G7首脳会談、ChatGPTの機能刷新、Geminiスピーカー、Grok Imagine 1.5——6月17日前後に、AI業界から目を離せない動きが相次いでいます。
この記事では、6月18日朝時点で押さえておきたい6つのトピックを整理します。
- G7 AI首脳会談とFable 5停止の背景
- GLM-5.2がCodexで使えるようになった理由
- CodexのOSSモードでオープンソースモデルを利用する方法
- ChatGPTのスケジュール機能刷新とPulse終了
- Gemini統合のGoogle Home Speaker
- xAI Grok Imagine Video 1.5の正式版リリース
G7 AI首脳会談とFable 5停止の背景
6月15日から17日、フランス・エヴィアン=レ=バンで第52回G7首脳会議が開催されました。最終日の6月17日、AI業界のトップが首脳と同席するワーキングランチが行われ、テーマは「AIの安全かつ迅速な展開」です。
参加したのは、OpenAIのSam Altman、Google DeepMindのDemis Hassabis、AnthropicのDario Amodei、Mistral AIのArthur Menschなど、計12社のAI企業トップです。フランスのEmmanuel Macron大統領は、西側民主主義国が1か月以内にAI協調プラットフォームを設立し、9月に再び首脳が集まる方針を示しました。
G7は「信頼できるパートナー(trusted partners)」枠の創設も議論しています。米国の輸出規制で非米国ユーザーが最新モデルに触れにくくなった問題を受け、同盟国がAnthropicなどの先端モデルへアクセスできる仕組みを模索する動きです。Macron大統領は「数週間以内に進展がある」と述べ、Amodei CEOは首脳と個別会談も行いました。
この文脈で注目されるのが、AnthropicのFable 5とMythos 5の全世界停止です。6月12日、米商務省のHoward Lutnick長官から輸出管理指令が届き、外国籍ユーザーへの提供停止が命じられました。Anthropicは国籍を大規模に判別する手段がないため、全世界のユーザーから両モデルを切り離しました。
停止の引き金は、Fable 5の「狭いジャイルブレーク(非汎用的な回避手法)」の存在です。特定のコードベースを読み込ませ、脆弱性を修正させる手法が問題視されました。Anthropicは、同程度の能力はOpenAIのGPT-5.5など他モデルでも再現可能だと反論し、「誤解であり、できるだけ早くアクセスを復旧する」と声明しています。ただし、復旧日は未発表です。G7での協議が、Mythos 5へのアクセス拡大の糸口になるかが焦点です。
Sam Altmanは首脳会議で、AI安全の責任を企業に委ねるべきではないと訴えました。各国が国際フォーラムでガードレールを引く必要がある、という主張です。
GLM-5.2がCodexで使えるようになった
Z.ai(智譜AI)の最新コーディングモデルGLM-5.2が、OpenAI Codexから利用できるようになりました。Ollamaの公式ライブラリページでは、ollama launch codex --model glm-5.2:cloud という起動コマンドが案内されています。
https://ollama.com/library/glm-5.2
GLM-5.2は6月13日にCoding Planユーザー向けに先行提供され、6月16日に詳細なベンチマークとともに正式発表されました。MITライセンスのオープンウェイトで、100万トークンのコンテキストを実用的な精度で扱える点が売りです。
Z.aiの公式ベンチマークによると、Terminal-Bench 2.1で81.0点(GLM-5.1は63.5)、SWE-bench Proで62.1点(GLM-5.1は58.4)を記録しています。FrontierSWE、PostTrainBench、SWE-Marathonの3つの長期コーディングベンチマークでは、オープンソースモデルとして最高位を占めています。
推論の負荷はHighとMaxの2段階から選べます。Claude Opus 4.8との差はTerminal-Bench 2.1で4ポイントにまで縮まっており、コーディングエージェントの選択肢として実用ラインに入ったと言えます。
Codexでオープンソースモデルを動かす
Codex CLIはもともとApache 2.0ライセンスのオープンソースプロジェクトです。OpenAI公式ドキュメントでは、--oss フラグでOllamaやLM Studioなどのローカルプロバイダーに接続できるOSSモードが案内されています。
https://developers.openai.com/codex/open-source
起動時に --oss を付けると、ローカルで動いているオープンソースモデルにCodexのエージェント機能をそのまま使えます。config.toml では oss_provider = "ollama" のようにデフォルトプロバイダーを指定できます。カスタムプロバイダーを model_providers セクションに追加すれば、OpenRouter経由で別モデルを使う構成も可能です。
GLM-5.2がOllamaに登録されたことで、CodexユーザーはOpenAIの有料モデルに加え、MITライセンスの大規模コーディングモデルをローカルまたはクラウド経由で選べるようになりました。CLI本体、SDK、アプリサーバーはオープンソースですが、VS Code拡張やCodex Webは非公開のままです。
