顧客ごとに常時稼働するAIエージェントを用意するには、サーバー調達からコンテナ管理、状態の永続化まで手がかかります。2026年6月21日、Agent37がAgent37 Cloudを発表し、API呼び出しだけで永続エージェント環境を立ち上げられる仕組みを公開しました。

この記事では、発表内容と公式ドキュメントに基づき、Agent37 Cloudの機能、料金、既存のVPS運用との違いを整理します。

この記事でわかること

  • Agent37 Cloudが解く課題と基本アーキテクチャ
  • OpenAI互換Responses APIの仕組み
  • 対応エージェントと料金体系
  • VPS自前運用との比較ポイント

Agent37 Cloudとは

Agent37 Cloudは、AIエージェント向けのマネージドホスティングサービスです。公式サイトでは「Hermes、OpenClaw、または任意のエージェント向けの永続サンドボックス」と位置づけられています。

従来、顧客ごとにエージェントを常時稼働させるには、VPSの契約、コンテナの起動、状態管理、レスポンスのストリーミング配信、コスト制御を自前で組み立てる必要がありました。Agent37 Cloudは、この一連の作業を1回のAPI呼び出しに集約します。

発表ポスト(An Engineer’s Log)では、Hermes、OpenClaw、Claude Codeなど複数のエージェント実装に対応し、VPS不要で常時稼働する永続エージェントを提供すると説明されています。

解決する課題

エージェントをプロダクトに組み込む開発者が直面する課題は、大きく3つに分かれます。

インフラ構築の手間 — 顧客数に応じてサーバーを増やし、パッチ適用や死活監視を続ける必要があります。

状態の永続化 — エージェントが作成したファイル、接続済みアカウント、会話の記憶を顧客ごとに保持する仕組みが要ります。

API連携の実装 — 各エージェントのCLIやSDKをREST APIに包み、ストリーミング応答をアプリ側に届けるアダプター層が別途必要です。

Agent37 Cloudは公式サイトで「VPSの面倒見、APIアダプターの構築、リバースプロキシの設定」を不要にすると明記しています。インスタンスは常時稼働し、各ポートは https://{id}.agent37.app 形式のURLで自動的にルーティングされます。

主な機能

API1回で顧客専用インスタンスを作成

POST /v1/instances を呼ぶと、顧客専用のエージェント環境がプロビジョニングされます。デフォルトでは agent37-hermes テンプレートが適用され、2 vCPU・4 GB RAM・6 GBディスクの構成で起動します。

作成されたインスタンスには固有URLが割り当てられ、ファイル・メモリ・接続済みツールはインスタンス削除まで保持されます。顧客ごとに独立したコンピュータを渡すイメージです。

OpenAI互換のResponses API

エージェントとの対話は POST /v1/responses で行います。OpenAIのResponses APIと互換の設計で、既存のクライアント実装を流用しやすい構成です。

初回メッセージでは instance_id を指定してセッションを開始し、返却された session_id を次回以降に渡すことで会話を継続します。セッション側に履歴が保持されるため、毎回全文を再送する必要はありません。

stream: true を指定するとServer-Sent Eventsで推論過程やツール呼び出しをリアルタイム受信できます。mode には chat(1ターン応答)と goal(自律的にタスク完了まで実行)があり、goal はHermes、Claude Code、Codexで利用可能と公式ドキュメントに記載されています。

対応エージェントとテンプレート

テンプレートでエージェントの種類を選びます。現時点で利用可能なのは以下です。

テンプレート 内容 状態
agent37-hermes チャット、ブラウジング、コード実行、ファイル操作 利用可能(デフォルト)
agent37-hermes-small チャット、コード、シェル(ブラウザ・デスクトップなし) 利用可能
agent37-openclaw チャネル連携型エージェント 利用可能
agent37-claude-code Anthropicのコーディングエージェント Coming soon
agent37-codex ソフトウェア開発向けエージェント Coming soon

カスタムDockerイメージを登録し、独自のエージェントをホストすることも可能です。公開イメージを POST /v1/templates で登録し、インスタンス作成時にテンプレート名を指定する流れです。

