クラウドAIに頼らず、手元のPCだけでブラウザ操作を任せたい——そんなニーズに応える手段として、BrowserOSとOllamaの組み合わせが注目されています。
この記事では、オープンソースのエージェント型ブラウザ「BrowserOS」にローカルLLM実行環境「Ollama」を接続し、プライバシーを保ったままWeb操作を自動化する手順を解説します。
この記事でわかること
- ローカルAIでエージェント型ブラウザを動かすメリット
- BrowserOSとOllamaのセットアップ手順
- エージェント機能を使った具体的な操作例
- 動作に必要なハードウェア要件と注意点
クラウド依存のエージェント型ブラウザに抱える課題
ChatGPT AtlasやPerplexity Cometなど、AIがページを開いてクリックや入力まで行う「エージェント型ブラウザ」が相次いで登場しています。多くはクラウド上の大規模言語モデル(LLM)に問い合わせる仕組みです。
この方式には2つの懸念があります。1つ目はプライバシーで、検索履歴や閲覧内容が外部サーバーに送られ、学習データに使われる可能性があります。2つ目は電力負荷で、世界中のユーザーが同時にエージェント処理を走らせれば、データセンターの消費電力が増大します。ZDNETのJack Wallen氏は、ローカルAIへの切り替えがこの両方の課題に応える手段だと指摘しています(参考)。
ローカルLLM対応のエージェント型ブラウザとして、BrowserOSとOpera Neonの2つが挙げられますが、執筆時点で一般公開されているのはBrowserOSのみです。
BrowserOSとは
BrowserOSはChromiumをベースにしたオープンソースのエージェント型ブラウザです。AGPL-3.0ライセンスで公開されており、macOS・Windows・Linux向けのインストーラーが配布されています。
自然言語の指示でページ遷移、クリック、テキスト入力、データ抽出を行うAIエージェント機能を備え、53種類以上のブラウザ自動化ツールを内蔵しています。APIキーを使ってClaudeやGPT-5などのクラウドモデルに接続することもできますが、OllamaやLM Studioを使えばオフラインで動作させることも可能です。
動作に必要な環境
ローカルLLMの実行にはメモリがボトルネックになります。Ollamaの公式ガイドでは、8GBが最低要件、16〜32GBが推奨、70Bパラメータ級の大規模モデルには64GB以上が必要とされています。
ZDNETの検証では、32GB RAMを搭載したSystem76 Thelioデスクトップで動作確認が取れています。同記事では8GBでは実用に耐えないと述べられており、エージェント処理を快適に使うなら32GB以上、より大きなモデルを使うなら64GB以上を目安にしてください。他のアプリを同時起動すると処理が遅くなる点にも留意が必要です。
Ollamaのインストールとモデル取得
OllamaはローカルPC上でLLMを動かすためのランタイムです。macOSとWindowsは公式サイトのインストーラー、Linuxは以下のコマンドで導入できます。
curl -fsSL https://ollama.com/install.sh | sh
モデルはターミナルから取得します。ZDNETの検証ではエージェント操作に対応したqwen2.5:7bが使われています。BrowserOS公式ドキュメントでは軽量なqwen/qwen3-4bも推奨モデルとして挙げられています。
ollama pull qwen2.5:7b
Ollamaのデフォルトコンテキスト長は4,096トークンで、BrowserOSのエージェント処理には不足します。公式ドキュメントでは15,000〜20,000トークン以上の設定を求めており、15K未満だとエージェントがループに陥ると警告されています。
BrowserOSとOllamaの接続設定
BrowserOSを起動し、設定画面chrome://browseros/settingsを開きます。Ollamaカードの「USE」をクリックし、以下の値を入力します。
| 項目 | 設定値 |
|---|---|
| Provider Type | Ollama |
| Provider Name | 任意(例: Ollama Qwen) |
| Base URL | http://127.0.0.1:11434(LAN内の別マシンならそのIPに変更) |
| Model ID | qwen2.5:7b |
| Context Window Size | 20000(公式推奨。マシン性能に応じて調整) |
| Temperature | 1 |
設定後、このプロバイダをデフォルトに指定します。
CORSを有効にしてOllamaを再起動
BrowserOSからOllamaへブラウザ経由でアクセスするには、CORS(Cross-Origin Resource Sharing)の許可が必要です。まずOllamaのサービスを停止し、環境変数を付けて再起動します。
Linuxの場合:
sudo systemctl stop ollama
OLLAMA_CONTEXT_LENGTH=20000 OLLAMA_ORIGINS="*" ollama serve
macOSも同じコマンドです。Windows PowerShellでは以下を実行します。
$env:OLLAMA_CONTEXT_LENGTH=20000; $env:OLLAMA_ORIGINS="*"; ollama serve
コンテキスト長とCORSの両方を起動時に指定するのが、BrowserOS公式ドキュメントとZDNETの検証で共通するポイントです。
エージェント機能の使い方
設定が完了したら、BrowserOSのAgentサイドパネルを開き、自然言語でタスクを指示します。ZDNETの検証では「Open amazon.com and search for a wireless charging stand that supports a Pixel 9 Pro」という指示を出し、BrowserOSがAmazonを開いて検索条件を入力するまで自動実行されました。
初回は設定に時間がかかりますが、動作が安定すればクラウドAI版のエージェント型ブラウザと同等の操作感が得られます。操作に慣れるまでは、単純な検索やフォーム入力から試すのがおすすめです。
ローカルモデル利用時の注意点
BrowserOS公式ドキュメントでは、ローカルLLMはチャットモード(ページ内容の要約や質問応答)に向いており、複数ステップの推論を要するエージェントモードはクラウドの高性能モデル(Claude Opus 4.5、GPT-5、Kimi K2.5など)の方が安定すると記載されています。
一方、ZDNETの実機検証ではqwen2.5:7bでエージェントタスクが完了しており、ローカルモデルでも実用的な自動化は可能です。用途に応じて、機密データの閲覧はローカルモデル、複雑な購買フローの自動化はクラウドモデルと使い分けるのが現実的です。
処理速度はクラウドモデルに比べて遅くなる傾向があります。VRAMの消費もコンテキスト長の拡大とともに増えるため、ターミナルでollama psを実行してメモリ割り当てを確認してください。
手元のPCでエージェント型ブラウザを試す価値
エージェント型ブラウザの普及に伴い、クラウドAIへの依存と電力消費が課題として浮上しています。BrowserOSとOllamaを組み合わせれば、検索履歴や閲覧データを外部に送らず、エージェント機能を試せます。
32GB以上のRAMとコンテキスト長20,000トークンの設定、CORS有効化の3点を押さえれば、Amazon検索のような実用的なタスクまでローカルで実行できます。プライバシー重視の環境やオフライン作業で、まずは軽量モデルから導入を検討してみてください。

