クレジットカードを登録しなくても、Mistralの開発者向けAPI(la Plateforme)でフラッグシップ級のモデルを試せます。2024年9月の公式発表以降、無料枠は「実験・評価・プロトタイプ向け」として提供され続けています。

この記事では、サインアップからAPIキー取得、既存ツールへの組み込みまでを順を追って説明します。有料APIを契約する前に、ワークフローの検証コストを抑えたい開発者向けの内容です。

この記事でわかること

  • Mistral API無料枠(Free mode)の対象モデルと利用条件
  • アカウント作成から初回リクエストまでの手順
  • OpenAI互換エンドポイントへの切り替え方
  • レート制限と本番利用時の注意点

無料枠で何が使えるか

Mistralの無料枠は、チャットアプリ「Le Chat」のFreeプランとは別物です。Le Chatはメッセージ数に日次上限があり、Pro契約(月額14.99ドル)にもAPIクレジットは含まれません。開発者がコードからモデルを呼び出すには、la PlateformeのAPIを使います。

公式ドキュメントでは、StudioはデフォルトでFree modeが有効で、クレジットカード不要と明記されています。利用可能な主なモデルは次のとおりです。

  • Mistral Large 3 — 汎用マルチモーダルモデル。コンテキスト256K、入力0.5ドル/100万トークン、出力1.5ドル/100万トークン(有料時の料金)
  • Codestral — コード生成・補完向け。コンテキスト128K
  • Mistral Medium 3.5 — 推論・コーディング向けの中核モデル
  • Mistral Small 4 — テキスト・画像・コードに対応する軽量モデル
  • Pixtral Large — テキストと画像の解析

無料枠は評価とプロトタイプ向けです。本番トラフィックを想定する場合は、Scaleプラン(従量課金)への移行が前提になります。

月間トークン上限とレート制限

Mistralは組織単位で3種類の上限を設けています。秒あたりのリクエスト数(RPS)、分あたりのトークン数、月間のトークン数です。具体的な数値はアカウントごとに異なるため、StudioのLimitsページで確認する設計になっています。

開発者コミュニティの検証では、Free modeで月間約10億トークン、分あたり約50万トークン、リクエストは低速(おおむね1〜2件/秒程度)という報告が複数あります(参考)。公式ブログでも、2024年9月の無料枠提供開始時に「実験・評価・プロトタイピングを無料で」と説明しており、恒久的な本番無料枠ではない点に注意が必要です。

上限に達するとAPIは429 Too Many Requestsを返します。レスポンスヘッダーのX-RateLimit-Remainingで残量を確認できます。

利用開始の手順

1. アカウントを作成する

console.mistral.aiでアカウントを作成します。Google、GitHub、Microsoft、Appleアカウントでのサインインにも対応しています。公式クイックスタートでは、StudioはクレジットカードなしでFree modeが有効になると記載されています。

2. APIキーを発行する

Studio左メニューの「API keys」から「Create new key」を選び、キー名を入力して作成します。表示されるキーは一度しか見られないため、すぐにコピーして環境変数に設定してください。

export MISTRAL_API_KEY="your_api_key_here"

3. 動作確認する

curlでチャット補完エンドポイントを叩き、応答が返るか確認します。

curl https://api.mistral.ai/v1/chat/completions \
  -H "Content-Type: application/json" \
  -H "Authorization: Bearer $MISTRAL_API_KEY" \
  -d '{
    "model": "mistral-large-latest",
    "messages": [
      {"role": "user", "content": "Hello"}
    ]
  }'

401 Unauthorizedが出た場合はAPIキーの設定を、402 Payment Requiredが出た場合はSubscriptionsのBillingでプラン選択が必要なケースがあります。

4. 既存ツールに組み込む

MistralのChat Completions APIはOpenAIと同じリクエスト構造です。LangChainやLlamaIndexなどOpenAI互換クライアントを使っている場合、ベースURLとモデル名を差し替えるだけで移行できます。

from openai import OpenAI

client = OpenAI(
    api_key="your_mistral_api_key",
    base_url="https://api.mistral.ai/v1",
)

response = client.chat.completions.create(
    model="mistral-large-latest",
    messages=[{"role": "user", "content": "Hello"}],
)

公式SDKを使う場合はmistralaiパッケージをインストールし、client.chat.completeで呼び出します。AiderやContinueなどのコーディングエージェントでも、プロバイダー設定のベースURLをhttps://api.mistral.ai/v1に変更する方法が一般的です。

プライバシーとデータの扱い

API経由で送ったデータは、Mistralのプライバシーポリシー上、モデル学習には使われません。Vibe(チャットUI)のFreeプランとは異なり、API利用時のプロンプトは学習対象外です。機密性の高いプロトタイプを試す際は、この点が大きなメリットになります。

なお、無料枠にはゼロリテンション(データ非保持)オプションも用意されています。商用利用に移行する際は、Scaleプランでデータ分離とより高いレート制限を利用できます。

本番移行時の判断基準

無料枠は「試すため」の枠組みです。TechCrunchの報道でも、本番利用には有料の商用ティアへのアップグレードが必要になると説明されています(参考)。

次のような状況ではScaleプランへの移行を検討してください。

  • 秒あたりのリクエスト数が足りず、429エラーが頻発する
  • 月間トークン上限に近づき、プロトタイプが止まる
  • 累計課金20ドル超でTier 2、100ドル超でTier 3と、自動的にレート上限が段階的に引き上がる有料枠が必要になる

有料時のMistral Large 3は、入力0.5ドル・出力1.5ドル/100万トークンと、他社のフラッグシップモデルと比べて価格競争力があります。まず無料枠で品質とレイテンシを確認し、要件が固まってから課金に移る流れが合理的です。