「セルを結合しないで」「日付はDD-MMM-YYYYで」——Copilot in Excelを使うたびに同じ指示を繰り返していませんか。2026年6月、Microsoftはアカウント単位で書式や作業スタイルを登録できる「Personalization(個人設定)」を一般提供しました。一度設定すれば、以降のプロンプトに自動反映されます。
この記事では、個人設定で変わること、公式の設定手順、チーム共有向けの「ワークブックルール」との違い、実務で押さえる注意点を整理します。
この記事でわかること
- Copilot in Excelの個人設定で指定できる項目
- 設定画面への開き方と保存の流れ
- 個人設定とワークブックルールの使い分け
- 共有ファイルやデバイス間で挙動が変わる理由
毎回の書式指示が不要になる
Copilot in Excelは、自然言語のプロンプトから表の作成、数式の生成、グラフの挿入までを任せられるAI機能です。これまでは「通貨は小数点なしのUSDで」「表のヘッダーは太字に」といった好みを、プロンプトのたびに書く必要がありました。
Microsoft公式ブログ(2026年6月16日付)によると、個人設定は「一度ルールを登録すれば、触るすべてのブックでCopilotが従う」機能として位置づけられています(参考)。編集を始める前に好みを読み込むため、出力のブレを抑えやすくなります。
同時に発表された「ワークブックルール」は、特定ファイルの見た目や動作を標準化する別機能です。個人設定が「自分用」であるのに対し、ルールはブックに保存され、共有先のユーザーにも適用されます。本記事の主題である個人設定は、Excel for Web・Windows・MacのCopilot in Excelユーザー全員が利用できます。
個人設定で指定できる内容
https://support.microsoft.com/en-us/excel/copilot/copilot-in-excel-personalization
Microsoftサポートの説明では、個人設定は「単発の指示」ではなく「結果の出し方の好み」を登録する用途向けです。主なカテゴリは次のとおりです。
- 数値・通貨の書式: 通貨記号、小数桁、千の位区切り、マイナス表記、パーセント表示
- 日付と単位: 日付形式(例: DD-MMM-YYYY)、計量単位の慣習
- 表のスタイル: 縞模様の行、合計行、ヘッダー固定、既定のヘッダー装飾
- 数式の方針: 構造化参照や名前付き範囲の利用、シンプルな数式への統一
- グラフとピボットテーブル: 既定のグラフ種別、配色、ラベル表記
- 条件付き書式: ハイライトやデータバーの既定スタイル
- 説明の粒度と文体: 要約を先に出すか、表を先に出すか、解説の長さ
Excel講師のLeila Gharani氏の検証では、日付形式の統一、表の罫線・ヘッダー装飾、新規シートのグリッド線非表示、「セルの結合」ではなく「選択範囲内で中央揃え」を使う指定などが、個人設定で反映できる例として紹介されています(参考)。
公式ブログが挙げる例には、「セルを結合しない」「グラフに赤を使わない」「テーブル名にtblプレフィックスを付ける」「ピボットは太字ヘッダーと小計付きの標準レイアウトにする」といった自然言語の一文も含まれます。
設定手順
個人設定の登録は、Copilotペインから数ステップで完了します。
- ExcelでCopilotペインを開く(画面右下のCopilotアイコン)
- ペイン右上の「設定」(…)を選ぶ
- 「Personalization(個人設定)」を開く
- 好みを短く具体的な文で入力する(複数行可)
- 「保存」を押す
保存後、次のプロンプトから設定が反映されます。設定はMicrosoftアカウントに紐づき、同じアカウントでサインインしたWeb・Windows・Macの各環境に引き継がれます。他のユーザーには共有されず、ブックファイルにも書き込まれません(参考)。
プロンプト内の個別指示は、保存済みの個人設定より優先されます。一度きりの例外指定と、常時有効な好み設定を分けて使うのが効率的です。
個人設定とワークブックルールの使い分け
https://support.microsoft.com/en-us/excel/copilot/copilot-in-excel-rules
チームで同じテンプレートを使う場合、個人設定だけでは足りません。各人の好みが混ざるため、ファイルごとの標準が崩れます。
ワークブックルールは、ブック内に「.Rules」という名前のシートを作り、A列にルールを書く方式です。ルールはファイルと一緒に移動し、共有相手も追加設定なしで同じ基準を使えます。数式でルールを切り替えることも可能で、予算超過時と順調時で指示を変えるといった動的な運用ができます(参考)。
| 観点 | 個人設定 | ワークブックルール |
| 保存先 | Microsoftアカウント | ブック内の.Rulesシート |
| 適用範囲 | 自分の全セッション | そのブックを編集する全員 |
| 提供状況 | 一般提供済み | Insidersから段階的に一般提供へ |
個人の作業効率を上げるなら個人設定、部門や会社の帳票フォーマットを守るならワークブックルール、という切り分けが実務的です。
共有ファイルとデバイス同期の注意点
個人設定はアカウントに紐づくため、自宅のPCと会社のノートPCで同じ書式好みを維持しやすくなります。一方、Geeky Gadgetsの解説が指摘するように、共有ファイルそのものの既定書式は、個人設定とは独立して保持されます。共同編集では、各人の個人設定が相手の画面に上書きされるわけではなく、ファイル側の見た目は共有時の状態が基準になります。
Microsoftは、設定が期待どおり効かない場合はプロンプトで再指定し、保存文を短く明確に書き直すことを推奨しています。Leila Gharani氏の検証でも、表の罫線スタイルなど一部の反映にばらつきが見られたと報告されており、完全自動化と割り切らず、重要な帳票では出力を目視確認する運用が安全です。
業務効率への影響
個人設定の本質は、AIへの「定型指示の外部化」です。財務レポートでマイナスを赤括弧にする、ピボットの値フィールド名を「合計〜」ではなく分かりやすい名称にする、分析結果は要約を先に出す——こうしたルーチンをアカウントに預ければ、プロンプトは「何を作るか」に集中できます。
Microsoft 365全体でも、Copilot Chat向けのカスタム指示など、応答を個人好みに寄せる動きが進んでいます。Excelに閉じず、業務ソフトのAIが「毎回同じ口癖を言わせる」段階から「ユーザーの作業様式を覚える」段階へ移りつつある、という文脈で捉えると今回の更新の位置づけが見えます。
Copilot in Excelの個人設定は、2026年6月時点でWeb・Windows・Mac向けに利用できます。同じ書式指示を何度も打ち込んでいたユーザーにとって、設定画面を一度開くだけで作業時間を削れる実用的なアップデートです。チーム標準が必要な場面では、あわせてワークブックルールの導入も検討する価値があります。