AIエージェントは機能が多いほど便利ですが、不要なツールまで有効だとセキュリティリスクが増えます。Nous Researchのオープンソース「Hermes Agent」は、2026年6月20日にBlank Slateという新しいセットアップモードを追加しました。LLMの接続とファイル操作・ターミナルだけで起動し、必要な機能を後から1つずつ足せます。
この記事でわかること
- Blank Slateが解決する課題と、Quick Setup・Full Setupとの違い
- 起動時に有効になる機能と、デフォルトで無効になる機能
- 設定の固定方法と、後から機能を追加する手順
Blank Slateとは何か
Hermes Agentは、Nous Researchが開発するセルフインプルービング型のAIエージェントフレームワークです。ターミナル操作、ファイル編集、Web検索、メッセージング連携など60以上のツールを備え、TelegramやDiscordなど複数プラットフォームから利用できます。
従来の初回セットアップは2択でした。Quick SetupはNous PortalのOAuthログインでモデルとTool Gatewayを一括設定する最短ルートです。Full Setupはプロバイダー、ツール、各種オプションをすべて自分で選ぶ方式です。どちらも最初から多くの機能が有効になる設計でした。
Blank Slateは3つ目の選択肢です。エージェントの動作に最低限必要な要素だけを有効にし、それ以外はすべてオフの状態でスタートします。公式ドキュメントでは「最小で完全に制御されたエージェントを作り、必要なものだけを有効にしたい場合」に選ぶモードと説明されています。
何が有効で、何が無効になるか
Blank Slateを選ぶと、強制的に有効になるのは次の3要素だけです。
- Provider & Model — LLMプロバイダーとモデルの接続
- File Operations toolset — ファイルの読み書き・検索・パッチ適用
- Terminal toolset — シェルコマンドの実行
この構成では、モデルに渡されるツール定義は6つに限定されます。GitHubのマージ済みPR(#36733)による検証では、patch、process、read_file、search_files、terminal、write_fileの6ツールだけがスキーマに含まれることが確認されています。
一方、次の機能はすべてデフォルトで無効です。
- Web検索、ブラウザ操作、コード実行、画像認識(vision)
- 画像生成、メモリ、サブエージェントへの委譲(delegation)
- 定期実行(cron)、スキル、プラグイン、MCPサーバー
加えて、圧縮(compression)、チェックポイント、スマートルーティング、メモリキャプチャ、自動セッションリセットといったオプション設定もオフに固定されます。バンドル済みスキルもインストールされません。
設定が固定される仕組み
Blank Slateの核心は、選んだ構成がアップデート後も維持される点です。
設定ファイルにplatform_toolsets.cli = ["file", "terminal"]という明示的なリストが書き込まれます。これはツールセット解決時に最優先で参照されるため、デフォルトのツールセットが自動的に追加されることを防ぎます。
同時にagent.disabled_toolsetsに、上記以外のすべての既知ツールセット名が記録されます。このリストはツール解決の最終段階で適用されるため、プラットフォーム固有の復元処理があっても無効化したツールが再び有効になることはありません。
公式ドキュメントは「hermes updateを実行しても、選ばなかった機能は読み込まれない」と明記しています。エージェントの権限範囲を意図的に狭めたいユーザーにとって、これは大きな安心材料です。
セットアップの流れ
インストール後にhermes setupを実行すると、3つのモードから選べます。Blank Slateを選ぶと、まず最小構成が適用されます。その後、次の2パスから選びます。
- 最小構成のまま完了する — 6ツールだけのエージェントですぐに使い始める
- 全設定を順に見ていく — ツール、スキル、プラグイン、MCP、メッセージング連携を1つずつオプトインする
後から機能を追加する場合は、次のコマンドを使います。
| コマンド | 用途 |
|---|---|
hermes tools |
ツールセットの有効化・無効化 |
hermes skills opt-in --sync |
バンドルスキルの再インストール |
hermes mcp add |
MCPサーバーの追加 |
hermes setup agent |
エージェント設定の再調整 |
モデルの切り替えは従来どおりhermes modelで行えます。Hermes Agentは64,000トークン以上のコンテキストを持つモデルを要求する点に変わりはありません。
既存モードとの使い分け
3つのセットアップモードは、目的によって使い分けます。
Quick Setupは、すぐに動かしたい初めてのユーザー向けです。Nous PortalのOAuthでログインするだけで、モデルとWeb検索・画像生成・TTS・クラウドブラウザを含むTool Gatewayが有効になります。
Full Setupは、APIキーを自分で管理し、すべてのオプションを最初から把握したいユーザー向けです。各プロバイダーやツールを個別に設定します。
Blank Slateは、セキュリティを最優先にエージェントを段階的に構築したいユーザー向けです。本番サーバーやチーム共有環境で、エージェントに与える権限を最小限に抑えたい場合に適しています。必要な機能だけを後から足すことで、権限の見通しを保ちながら運用を広げられます。
導入を検討するなら
すでにHermes Agentを使っている場合も、hermes setupからBlank Slateを選び直すことで最小構成に戻せます。エージェントに何を任せるかを自分で決めたい開発者は、まずBlank Slateで土台を作り、hermes toolsで必要な機能だけを追加する流れが現実的です。本番サーバーやチーム共有環境では、権限の見通しを保ったまま段階的に機能を広げられる点が実用的です。
