ゲーマーが数年待ち続けたIntelの大型Battlemage GPUが、2026年3月にようやく製品化された。ただし姿は消費者向けのArc B770ではなく、AI推論とクリエイティブ向けのArc Pro B70だ。同時期のGPU市場はメモリ不足で価格が上昇し、AMDも7月からGPUとVRAMの供給価格を約10%値上げする方針だ。

この記事では、以下のことがわかります。

  • Arc Pro B70のスペックと、噂のB770との関係
  • ゲーム性能がRTX 5060 Tiクラスと報じられている根拠
  • 2026年のGPU市場シェアとメモリ危機の影響
  • RX 6700シリーズを話題に挟む際の事実整理

Intelが出した「大型Battlemage」とは

https://www.intel.com/content/www/us/en/products/sku/245797/intel-arc-pro-b70-graphics/specifications.html

2026年3月25日、IntelはArc Pro B70とB65を発表した。B70はXe2アーキテクチャ(コードネームBattlemage)を採用し、32個のXeコアと32GBのGDDR6、256ビットバスで帯域608GB/sを確保する。TBPは230Wで、PCIe 5.0 x16に対応する。Intel純正カードの想定価格は949ドルだ。

Intelの発表では、B70はマルチユーザー・マルチエージェントのAI推論やレンダリング向けに位置づけられている。256個のXMX(Xe Matrix Extensions)エンジンにより、Int8で367 TOPSの演算性能をうたう。ゲーミング用ドライバーにも対応するが、製品の主眼はワークステーション用途だ。

噂のArc B770はなぜ消費者向けにならなかったか

Intelのデスクトップ向けArcは、2024年末のB580(20 Xeコア、12GB、250ドル)と2025年1月のB570(18 Xeコア、10GB、220ドル)で止まっている。長年噂されていた上位モデルB770(Big Battlemage、BMG-G31チップ)は、CES 2026を過ぎても登場しなかった。

TechSpotの分析では、B70のシリコンはもともとB770向けだったとされる。VRAM価格の高騰前でも、RX 9060 XTやRTX 5060 Tiと同等性能では400ドル超の価格設定が難しく、消費者向けとしては採算が合わなかった。メモリ危機が続く今、16GB VRAM版を400ドル前後で出す選択肢はさらに狭まっている。

IntelはArcデスクトップGPUの撤退を否定しているが、新しい消費者向けカードの発表はない。大型シリコンはPro B70としてAI市場に振り向けられた形だ。

ゲーム性能はRTX 5060 Tiと互角

https://www.digitalfoundry.net/news/2026/05/arc-pro-b70-benchmarks-show-the-big-battlemage-arc-b770-graphics-card-we-never-got

ドイツのPCGamesHardwareがArc Pro B70をゲーミングドライバーで計測した結果が、Digital Foundryなどで紹介されている。1080p・1440p・4K・ウルトラワイドを正規化した平均フレームレートは、B70が36.8fps、RTX 5060 Ti 16GBが36.4fps、RX 9060 XTが35.0fpsだった。ラスター描画では同クラスと評価されている。

一方、RTX 5070は50.0fps、RX 9070は54.6fpsで、ひと世代上の性能帯に位置する。B70は消費者向け最上位のB580より約36%速いが、RTユニット数などのスペック差(約60%)ほど伸びていない。レイトレーシングやパストレーシングを有効にするとRTX 5060 Tiに劣る場面もある。

949ドルという価格を考えると、ゲーム専用の買い物としては現実的ではない。性能の参考値として「大型Battlemageがどこまで出るか」を示すベンチマークと捉えるのが妥当だ。

2026年のGPU市場は厳しさが増している

Jon Peddie Researchの2026年第1四半期データでは、離散GPUの出荷台数は約1,180万台で前四半期比0.6%減だった。シェアはNVIDIAが約90%、AMDが約8%、Intelが約1%で、NVIDIAの独壇場は変わらない。Intelのシェアは0.4ポイント増えたが、Arc ProシリーズのAI需要が寄与したとみられる。AMDがIntelを大きく引き離した構図は維持されている。

価格面では、AIデータセンター向けのHBMやDRAM需要が消費者向けメモリの供給を圧迫している。How-To Geekの報道では、GPUメーカーが長期契約で確保していたメモリ在庫が枯渇し、GDDR6やGDDR7の調達コストが上昇、グラフィックカード全体の値上げにつながっている。

AMDは2026年7月から、AIBパートナー向けのGPUとメモリバンドル供給価格を約10%引き上げると報じられている(参考)。小売価格が同率で上がるとは限らないが、コスト増は確実だ。NVIDIAのRTX 50シリーズも在庫不足と値上げ圧力が続いている。

RX 6700シリーズと「RTX 3000 Ultra」について

話題にRX 6700やRX 6700 XTが出てくることがあるが、これらは2026年の新製品ではない。RX 6700 XTは2021年3月18日、RX 6700は同年6月9日に発売されたRDNA 2世代のカードだ(AMD公式)。生産は終了しており、中古市場で12GB VRAMのコスパ枠として語られることがある。

「RTX 3000 Ultra」という名称の消費者向けGeForce製品は存在しない。NVIDIAのRTX 3000 Ada Generationは、2023年に発表されたモバイル向けワークステーションGPUの呼称だ。現在のゲーミング主力はRTX 50シリーズ(Blackwell)で、Tom’s Hardwareの2026年おすすめGPUリストでもRTX 5070 TiやRX 9070 XTが上位に挙がっている。

今後のGPU選びで押さえるポイント

Intelの大型Battlemageは、ゲーマーが想像していたB770ではなく、AI推論向けのArc Pro B70として着地した。性能はミドルレンジ相当で、VRAM 32GBという構成が製品の価値の中心にある。

市場全体では、メモリ不足が新製品の投入計画や価格に影響し、第1四半期の出荷は横ばいながらも値上げ圧力が強まっている。新規購入を検討するなら、現行のRTX 50やRX 9000シリーズの在庫と価格動向を注視する必要がある。予算が限られる場合、RX 6700 XTのような旧世代の中古品はVRAM容量の面で依然として選択肢になるが、2021年発売の製品である点は押さえておきたい。