スマホのキーボードは、画面に表示されないアプリです。入力のたびに裏側で通信が走り、打鍵の癖や音声データがサーバーへ送られる設定が、初期状態のまま残っていることがあります。

この記事では、Android標準のGboardがどんなデータを扱うのかを整理し、設定で送信を止める手順と、通信なしで使える代替キーボードへの切り替え方を示します。

この記事でわかること

  • GboardがGoogleへ送るデータの種類と、公式が説明する範囲
  • プライバシー項目4つと辞書同期をオフにする具体的な手順
  • 端末内完結の代替キーボードFUTO Keyboardの導入方法

キーボードが通信する理由

Gboardは、オート補正や次の単語予測、音声入力の精度向上のために、端末外のサーバーを使う機能を持っています。ZDNETの報道では、これらの機能がインターネット接続を介して動くため、入力データの追跡リスクがあると指摘されています。

Google公式ヘルプでは、GboardがGoogleへ送るものとして「検索内容」「利用統計」「音声入力の音声データ」を挙げています。一方、検索以外の入力内容(パスワードやチャットなど)は送らないと説明しています。ただし利用統計には、どのキーをよく押すか、オート補正の採用率、絵文字やGIFの利用傾向などが含まれます。MakeUseOfの検証では、特定の単語そのものではないものの、打鍵の癖をかなり細かく把握できるデータだと整理されています。

さらに、連合学習(federated learning)は初期状態でオンです。Googleの説明では、話した内容や打った文字そのものは送らない一方、端末で得た学習結果はGoogleへ送信され、他ユーザーの学習と合わせてモデル改善に使われます。音声寄付(Audio donations)を有効にすると、最大15秒の音声スニペットがGoogleのサーバーに保存され、最大18か月保持されます。

Gboardの追跡設定を切る手順

https://support.google.com/gboard/answer/12373137?hl=en

Gboardの送信を減らすなら、まずプライバシー項目をオフにします。Android 15以降のPixelでは、Gboardアプリを開き「プライバシー」を選ぶ方法が案内されています。機種によっては、設定アプリで「言語」を検索し「言語 → Gboard → プライバシー」の順に進みます。

オフにすべき項目は次の4つです。

  • 利用統計の共有(Share usage statistics) — キーボードの利用統計をGoogleへ自動送信する
  • 自分用にカスタマイズ(Personalize for you) — 打鍵や音声入力のパターンを学習して個人向けに改善する
  • みんなのために改善(Improve for everyone) — 全ユーザーの認識精度向上に利用パターンを使う
  • 音声寄付(Audio donations) — 音声入力のスニペットをGoogleサーバーへ送る

各項目のスライダーをオフにすれば、該当する送信は止まります。Gboardはオート補正と予測入力を端末内で続けられるため、見た目の操作感は大きく変わりません。

次に辞書の同期を止めます。Gboardの設定で「辞書 → 学習した単語の同期」をオフにし、「学習した単語とデータを削除」で端末に残った学習データを消します。固有名詞やニックネームなど、個人辞書に登録した語がGoogleアカウント経由でクラウドに上がるのを防げます。同期を切ると、機種変更時に辞書が引き継がれなくなる点だけ注意が必要です。

FUTO Keyboardでオフライン入力に切り替える

https://keyboard.futo.org/

設定変更だけでは不安が残る場合、通信しないキーボードアプリへの乗り換えが有効です。FUTO Keyboardは、予測入力・スワイプ入力・音声入力を端末内だけで処理するキーボードです。公式サイトでは「キーボードがインターネットに接続する必要はない」と明記しており、データの送信や保存を行わない設計です。

このキーボードはAndroid標準キーボード(LatinIME)をベースに開発されており、Gboardに近い見た目と操作感を持ちます。GitHubのリポジトリでは、オフラインでプライバシーを守る現代的なキーボードを目指すと説明されています。Google Playストア、F-Droid、公式サイトから入手できます。

導入手順は次のとおりです。

  1. Google Playストアで「FUTO Keyboard」を検索し、インストールする
  2. アプリを開き、画面の案内に従ってキーボードを有効化する
  3. デフォルトの入力方法としてFUTO Keyboardを選ぶ
  4. オンボーディングのキーボードテストで動作を確認する

言語、スワイプ入力、テーマ、アクションキー(スペースバー左のキー)などは、アプリ内の設定から変更できます。アクションキーは絵文字ピッカー以外に、音声入力やクリップボード管理などへ割り当て可能です。バックスペースやスペースバーのスワイプ動作もカスタマイズできます。

Google Playの開発者情報では、第三者へのデータ共有なし・データ収集なしと表示されています。一方、ソースコードはFUTO Source First License 1.1のもと公開されており、一般的なOSSライセンスとは条件が異なります。開発は活発ですが、公式にも「一部の機能や言語が未対応の場合がある」と記載されているため、導入後は自分の使い方で動作を確認してください。

設定だけでは足りないケース

Gboardのプライバシー項目をすべてオフにしても、検索機能を使えば検索クエリはGoogleへ送られます。音声入力を使う場合、Gboardはマイク権限で音声をGoogleへ送って文字起こしします。これらの機能を使わなければ送信は起きませんが、機能を残したまま通信だけ止めたい場合は、GrapheneOSやCalyxOSのようにアプリ単位でネットワークを遮断できるOS、あるいはNetGuardのようなファイアウォールアプリでGboardの通信をブロックする方法もあります。ただしファイアウォールはVPNスロットを占有するため、別のVPNと併用できません。

Samsung端末を使っている場合は、Samsungキーボードにも「デバイス間のテキスト予測」などの同期設定があります。Gboardと同様に、設定アプリの「一般管理 → Samsungキーボードの設定 → プライバシー」から見直してください。

音声入力と辞書同期の見落としポイント

プライバシー項目の4つをオフにしても、音声寄付を別メニューで有効にしているとスニペットが送られます。Google公式ヘルプでは、音声寄付を止める手順として「キーボード上部の設定 → プライバシー → 音声の下でAudio donationsをオフ」と案内しています。音声入力を使わないなら、Gboardのマイク権限を「許可しない」にする方法もあります。

辞書同期の見落としも多いポイントです。プライバシー項目をオフにしても、辞書の同期がオンなら個人語彙がクラウドに残ります。「辞書 → 学習した単語の同期」をオフにし、必要なら「学習した単語とデータを削除」で既存データを消してください。

キーボードはパスワードや住所、病院名まで入力する場面で常に動きます。Gboardのプライバシー設定を4項目オフにし、辞書同期を切るだけでも送信は大きく減ります。通信そのものを断ちたいなら、FUTO Keyboardのように処理を端末内に閉じた代替アプリへの切り替えが、いちばん手堅い対策です。