ウェブ上の文章を調べるたびに、コピーしてサイドパネルを開き、貼り付けて質問する——その手間を減らす新UIが、Chrome Canaryで試験されています。

この記事では、Googleがテスト中の「Inline Cue Menu」と呼ばれるフローティングツールバーの仕組みと、既存のAsk Gemini機能との違い、利用時の注意点を整理します。

この記事でわかること

  • テキスト選択時に表示されるAsk Geminiショートカットの動き
  • Geminiサイドパネルへ選択文を送る手順の短縮ポイント
  • サイトごとの非表示設定や、試験段階ならではの制限

Chrome Canaryで試験中の「Inline Cue Menu」とは

Googleは、デスクトップ版Chrome Canaryにおいて、ウェブページ上のテキストを選択した直後にフローティングツールバーを表示する機能を試験しています。Chromiumの内部コードでは、このUIは「Inline Cue Menu」と呼ばれており、開発者コミュニティではChrome開発の動向を追うLeopeva64氏が初期のデスクトップテストビルドで目撃したと報じられています(参考)。

ツールバーはカーソル付近に浮かび、「Ask Gemini」「Copy」「Share」の3ボタンと、設定用の三点メニューで構成されます。Android端末でテキストを選択したときに現れるメニューに近い操作感で、デスクトップのブラウジングにもAIショートカットを組み込む狙いが読み取れます。

何が変わるのか——選択文の即時転送

従来、ChromeでGeminiを使うには、ブラウザ上部の「Ask Gemini」ボタンからサイドパネルを開き、質問を入力する流れが基本でした。Google公式ヘルプでも、サイドパネルのテキストボックスへ質問や依頼を入力する手順が案内されています。

今回の試験機能では、選択した文章そのものがワンクリックでGeminiサイドパネルへ渡されます。サイドパネル側では、その文章を起点にした会話が始まり、要約や用語の説明、追い質問をページを離れずに続けられます。コピー、パネル起動、貼り付けといった細かい操作をまとめて省く設計です。

PiunikaWebの検証では、右クリックメニューの「Ask Gemini」からも選択テキストがサイドパネルへ渡る挙動が確認されています(参考)。ただし、従来はサイドパネルが開いたあと手入力が必要なケースもあり、フローティングツールバーはその手間をさらに前の段階で削る位置づけです。

背景——ChromeへのGemini統合が加速している

Googleはここ数か月、Chrome内のGemini導線を次々と増やしています。アドレスバーで「@gemini」と入力するショートカット、ピン留め可能なAI Modeツールバーボタン、右クリックメニューへの「Ask Gemini」追加などが報じられており、いずれもCanaryなどの試験ビルドで確認されています(参考)。

今回のInline Cue Menuは、ユーザーがGeminiを探しに行くのではなく、テキストを選択した瞬間にAIがそばに現れる——という方向へ踏み込んだ試みです。記事の要約、専門用語の確認、複数ページにまたがる調査など、読みながらAIに質問する利用シーンと相性がよい設計と言えます。

使い方と設定メニューの中身

機能が有効なCanaryビルドでは、ウェブページ上の任意のテキストをドラッグして選択するだけでツールバーが表示されます。「Ask Gemini」を押すとGeminiサイドパネルが開き、選択文が入力欄へ渡されます。あとは「この段落を3行で要約して」「この用語を初心者向けに説明して」といった指示を続けられます。

三点メニューには「Hide for this site(このサイトでは非表示)」と「Settings」があります。前者は、ニュースサイトやドキュメントなど、集中して読みたいページでポップアップを出さないための設定です。後者は現時点ではChromeの一般コンテンツ設定ページへ遷移するだけで、Gemini専用の設定画面は未完成と報じられています(参考)。サイトごとの例外リストを管理する専用ページも、コード上では準備が進んでいるものの、UIはまだ整備途上です。

既存機能との違い

操作 従来の主な流れ Inline Cue Menu(試験中)
Geminiの起動 ブラウザ上部のボタンやメニューから手動で開く テキスト選択と同時にツールバーが表示
選択文の渡し方 コピーして貼り付け、または右クリック経由 Ask Geminiボタン1回でサイドパネルへ転送
表示制御 ブラウザ全体のGemini設定で管理 サイト単位の非表示も想定

右クリックの「Ask Gemini」だけでも選択文の転送は可能になりつつありますが、フローティングツールバーはその操作を視界の中心へ持ってくる点が大きな違いです。Digital Trendsの報道でも、メニューを開く手間をさらに一段減らす狙いがあると整理されています(参考)。

試験段階で知っておきたい注意点

Inline Cue MenuはCanary限定の実験機能です。Googleは正式な公開時期を発表しておらず、Canaryの実験機能は安定版に届かず消えることもあります。PiunikaWebはChrome Canary 151.0.7905.0でフローティングツールバー自体は表示されなかった一方、右クリック経由のテキスト転送は動作したと報告しています(参考)。最新Canaryを入れても、全ユーザー・全サイトで同じ体験が得られるとは限りません。

また、Gemini in Chrome自体が段階的ロールアウト中であり、18歳以上・対応地域・サインイン済みChromeなど、利用条件を満たす必要があります。試験機能を試す前に、まず通常のGemini in Chromeが使える環境かを確認しておくとよいでしょう。

ブラウジングのAI化が示す方向性

Inline Cue Menuは、Chromeを「閲覧する場所」から「読みながらAIと対話する場所」へ寄せる一手です。選択した瞬間に質問が始められるため、調査や学習のテンポが上がる可能性があります。一方で、テキストを選択するたびにUIが現れるため、好みが分かれる要素でもあります。サイト単位の非表示設定が整えば、そのバランスをユーザー側で調整しやすくなる見込みです。

現時点では試験段階ですが、安定版Chromeへ届けば、Geminiを日常的に使うユーザーにとって、ブラウジング中のAI活用が一段階身近になります。