リモート環境でAIコーディングエージェントを動かすとき、OSの準備からCLIの導入、推論APIの設定まで手順が分かれがちです。xAIのGrok BuildがDigitalOcean Marketplaceの1-Click Appになったことで、エージェント入りのUbuntu 24.04 Dropletを数分で立ち上げられます。

この記事では、Grok BuildのDigitalOcean向け1-Click Appの内容と、コントロールパネル・APIでの起動方法を整理します。

この記事でわかること

  • 1-Click Appで何がプリセットされるか
  • コントロールパネルとAPIでのDroplet作成手順
  • Gradient連携による推論の設定と、ローカル利用との違い

DigitalOceanでGrok Buildが1クリック起動に

2026年6月17日、DigitalOceanは公式XアカウントでGrok BuildのMarketplace掲載を告知しました。開発者はコントロールパネルからGrok Build入りのDropletを選ぶだけで、SSH接続後にgrokコマンドを実行できる状態まで進められます。

1-Click Appのイメージスラッグはgrokbuild、イメージIDは233027436です。ベースOSはUbuntu 24.04 LTSで、Grok Build 0.2.51が同梱されています。DigitalOceanの説明では、端末ネイティブのコーディングエージェントがGradientのサーバーレス推論向けに事前設定され、IDEなしで計画・実装・レビュー・リファクタリングが行えるとされています。

なぜMarketplace連携が意味を持つか

Grok BuildはxAIが2026年5月25日に早期ベータを公開した端末向けコーディングエージェントです。通常の導入はcurl -fsSL https://x.ai/cli/install.sh | bashでCLIを入れ、SuperGrokまたはX Premium+のアカウントでサインインする流れが基本です(xAI公式ドキュメント)。

ローカルPCではブラウザ認証が使えますが、ヘッドレスなクラウドVMでは認証や推論設定が別課題になります。DigitalOcean版はGradientのOpenAI互換エンドポイント(https://inference.do-ai.run/v1)へ接続済みで、モデルアクセスキー1つでGPT-5.5、Claude、Llama、DeepSeek、Qwenなど複数モデルを切り替えられます。Marketplace説明では、Gradient経由なら別途のモデルサブスクリプションは不要と明記されています。

1-Click Appに含まれるもの

Marketplaceの仕様表によると、最小構成はRAM 1GB・vCPU 1コア・ストレージ25GB、推奨はRAM 2GB・vCPU 2コア・ストレージ50GBです。Grok Build本体の処理は軽量で、推論の大半はGradient側で行われます。

同梱コンポーネントは次のとおりです。

  • Ubuntu 24.04 LTS
  • Grok Build 0.2.51(xAI公式インストーラ経由)
  • DigitalOcean Gradient AI(推論プロバイダ事前設定)
  • Git、curl、jq、unzip
  • UFWファイアウォール(SSHのみ許可、レート制限付き)

エージェント機能として、自然言語での計画とファイル編集、Planモードでの承認フロー、並列サブエージェント、grok -pによるヘッドレス実行、AGENTS.mdやMCPサーバーなど既存の開発ルールの読み込みに対応します。デフォルトモデルはGPT-5.5(エイリアスgpt-5-5)です。

コントロールパネルでの起動手順

Marketplaceの「Create Droplet」から作成画面へ進みます。リージョンとプラン(最低1GB RAM)を選び、SSHキーを登録してDropletを作成します。

起動後はSSHでrootログインし、初回セットアップウィザードがGradientのモデルアクセスキーを求めます。キーはコントロールパネルのGradientで「API Keys > Model Access Keys」から発行します。貼り付けるとウィザードがキーをhttps://inference.do-ai.run/v1へ検証し、Grok Buildを自動設定します。デフォルトモデルは一覧から選べ、後からTUIの/model-m <alias>で変更できます。

xAIを直接使う場合は、ウィザードでGradient入力をスキップし、xAIアカウントのデバイスコード認証(/opt/grok-login.sh)かxAI APIキーを選べます。Dropletにはデスクトップブラウザがないため、素のgrok loginは避け、デバイスコード方式が推奨されています。

プロジェクトディレクトリでgrokを実行すれば対話セッションが始まります。自動化では次のように使えます。

grok -p "Explain this codebase"
grok -p "Review this diff" --output-format json --always-approve

APIでDropletを一発プロビジョニングする

DigitalOcean APIのPOST /v2/dropletsに、イメージスラッグgrokbuildを指定して作成できます。開発者向けの投稿でも、この方法が紹介されています(参考)。

curl -X POST \
  -H "Content-Type: application/json" \
  -H "Authorization: Bearer $DIGITALOCEAN_TOKEN" \
  -d '{"name":"grok-build-dev","region":"nyc3","size":"s-1vcpu-1gb","image":"grokbuild","ssh_keys":[YOUR_SSH_KEY_ID]}' \
  "https://api.digitalocean.com/v2/droplets"

regionsizeは利用可能な値に合わせて変更します。イメージID233027436を数値で渡す方法も、DigitalOceanの1-Click App共通ルールに沿って使えます。CIや社内ポータルからエージェント環境を量産する用途に向きます。

ローカル導入との違いと注意点

ローカルPCへのインストールは自分で推論先を決め、認証も端末環境に合わせて設定します。DigitalOcean版はGradient連携が最初から組み込まれており、クラウド上でエージェントを動かす初期コストが下がります。Intelligent Inference Routerを使えば、プロンプト内容に応じてモデルを振り分けることも可能です。

一方で、Dropletの利用料とGradient推論の従量課金は別です。Grok Buildは常駐デーモンではなく対話CLIなので、セッション終了はCtrl-C/exitで十分です。更新は/opt/update-grok-build.sh、再設定は/opt/setup-grok-build.shが用意されています。

SSHのみ公開でWeb UIはなく、リモートボックス上の自律型コーディングエージェントをゼロセットアップで試したい開発者に、現時点で最も手短な選択肢のひとつです。