジェンス

LLMを使ってリポジトリ全体のwikiを自動生成する。コミットのたびに変更されたページだけを差分更新するため、常に最新の状態を維持できる。各ページには信頼度スコア(0.0〜1.0)が付与され、ソースコードが変更されると自動的に陳腐化を検知する。

意思決定インテリジェンス

他のツールにはない独自の機能だ。コードの設計理由——なぜJWTを選んだのか、なぜこの処理をCircuitBreakerでラップしているのか——をgit履歴やコード内マーカー、CLIから収集し、構造化した意思決定レコードとして管理する。get_why()ツールで検索でき、変更対象のファイルに関連する設計判断を事前に確認できる。

# WHY: JWT chosen over sessions — API must be stateless for k8s horizontal scaling
# DECISION: All external API calls wrapped in CircuitBreaker after payment provider outages

7つのMCPツール

Repowiseのエージェント統合の核心は、タスク指向で設計された7つのMCPツールだ。「このファイルのシンボルを返せ」という粒度ではなく、「コードを変更する前に知るべきことを全部返せ」という粒度で設計されている。

ツール 返す情報 いつ使うか
get_overview() アーキテクチャ概要、モジュールマップ、エントリーポイント 未知のコードベースの最初の一手
get_answer(question) wikiを検索して引用付きの回答を返すRAQ コードに関する質問の最初の一手
get_context(targets) ドキュメント、オーナー、変更履歴、設計判断 コードを読む・変更する前
search_codebase(query) 自然言語によるwikiのセマンティック検索 対象のファイルがわからないとき
get_risk(targets) ホットスポットスコア、依存コード、影響範囲 変更前のリスク評価
get_why(query) 設計判断の検索・ファイルごとの意思決定一覧 アーキテクチャ変更の前
get_dead_code() 未使用コードを信頼度順で列挙 クリーンアップ・リファクタリング時

公式のベンチマーク(repowise-bench)によると、Repowiseを使った場合とClaude Codeのみの場合を比較すると、1タスクあたりのコストが36%低下し、ツール呼び出し回数が49%削減されるとされている(参考)。ナイーブなファイル全体読み込みと比べたトークン数は、平均で27分の1以下になる。

インストールと使い始め方

pip install repowise
cd your-project
repowise init        # 初回インデックス作成(3,000ファイルで約25分)
repowise serve       # MCPサーバー+ローカルダッシュボードを起動

repowise initを実行すると、~/.claude/settings.jsonへのMCPサーバー登録、.mcp.jsonの生成、post-commitフックのインストールが自動で行われる。以降はコミットのたびに変更されたファイルだけを30秒以内で更新する。

複数リポジトリを持つプロジェクトでは、親ディレクトリでrepowise init .を実行することで、リポジトリ間のco-change検出やAPIコントラクトの抽出も行える。

Claude Code以外のエディタに追加する場合は、.mcp.jsonまたは設定ファイルに以下を追記する。

{
  "mcpServers": {
    "repowise": {
      "command": "repowise",
      "args": ["mcp", "/path/to/your/project"]
    }
  }
}

競合ツールとの違い

公式サイトの自己評価によると、DeepWiki・Google CodeWiki・CodeScene・Sourcegraphはそれぞれ一部の機能を持つが、以下の機能をすべて備えているのはRepowiseのみとされている。

  • セルフホスト可能なOSS(AGPL-3.0)
  • Gitインテリジェンス(ホットスポット・オーナー・co-change)
  • 意思決定レコード(設計理由の管理)
  • AIエージェント向けMCPサーバー
  • ドキュメントの鮮度スコアリング
  • CLAUDE.md自動生成

なお、この比較は公式サイトの自己評価(2026年5月時点)によるもので、各ツールの機能は変化するため詳細は各サービスで確認してほしい。

料金

セルフホストであれば永続的に無料(AGPL-3.0ライセンス)で、コードを自分のインフラ外に出さずに使える。Ollamaを組み合わせることでLLM呼び出しも完全オフラインで動作する。

ホスト型SaaSのProプランは月額$15で、LLMクレジットが含まれる。エンタープライズ向けにはオンプレミス展開・SSO・専任サポートも提供している。

まとめ

Repowiseは、AIエージェントがコードを「読む」から「理解する」にシフトするための橋渡しをするツールだ。ファイルを大量に読み込ませる代わりに、依存グラフ・変更履歴・設計理由を構造化して渡すことで、コスト・速度・精度のバランスを改善する。Claude CodeやCursorを日常的に使っているエンジニアであれば、pip install repowiseから試してみる価値がある。