生成AIの次は、自律的に仕事をこなすエージェントAIです。Nvidiaのジェンスン・フアンCEOは年次株主総会で、エージェントAIの実用化と物理世界で動く物理AIを、同社の次の成長エンジンとして位置づけました。

この記事でわかること

  • フアンCEOが語った「エージェントAI」「物理AI」「AIファクトリー」の意味
  • データセンターがAIインフラへ変わる理由
  • 株主総会で触れられた業績とロボティクス事業の規模

エージェントAIは「もう現実」になった

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フアンCEOは株主総会で「エージェントAIはもう到来した(Agentic AI has now arrived)」と述べ、あらゆる産業が導入を競っていると強調しました。エージェントAIとは、人間の指示を受けて自律的にタスクを実行し、判断まで行うAIシステムです。従来の生成AIが文章や画像を「作る」段階を超え、ツールを使い、記憶を参照し、他のエージェントを呼び出して仕事を完遂する段階に入った、という見方です。

同CEOは「すべての企業がエージェント企業になりつつある(Every enterprise is becoming an agent company)」とも語りました。業務の各所にインテリジェントなエージェントを配置し、AIファーストの組織へ移行する動きが加速している、という主張です。Nvidia自身もNeMoやNIMマイクロサービス、AI Blueprintsを通じて、企業がカスタムエージェントを大規模展開する基盤を提供しています。

データセンターは「AIファクトリー」へ進化する

フアンCEOは、データセンターがデジタルアシスタントやインテリジェントなソフトウェアを動かす「AIファクトリー」へ急速に変わっていると説明しました。従来のデータセンターがデータを保存・処理する場所だったのに対し、AIファクトリーはデータを「知能のトークン」に変換して生産する施設、という考え方です。

Nvidiaの年次CEOレターでも、発電所が工業経済を支えたように、AIファクトリーが知能経済を支えるインフラになる、と位置づけられています。Blackwellアーキテクチャを中心としたGPU、NVLink、ネットワーキングチップを組み合わせたフルスタック提供が、この変化の前提です。フアンCEOは「とっくの昔にチップ会社とは考えていない(We stopped thinking of ourselves as a chip company long ago)」とも述べ、自社をAIインフラ/コンピューティングプラットフォーム企業と定義し直しています。

物理AIが次の成長レッグになる

ソフトウェア上のAIを超え、フアンCEOは「物理AI(physical AI)」を次の大きな成長機会として挙げました。物理AIは、ロボット、自動運転車、産業オートメーションなど、現実世界の機械を認識・推論・制御するAIを指します。エージェントAIの能力を物理空間に広げたもの、と整理できます。

CNBCの報道によると、フアンCEOは株主総会で「AIとロボティクスが最大の2つの成長機会であり、数兆ドル規模の市場になる」と答え、自動運転車が物理AIの最初の大きな商用アプリケーションになると見ている、と伝えられています(参考)。

具体的な製品面では、自動運転向けのDriveプラットフォーム(メルセデス・ベンツが採用)や、ヒューマノイドロボット向けの世界モデル群「Cosmos」が紹介されました。フアンCEOは「Nvidia技術で動くロボットが数十億台、自動運転車が数億台、ロボット工場が数十万台になる日を目指している」とも語っています。

ロボティクス事業はまだ全体の一部です。Nvidiaは自動車とロボティクスを同一セグメントで報告しており、2025年5月時点の四半期売上は5億6700万ドル、総売上の約1%にとどまります。ただし前年比72%増と、伸び率は高い水準です。データセンター向けGPUでAIモデルを学習させ、車載・ロボット向けチップで現場に展開する、という二段構えがNvidiaの物理AI戦略の骨格です。

業績は堅調、株価は総会後に小幅下落

フアンCEOは株主総会で、過去1年の売上が65%増、営業利益が60%増だったと業績を強調しました。CNBCによれば、Nvidiaの売上は2023会計年度の約270億ドルから2024会計年度の1305億ドルへと急拡大しており、アナリストは今年2000億ドル近い売上を見込んでいる、と報じられています(参考)。

一方、NDTV Profitの報道では、株主総会後にNvidia株は0.35%下落し、199.33ドルで引けた、と伝えられています。AI関連投資の持続性への注目は続くものの、エージェントAIと物理AIへの期待は変わらない、という市場の温度差がうかがえます。株主総会では役員報酬案の承認と13名の取締役再選が可決され、多様性報告の強化や株主総会手続きの変更を求める外部提案は否決されました。

企業にとって何が変わるか

フアンCEOの説明が示すのは、AIの進化が「知覚→生成→推論→エージェント→物理世界」という段階を辿っている、という見通しです。NvidiaはCES 2025の基調講演でも、AlexNetに始まる12年間で技術スタックの各層が入れ替わったと振り返り、エージェントAIの次に物理AIが来る、と同じ流れを示していました。

企業にとっての実務的な含意は明確です。まず、業務プロセスをエージェントに任せる設計が本格化します。次に、工場や物流、自動運転といった物理資産との連携がAI投資の対象に入ります。いずれも従来型データセンターではなく、AIファクトリー前提のインフラ投資が必要になる、というのがNvidia側のメッセージです。

生成AIでコンテンツを作る段階から、エージェントが仕事を完遂し、ロボットや自動運転車が現場で動く段階へ。フアンCEOの株主総会での発言は、Nvidiaが次にどこで売上を伸ばすつもりかを、業界全体に向けて示したものと読めます。