高級セダンの頂点に、生成AIが標準装備として入り込みました。メルセデス・ベンツは刷新したS-Classの予約受付を開始し、エントリー価格を約9万9715ドル(S 450 d 4MATIC)と発表しています。走行中の音声操作からナビ検索、メモ要約まで、ChatGPTやGeminiを組み合わせたMBUXが車内体験の中心になります。

この記事では、新型S-Classの予約・価格情報と、MB.OSやMBUX Superscreenを含む主要な変更点を整理します。

  • 予約開始と価格帯(約9万9715ドル〜20万2500ドル)
  • MB.OSと第4世代MBUX Virtual AssistantのAI連携
  • 外装・内装・パワートレインの主な改良点
  • 米国向けモデルの販売時期と現行との違い

https://www.mbusa.com/en/future-vehicles/2027-mercedes-benz-s-class-sedan

予約開始と価格帯

メルセデス・ベンツは、大幅刷新したS-Classの予約受付を開始しました。エントリーモデルのS 450 d 4MATICは約9万9715ドルからです。S 580 4MATICのロングホイールベース版の価格と納期詳細は、2026年9月頃の発表を予定しています。

ラインナップは6グレードに及び、S 350 d 4MATIC、S 450 4MATIC、S 450 4MATIC Long Exclusive、S 450 4MATIC Long AMG Line、S 500 4MATIC Long、S 580 4MATIC Longが並びます。価格帯は約11万5500ドルから20万2500ドルまでです。

米国向けの2027年モデルは、公式サイト上では2026年後半のディーラー入荷を予定しており、現時点では米国価格は未発表です。現行2026年モデルの米国MSRPは12万900ドル〜13万2050ドルで、MotorTrendは新型の米国価格を14万ドル超と見込んでいます(参考)。今回の予約・価格発表は、主に欧州など一部市場向けの情報として読む必要があります。

MB.OSとAI統合MBUXが何を変えるか

従来のMBUXは、音声コマンドとタッチ操作が中心でした。新型S-Classは、車載OS「MB.OS(Mercedes-Benz Operating System)」上でインフォテインメント、運転支援、パフォーマンス管理を一体制御します。OTA(無線経由のソフトウェア更新)にも対応し、出荷後も機能追加が可能です。

第4世代MBUX Virtual Assistantは、生成AI(Generative AI)を前提に設計されています。Google Mapsによるナビゲーションに加え、ChatGPT(Microsoft Azure経由)、Microsoft Bing、Google Geminiを用途に応じて使い分けます。メルセデス・ベンツのMagnus Östberg氏は、単一モデルでは全タスクをこなせないため複数AIを組み合わせる方針を説明しています(参考)。

GeminiはGoogle CloudのAutomotive AI Agent経由で、250 million件規模のPOI(Point of Interest)情報と連動します。例えば「近くの評判の良いレストランは?」と尋ね、続けて「シェフの看板メニューは?」と深掘りする多段会話が可能です。ChatGPTとBingは、最新の知識ベースに関する質問に向いています。

走行中のメモ機能も追加されています。ドライバーが声で思いつきを話すと、AIが箇条書きに要約し、メール送信や編集に回せます。後席13.1インチのMBUX High-End Rear Seat Entertainment Systemと内蔵カメラにより、全席からのビデオ会議にも対応します。公式サイトは「ボードルームを車内に持ち込む」と表現しており、移動中のビジネス利用を想定した設計です。

MBUX Superscreenと内装の刷新

MBUX Superscreenが標準装備になりました。14.4インチのメディアディスプレイと12.3インチの助手席スクリーンを、浮遊感のある一体レイアウトで配置します。米国向け仕様では、12.3インチのドライバーディスプレイと合わせた3画面構成です。

MBUX Surround Navigationは、Google Mapsのルート案内に3Dサラウンド表示を重ね、ドライバーディスプレイやARヘッドアップディスプレイ(オプション)上に周囲の状況を可視化します。Zero Layerインターフェースも刷新され、スマートフォンに近いカスタマイズ性を持たせています。

内装では、Digital Vent Controlがエアベントの向きを自動調整します。ENERGIZING AIR CONTROLは新しい電気式フィルターで、約90秒ごとに室内空気を入れ替え、精製塩粒の1200分の1サイズの粒子をイオン化して除去します。フロントシートベルトの加熱機能はS-Class初採用で、寒冷地での乗降を快適にします。センターコンソールは開放気孔仕上げのアンバーブラウンウォルナット、ヘリンボーンパターンを採用しています。

外装と走行性能

外装の目玉は、前世比20%大きくなったラジエーターグリルです。S-Classセダンでは初めてグリル全体が発光し、4本のクロームルーバーと星型クロームデザインでフレームを囲みます。DIGITAL LIGHTと組み合わせ、夜間の存在感を高めます。サイドのブランドロゴプロジェクターは乗降時に地面へ星を投影し、リアにはクローム縁取りの新コンビネーションランプと三つ星モチーフを配しました。ボンネット上の立星エンブレムも、初めて発光仕様で選択可能です。

パワートレインはすべて電化されています。米国向け公式仕様では、S 500(442 hp、443 lb-ft、0-60 mph 4.3秒)、S 580(530 hp、553 lb-ft、3.9秒)、S 580e PHEV(576 hp、553 lb-ft、21.96 kWhバッテリー、4.4秒)が中心です。AIRMATICエアサスペンション、4MATIC全輪駆動、4.5度の後輪操舵が標準です。

CEO Ola Källenius氏は、2700以上の部品を新開発・再設計し、車両の50%超を入れ替えたと述べています(参考)。通常のマイナーチェンジを超える規模で、2026年にドイツ・ジンデルフィンゲンのFactory 56で生産開始予定です。

競合との位置づけ

BMW 7シリーズやGenesis G90など、同クラスのライバルと比べ、新型S-Classは「AI統合インフォテインメント」を前面に出しています。BMW iX3でもGoogle Automotive AIを採用する動きがあり、高級車市場では音声アシスタントの会話品質が差別化要因になりつつあります。

一方、米国では価格が未発表のため、現行S-Class(12万900ドル〜)からの値上げ幅は未知数です。Superscreen標準化とMB.OS導入は、EQSやCLAで培った技術の上位展開と位置づけられます。AMG S63やMaybach版の詳細は、別途発表待ちです。

購入を検討する際のポイント

予約を検討するなら、まず自国の価格表と納期を確認してください。今回発表された約9万9715ドルからの価格は、ディーゼルエントリーを含む一部市場向けです。米国ではS 500/S 580/S 580eが中心となり、2026年後半の入荷が目安です。

AI機能の利用条件(通信プラン、地域制限、言語対応)も、ディーラー確認が欠かせません。ChatGPTやGeminiはクラウド経由のため、走行中もモバイル通信が前提です。MANUFAKTUR Made to Measureプログラムでは、150色超の外装色と400色超の内装色からカスタマイズでき、個別オーダーの幅も広がっています。