プロダクション向けの付加機能

公式サイトでは、以下の機能も標準で提供するとしています。

  • モデル選択 — プラットフォーム経由のモデル利用、またはBYOK(自前APIキー持ち込み)
  • 外部連携 — Gmail、Slack、Notionなど1000以上のアプリ連携(Composio経由)
  • ファイル操作 — インスタンスへのファイルアップロードと生成物のダウンロード
  • シェル実行 — バックエンドからインスタンス内で任意コマンドを実行
  • cronスケジュール — 無人で定期実行し、結果を取得
  • ホワイトラベル — エンドユーザーにAgent37のブランドを見せず自社プロダクトとして提供

セキュリティ面ではgVisorランタイムによるカーネルレベルの隔離と、インスタンスごとのディスククォータが採用されています。

料金体系

Agent37 Cloudは時間課金のプリペイド方式です。顧客1人につき1インスタンスを常時稼働させるコストが、公式の料金計算機で明示されています。

リソース 単価
vCPU $0.80 / vCPU / 月
RAM $0.70 / GB / 月
ディスク $0.09 / GB / 月

最小構成(1 vCPU・3 GB RAM・6 GBディスク)では月額$3.44(時間単価$0.0047)です。この構成は agent37-hermes-small テンプレート専用で、2 vCPU以上が必要な標準テンプレートは別料金になります。

初回インスタンスは無料で、クレジットカード登録も不要です。新規ワークスペースには1インスタンス分のクレジットが付与されます。インスタンス削除時は未使用分が時間単位でプリペイド残高に返金されます。

LLMの利用料は、プラットフォーム経由の場合はインスタンスごとの支出上限(spend cap)を設定できます。自前のAPIキーを使う場合は各プロバイダーへの直接課金となります。

VPS自前運用との違い

VPSを借りてDockerでエージェントを動かす方法と比較すると、Agent37 Cloudの差分は運用コストに集約されます。

VPS運用では、サーバーのプロビジョニング、OSパッチ、コンテナの死活監視、リバースプロキシとSSL証明書の管理、顧客ごとの状態分離を開発チームが担います。Agent37 Cloudではこれらがプラットフォーム側に含まれ、開発者はAPIキーの発行とインスタンス作成に集中できます。

料金面では、最小構成の月額$3.44は一般的なVPSの月額と同等かそれ以下の水準です。ただしエージェント本体、LLM API、外部連携の利用料は別途発生する点に注意が必要です。

Agent37の公式ブログでは、エージェント運用にMac miniを常時稼働させる方法との比較も公開されています。ハードウェアの初期投資(約$599)と電気代、四半期に2〜4時間かかる運用作業が発生する一方、Agent37 Cloudは運用作業をプラットフォームに委ねられると説明しています。

使い方の流れ

公式クイックスタートに沿った基本的な手順は次のとおりです。

  1. ダッシュボードでAPIキー(sk_live_...)を発行する
  2. POST https://api.agent37.com/v1/instances でインスタンスを作成する
  3. レスポンスの ports 配列からインスタンスURL(例: https://ab12cd34ef.agent37.app)を取得する
  4. インスタンスURLに対して POST /v1/responses でメッセージを送る
  5. 返却された session_id を使い、会話を継続する

AIコーディングエージェントでクライアントを自動生成する場合は、公式の llms-full.txt(API仕様全文)を参照先として渡すと、ドキュメントが推奨しています。

注意点と今後の展開

OpenClaw、Claude Code、Codexのテンプレートは公式サイト上で「Coming soon」と表示されており、現時点ではHermes系テンプレートが中心です。カスタムイメージを使えば任意のエージェントをホストできますが、公式テンプレートの提供開始時期はドキュメントの更新を確認する必要があります。

Agent37 CloudはProduct Huntで「Product of the Day #1」を獲得した実績も公式サイトに掲載されています。エージェントを自社SaaSに組み込む開発者や、ホワイトラベルで顧客にエージェントを提供する代理店向けのインフラとして、今後の動向が注目されます。