開発AIはコードを書けても、耳と声を持たない——この壁を、VoxBee 0.9.0がMCP対応で崩し始めました。

この記事では、VoxBee 0.9.0のMCPサーバー対応が何を変えるのか、Claude Code・Codex・Cursorへの接続方法、実際に使える音声ツールの内容を整理します。

この記事でわかること

  • VoxBee 0.9.0で追加されたMCP対応の概要
  • 開発エージェントが使える音声ツール(文字起こし・読み上げ・停止)
  • Claude Code・Codex・Cursorへの接続手順
  • ローカルAPIサーバーとの関係とオンデバイス処理の仕組み

https://voxbee.app/

VoxBee 0.9.0で何が変わったか

2026年6月6日にリリースされたVoxBee 0.9.0は、オフライン音声入力アプリにMCP(Model Context Protocol)サーバーを組み込みました。MCPは、AIエージェントと外部ツールをつなぐオープン標準です。Anthropicが2024年後半に公開し、Claude CodeやCursorなどの開発ツールが広く採用しています。

開発者向けの発表(参考)では、Claude Code、Codex、CursorがVoxBeeの音声機能をネイティブツールとして呼び出せると説明されています。具体的には、音声ファイルの文字起こし、テキストの読み上げ、再生の停止がエージェント側から実行できます。

デモでは「このPDFを要約して、要約を声で読んで」と指示すると、要約の読み上げまで一連の流れで完了します。エージェントが再生した音声は、VoxBeeのフローティング再生ドック経由で流れるため、アプリ内のどの画面からでも一時停止や停止が可能です。

なぜMCP対応が必要だったか

これまでの開発AIは、ファイルの読み書きやコマンド実行は得意でも、マイク入力やスピーカー出力には直接アクセスできませんでした。音声処理を使うには、別アプリを開いて結果をコピー&ペーストする手間が発生していました。

MCPは、この課題を標準化されたインターフェースで解決します。アプリ側がMCPサーバーを1つ用意すれば、対応するエージェントは共通の手順でツールを呼び出せます。VoxBeeはStreamable HTTPトランスポートを採用し、http://127.0.0.1:5111/mcp にエンドポイントを公開しています。

エージェントが使えるツール一覧

VoxBeeのMCPサーバーが公開するツールは、公式ブログ(参考)によると次のとおりです。

  • transcribe — ディスク上の音声ファイルを文字起こしする。VoxBeeにインストール済みのSTTモデル(WhisperやParakeet)で処理する
  • speak — テキストを指定の音声で読み上げる
  • stop — 再生中の音声を停止する
  • list_models / list_voices — 利用可能なモデルと音声を一覧表示し、エージェントが適切な設定を選べるようにする

これらは、エージェントが持つ read_filerun_command と同じ感覚で呼び出されます。エージェントはツールの説明文を読み、ユーザーの指示に合うものを選んで実行します。

Claude Code・Codex・Cursorへの接続方法

接続設定は、VoxBeeアプリ内の新設「API」タブから行います。各エージェント向けに、認証トークンが埋め込まれた接続コマンドや設定スニペットがコピー可能です(参考)。

Claude Codeの場合、ターミナルで次のコマンドを実行します。

claude mcp add --scope user --transport http voxbee http://127.0.0.1:5111/mcp \
  --header "Authorization: Bearer YOUR_TOKEN"

--scope user を付けると、全プロジェクトでVoxBeeが使えるようになります。Codex向けには ~/.codex/config.toml 用のTOMLブロック、Cursor向けには ~/.cursor/mcp.json 用のJSONブロックがAPIタブに用意されています。

接続後に試せるプロンプト例も公開されています。

  • 「README.mdを声で読んで」
  • 「このPDFを要約して、要約を声で読んで」
  • 「voice-memo.m4aを文字起こしして、同じ場所にテキストを保存して」
  • 「このPRの説明を声で読みながらdiffを見たい」

ローカルAPIサーバーとの関係

MCPは、VoxBee 0.9.0で追加されたローカルAPIサーバーの上に構築されています(参考)。このサーバーはデフォルトで http://127.0.0.1:5111 にバインドし、OpenAI互換のルートを提供します。

  • POST /v1/audio/transcriptions — 音声の文字起こし
  • POST /v1/audio/speech — テキストの読み上げ
  • GET /v1/models / GET /v1/voices — インストール済みモデルと音声の一覧

OpenAI SDKを使うスクリプトは、base_urlhttp://127.0.0.1:5111/v1 に変更するだけでVoxBeeを呼び出せます。MCPはこのREST APIをエージェント向けのツール呼び出しに変換する層です。

APIタブではサーバーのオン・オフ、Bearerトークンの管理、Scalarベースの対話型APIエクスプローラーも利用できます。ブラウザから http://127.0.0.1:5111/docs を開けば、全エンドポイントを試せます。

オンデバイス処理とセキュリティ

VoxBeeの音声処理は、原則として端末内で完結します。文字起こしはローカルのWhisperまたはParakeetモデル、読み上げはSystem音声(macOSのオンデバイス合成)で動作し、APIキーなしでも利用できます。クラウドプロバイダーを使う場合も、ユーザー自身のAPIキーを設定した場合に限られます。

セキュリティ面では、サーバーはループバック(127.0.0.1)にバインドされ、全リクエストにBearerトークン認証が必要です。LANへの公開はオプトインで、デフォルトはローカルマシンからのみアクセス可能です。音声データがクラウドに送られることはなく、従量課金も発生しません。

既存機能との違い

VoxBeeはもともと、プッシュトゥートークの音声入力、ファイルの文字起こし、会議録音とAI要約をMac・Linux向けに提供するデスクトップアプリです。WhisperとNVIDIA Parakeetのオンデバイスモデル、30言語対応、個人辞書などが特徴でした。

0.9.0以前は、これらの機能を人間がアプリから直接使う前提でした。0.9.0でMCPとローカルAPIが加わり、開発エージェントが同じ音声エンジンをプログラム経由で操作できるようになりました。人間向けのUIとエージェント向けのプロトコルが、同一の処理基盤を共有する構成です。

料金と利用条件

VoxBeeは買い切り49ドル(2デバイス込み)のデスクトップアプリで、14日間の無料トライアルがあります。アカウント登録やクラウド契約は不要です。MCP対応を含む0.9.0の機能は、ライフタイムアップデートの対象です。

類似ツールとの位置づけ

音声対応のMCPサーバーは、他にも存在します。たとえばrtk-aiのVoxはTTS特化のMCPサーバーを提供し、trvon/voxはオンデバイスのSTT・TTSをMCPで公開しています。一方VoxBeeは、音声入力・文字起こし・読み上げ・会議要約を1つのアプリに統合したうえで、開発エージェント連携を追加した点が特徴です。すでにVoxBeeを音声入力に使っている開発者にとって、0.9.0は既存ワークフローをそのままエージェント側に拡張するアップデートと言えます。