AIがオンチェーンで資産を動かす時代が、ひとつのプラットフォームに集約されました。

Speraxは2026年6月、DeFi向けAIエージェント基盤「SperaxOS」を一般公開し、ソースコードもオープンソース化しました。7年かけて積み上げたステーブルコインや流動性プロトコルの知見を、自然言語から安全にオンチェーン実行できるワークスペースとしてまとめ直したリリースです。

この記事でわかること

  • SperaxOSが解く課題と、公開された中身の全体像
  • 100超のDeFiツールと70超のAIモデル対応が意味すること
  • DeFi GuardやERC-8004による安全設計とエージェント経済
  • 開発者向けSDKと、どこから試せるか

SperaxOSとは何か

SperaxOSは、DeFi(分散型金融)向けのAIエージェント・ワークスペースです。チャット形式のUIから、スワップ、レンディング、利回り最適化、ポートフォリオ管理といったオンチェーン操作をエージェントに任せられます。

Speraxは2019年設立のDeFiプロトコルで、2021年12月にArbitrum上で自動利回りステーブルコイン「USDs」を、流動性プロトコル「Demeter」を展開してきました。Jump Crypto、Polychain Capital、Amber Group、Outlier Venturesなどから資金調達を受け、QuantstampやCertiKなど複数社による監査も実施しています。SperaxOSは、その延長線上にある「AIが資本を動かす層」として位置づけられています。

DeFiとAIをつなぐときの壁

DeFi操作は、プロトコル選定、ガス代、スリッページ、MEV(最大抽出可能価値)対策など、判断ポイントが多い領域です。汎用チャットAIに任せると、ツール連携の実装負荷が大きく、実行前のリスク確認も手作業になりがちです。

一方、単一のボットやスクリプトだけでは、複数ステップの戦略立案や、モデル・ツールの切り替えに柔軟性がありません。SperaxOSは、この「連携の手間」と「実行の安全性」の両方を、プラットフォーム側で吸収する設計を採っています。

今回公開された主な機能

100超のDeFi・Web3ツールを標準搭載

Uniswap、PancakeSwap、1inchなどのDEX集約、レンディング、ブリッジ、パーペチュアル、DCA注文、利回り最適化、ポートフォリオ追跡、トークン承認の監査、MEV保護、トランザクションシミュレーションなど、100超のツールが組み込まれています。DefiLlama、Dune、CoinGecko、Etherscanなどの分析データ源とも連携し、エージェントから呼び出せます。

個別にAPIをつなぎ直す必要がなく、エージェント開発の初期コストを下げる構成です。

70超のAIモデルとオーケストレーション

70超のモデルプロバイダーに対応し、ストリーミング応答、エージェントのオーケストレーション、リクエストごとに最適なツールを選ぶスマートルーター、複数ステップのDeFiワークフローを実行可能なプランに落とす戦略エンジンを備えています。

2025年12月には、500超の専門DeFiエージェントを扱うAgent Index APIも公開済みです。エージェント定義はJSON形式で、18言語対応のインデックスとして配信されています。

安全設計をアーキテクチャに組み込む

「DeFi Guard」と呼ばれる専用レイヤーが、オンチェーン操作ごとにリスク、スリッページ、MEV露出をレビューします。実行前にシミュレーションとプレビューを行い、明示的な承認なしに資金は動きません。USDs運用で培ったリスクファーストの方針を、AI層にも持ち込んだ形です。

オンチェーンのエージェント経済

エージェントはERC-8004(オンチェーンのAIエージェント識別規格)に基づくNFTとして登録されます。SPAトークンのステーキングと、クリエイター70%、プロトコル20%、委任ステーカー10%の収益分配モデルで、エージェント作成者が収益を得られる仕組みです。

2026年3月には、Arbitrum上のx402決済ファシリテーターや、調査・戦略・リスク・開発の専門エージェントが協調する「Agent Groups」も追加されています。

TypeScriptとPythonのSDK

開発者向けにTypeScriptとPythonのSDKを提供しています。DeFiインテリジェンス、エージェントランタイム、オンチェーンのエージェントレジストリへ、数行のコードからアクセスできます。プラットフォームはセルフホストも可能で、ソースコードはGitHubのSperax組織で公開されています。

MCP連携とエコシステム

SperaxはAnthropic公式のMCP(Model Context Protocol)レジストリに、DeFiデータを自然言語で問い合わせられるMCPサーバーを登録しています。ClaudeなどのAIアシスタントから、USDsやDemeterのライブデータへつながる経路を用意した点が特徴です。

2026年1月にはGoogle Cloudとの協業も発表され、10超のブロックチェーン向けリアルタイムAI分析に20万ドルのインフラ支援が提供される予定です。エージェント層は2025年の第3四半期からArbitrumとBNB Chainで稼働しており、今回の公開でチャットUI、SDK、エージェント市場がひとつのOSS基盤に統合されました。

料金と利用形態

SperaxOS本体はオープンソースで、セルフホストが可能です。クラウド版のワークスペースは chat.sperax.io から利用できます。AIモデルの利用料やオンチェーンのガス代は、選んだプロバイダーとネットワークに依存します。エージェント経済では、作成したエージェントの利用に応じてSPAステーキング経由の収益分配が設計されています。

他のDeFi AIツールとの違い

単体のトレーディングボットや、特定チェーン専用のMCPサーバーと比べ、SperaxOSは「マルチモデル実行環境」「100超の組み込みDeFiツール」「実行前ガードレール」「オンチェーン登録と収益分配」までを一体で提供する点が異なります。7年分のプロトコル運用実績を前提に、エージェントに資本操作権限を渡す設計になっているのも特徴です。

誰に向いているか

  • DeFi操作を自然言語で自動化したい個人投資家
  • エージェントを作って収益化したい開発者
  • 自律的な資本配分を組み込みたいプロトコルやDAO

ドキュメントは docs.sperax.io、ソースコードは github.com/sperax から入手できます。AIとDeFiの境界が薄くなる中、コードとガードレールを公開した形での提供は、エージェントに実資産を預ける前提では重要な判断材料になります。