ChatGPTのスケジュール機能刷新とPulse終了
OpenAIは6月17日、ChatGPTのスケジュールタスク機能を大幅に更新しました。サイドバーに「Scheduled」ページが追加され、リマインダー、定期作業、モニタリングタスクを一画面で管理できます。
https://help.openai.com/en/articles/10291617
変更点は次のとおりです。
- 朝・午後・夕方など、時間帯を指定してタスクを実行できる
- モニタリングタスクがWeb検索や接続アプリを定期チェックし、変化があった場合のみ通知する
- タスクの作成・編集フローと通知の精度が向上した
一方、2025年9月に開始したPulse(パーソナライズされた日次ダイジェスト機能)は、約14日以内に終了します。Pulseは会話履歴や興味関心から自動生成する朝のブリーフィングでしたが、スケジュールタスクで同等の体験を再現するよう案内されています。例えば「毎朝AIニュースと天気をまとめて送って」と設定すれば、Pulseに近い運用が可能です。
利用条件にも注意が必要です。タスクは1時間に1回までしか実行できず、Goプランは最大3件、Plusは5件、Pro・Business・Enterpriseは15件が上限です。長期間操作がないタスクは自動一時停止されます。Go、Plus、Pro、Business、EnterpriseのWeb・モバイル版に順次展開中です。
Gemini統合のGoogle Home Speaker
Googleは6年ぶりの新型スマートスピーカー「Google Home Speaker」を発表しました。Gemini for Home音声アシスタント専用に設計された初のオーディオデバイスです。
https://blog.google/products-and-platforms/devices/google-nest/google-home-speaker-gemini-features/
6月17日から予約受付を開始し、6月25日に店頭販売を開始します。価格は99.99ドル、日本を含む18か国で展開されます。
従来のGoogle Assistantと異なり、Gemini for Homeは自然な会話形式で指示を受け付けます。「キッチンの明かりを消して、リラックスできる音楽をかけて、20分タイマーをセットして」のように複数の命令を一度に伝えられます。言い直しや複雑な質問への多段推論にも対応し、Continued Conversation(会話継続)機能で「OK Google」の繰り返しも不要になりました。
ハードウェア面では58mmドライバーによる360度サウンド、クアッドコア2.0GHz A55プロセッサにNPU(AIアクセラレータ)を搭載しています。2台をGoogle TV Streamerと組み合わせれば空間サラウンドも使えます。MatterコントローラーとThread Border Router機能も内蔵しています。
購入者には6か月分のGoogle Home Premium(60ドル相当)が付属します。Premium加入でGemini Live(自由な双方向会話)、カメラ履歴検索、Home Briefs(外出中の家の様子サマリー)が使えます。9月30日までの購入が対象です。
xAI Grok Imagine Video 1.5の正式版
xAIは6月16日、画像から動画を生成するGrok Imagine Video 1.5を正式版(GA)としてリリースしました。プレビュー版から昇格し、Imagine APIとgrok.com/imagine、iOS・Androidアプリで利用できます。
https://x.ai/news/grok-imagine-video-1-5
APIのモデルIDは grok-imagine-video-1.5 です。静止画を起点に、自然言語でモーションを指示して動画化します。解像度は720p、最大15秒まで設定可能です。
前モデルと比べた改善点は次の3点です。
- モーションと物理演算:クリップ全体で動きが破綻しにくく、重量感のある動きを再現
- 音声:効果音・環境音・セリフを同一パスで生成し、口の動きとの同期精度が向上
- 速度:Video 1.5 Fastは6秒720p動画を約25秒で生成。前モデルの40秒超から大幅短縮
API出力の料金は秒あたり0.080ドルです。あわせてProjects(作品整理)、複数エージェントの並列実行、ライブラリ内検索機能も今後数日で展開されます。
開発者と一般ユーザーへの示唆
6月17日前後の動きを俯瞰すると、AI業界は「規制と協調」「エージェント自動化」「端末へのAI組み込み」の3方向に同時に進んでいます。
G7での首脳・CEO会談は、Fable 5停止が引き起こした「先端モデルへのアクセス格差」問題への政治的な回答です。AnthropicがいつFable 5を復旧するかは未定ですが、G7の「信頼できるパートナー」枠が具体化すれば、同盟国向けのモデル提供ルートが開く可能性があります。
開発者向けには、CodexでGLM-5.2が選べるようになった点と、ChatGPTのスケジュールタスク強化が実務に直結します。前者はコーディングモデルの選択肢拡大、後者はAIを「聞く相手」から「定期実行するエージェント」へ押し上げる動きです。Google Home SpeakerとGrok Imagine 1.5は、音声アシスタントと動画生成の体験をそれぞれ底上げする製品更新として位置づけられます。