APIのないWeb画面も、自然言語の指示だけで自動操作できる時代が始まりました。

2026年6月29日、H Company(旧称H)はComputer-Use Agent APIのオープンベータを開始しました。画面を見てクリック・入力・スクロールするフルマネージドエージェントを、自社プロダクトに組み込める開発者向けAPIです。

この記事でわかること

  • Computer-Use Agent APIが何を提供するか
  • クラウドブラウザとSDKの使い方
  • Models APIとの違いと料金プラン
  • 今後追加予定のDesktop環境

https://hub.hcompany.ai/computer-use-agents/introduction

何が変わったか

H Companyはこれまで、画面認識モデル「Holo」ファミリーをModels APIとして提供してきました。開発者はスクリーンショットを送り、クリック座標や次のアクションを受け取り、自前でエージェントループを組み立てる必要がありました。

今回のComputer-Use Agent APIは、その上に乗るフルマネージド層です。タスクを自然言語で渡すと、H Company側がブラウザ環境を用意し、エージェントを走らせ、結果を返します。APIのないWebサービスや、ログインが必要な画面の操作を、自前のPlaywright実装なしで試せます。

公式X(旧Twitter)の発表では、OSWorld-Verifiedベンチマーク1位のHoloモデルを搭載したフルマネージドエージェントであること、クラウドブラウザとPython・TypeScript SDKを同日提供していることが明示されています。次のリリースではDesktop環境が予定されています。

背景:OSWorld-Verified 1位のHoloとは

Computer-Use Agent APIの頭脳は、H CompanyのHoloビジョン言語モデル(VLM)です。VLMは画像とテキストを同時に理解するAIモデルの総称で、画面のスクリーンショットからUI要素を認識し、操作先を判断します。

H Companyの公式発表によると、Holo3-122B-A10BはOSWorld-Verifiedベンチマークで78.85%を記録し、当時のGPT-5.4(75.00%)を上回っています。OSWorld-Verifiedは、実際のデスクトップ操作タスクでエージェント性能を測る業界標準のベンチマークです。

提供機能の概要

https://hub.hcompany.ai/computer-use-agents/introduction

Computer-Use Agent APIの中核は「セッション」です。1回のタスク実行が1セッションに対応し、作成から完了・失敗・タイムアウトまでのライフサイクルをAPIで監視・停止・介入できます。

セッションは2つの部品で構成されます。

  • Agent(エージェント):モデル、指示文、スキル、サブエージェントの設定
  • Environment(環境):エージェントが操作する画面。現時点ではBrowser(Webブラウザ)のみ

Browser環境は、H CompanyがセッションごとにプロビジョニングするリモートWebブラウザです。エージェントはスクリーンショットを見て座標を指定し、click・type・navigate・fill_secret_atなどのアクションを実行します。fill_secret_atはVault(秘密情報ストア)に登録した認証情報を、APIリクエストに含めずに入力欄へ埋め込む機能です。

プリセットエージェント「h/web-surfer-flash」は、セットアップ不要でそのまま使えます。カスタムエージェントを作れば、開始URL、ビューポートサイズ、指示文を自由に設定できます。

使い方

https://hub.hcompany.ai/computer-use-agents/quickstart

利用開始には、platform.hcompany.aiでAPIキーを発行します。CLIとSDKは環境変数HAI_API_KEYからキーを読み取ります。

Python SDK(hai-agents)を使う最小例は次のとおりです。

from hai_agents import Client

client = Client()
result = client.run_session(
    agent="h/web-surfer-flash",
    messages="Google Flightsでパリ発東京行きの最安直行便を探して",
)
print(result.answer)

CLIならhai run "タスク内容" --agent h/web-surfer-flashで同等の操作ができます。TypeScript SDK(npm install hai-agents)とREST API(POST https://agp.eu.hcompany.ai/api/v2/sessions)も用意されています。

実行中のセッションはH Platformのダッシュボードでステップごとに確認できます。実行中にメッセージを送って方向修正する「ステアリング」、一時停止・再開、構造化出力(JSON Schema指定)にも対応しています。

CursorやClaude Codeから使う場合は、公式MCPサーバー(https://agp.eu.hcompany.ai/mcp)をエディタに追加する方法もあります。HTTPやSDKを書かずに、エージェントをツールとして呼び出せます。

Models APIとの違い

H Companyには2種類のAPIがあります。

Models API Computer-Use Agent API
役割 Holoモデルへの推論リクエスト エージェント実行のフルマネージド
エンドポイント api.hcompany.ai/v1/ agp.eu.hcompany.ai/api/v2/
ブラウザ 自前で用意 クラウドブラウザを自動プロビジョニング
向いている用途 自前エージェントの「脳」として組み込む タスクを渡して結果だけ受け取る

Models APIはOpenAI互換のchat completionsで、スクリーンショットを送って次の操作を受け取る低レベルAPIです。Computer-Use Agent APIは、その上に環境管理・エージェントループ・セッション管理を載せた高レベルAPIです。自前のインフラを最小限にしたい開発者向けです。

料金プラン

https://hub.hcompany.ai/computer-use-agents/billing

オープンベータ期間中、Freeプラン($0)とDeveloperプラン($29/月)が用意されています。

プラン 月額 トークン上限/月 同時セッション数
Free $0 1,500万 3
Developer $29 6,500万 10

トークンはエージェント実行中にモデル推論で消費されます。上限はAPIのGET /api/v2/quota/tokensでリアルタイム確認できます。同時セッション数を超えると429エラーが返ります。Enterprise向けの上限引き上げはsupport@hcompany.aiへの問い合わせが必要です。

今後のロードマップ

公式ドキュメントのWhat’s nextによると、次の機能が予定されています。

  • Desktop環境:Mac・Windows・Linux上のネイティブアプリやファイル操作
  • Browser profile upload:CookieやlocalStorageを持ち込み、ログイン済みセッションの再開
  • Local browser/desktop control:自社マシン上のブラウザやデスクトップを、同じセッションAPI経由で操作

2026年6月29日の発表でもDesktopが「Next release」と明記されており、現行ベータはBrowser限定です。

誰向けのAPIか

Computer-Use Agent APIは、WebスクレイピングではAPIが提供されていないサービス、QA自動化、価格調査、フォーム入力の自動化など、「画面操作が必要だが自前でブラウザ基盤を持ちたくない」ケースに向いています。

H Companyはデモリポジトリ(hcompai/computer-use-agents-demos)で、Web UIのQA検証、構造化データ抽出、偽造品検出などのレシピを公開しています。MCP経由でCursorやClaude Codeから呼び出す例も含まれます。

APIのないWeb画面の自動化は、これまでPlaywrightやSeleniumの実装コストが壁でした。Computer-Use Agent APIは、OSWorld-Verified 1位のHoloモデルとクラウドブラウザをセットにしたフルマネージド提供で、その壁を下げる試みです。オープンベータはFreeプランから試せるため、自社プロダクトへの組み込み可否を低コストで検証できます。