Claude Codeを作った本人が、プロンプト設計から並列運用までを28分に凝縮して公開しました。
2026年7月3日、AI開発者のVikas Singh氏がXで紹介したのは、AnthropicのBoris Cherny氏による講演動画です。Cherny氏はClaude Codeの作者で、同社のテクニカルスタッフとして開発を率いています。動画の長さは27分52秒で、CLAUDE.md、メモリのショートカット、並列セッション、プロンプトの型といった実務直結の内容が中心です(参考)。
この記事では、動画と公式ドキュメントを突き合わせ、明日から試せるポイントだけを整理します。
この記事でわかること
- コード編集の前にやるべき最初の一手
- CLAUDE.mdとメモリショートカットの使い分け
- 並列セッションを安全に回すgit worktreeの考え方
- Cherny氏が実際に使うプロンプトの型
最初はコードを書かせない
https://www.youtube.com/watch?v=M8HuXu_bOco
Claude Codeはエージェント型のAIコーディングツールです。ファイル編集、bash実行、検索を組み合わせて機能単位の実装を任せられます。一方で、何でもできるゆえに初見では何を指示すればよいか迷いやすい設計です。
Cherny氏が最優先で勧めるのは、コードベースへの質問から始めることです。Anthropicでは新入社員の技術オンボーディングで、まずClaude Codeを入れ、コードの仕組みを質問させます。Git履歴の調査、関数の引数が増えた経緯、GitHub issueの参照など、人間に聞いていた作業をClaude Codeに任せる流れです。その結果、オンボーディング期間は2〜3週間から2〜3日に短縮されたとCherny氏は語っています。
コードを触る前にQ&Aで境界を掴む。これが動画全体の土台になっています。何が一発で終わり、何が計画が必要かを体感してから編集に入る方が、手戻りが少ないからです。
コードを書かせる前に計画を挟む
大きな機能を一気に実装させると、意図とズレた成果物が返ることがあります。Cherny氏の対策はシンプルで、「コードを書く前に計画を立てて承認を取れ」と指示するだけです。専用のプランモードを使わなくても、自然言語で足ります。
動画で繰り返し出てくる呪文の一つが「think with this one this commit push PR」です。計画を考え、コミットし、プッシュし、プルリクエストを作る一連の流れをClaude Codeに解釈させます。コミットメッセージの形式やブランチ運用は、リポジトリの履歴を読んで自律的に合わせると説明されています。
さらに効果が高いのが、自己検証のループを渡すことです。ユニットテスト、Puppeteerでのスクリーンショット、iOSシミュレータのキャプチャなど、結果を確認できる手段を与えると、Claude Codeは2〜3回の反復で品質を上げます。モック画像を渡してUIを実装させ、Puppeteer MCPで差分を確認するのは、Anthropic内部でも共有されているパターンです。
CLAUDE.mdはプロジェクトの記憶装置
https://code.claude.com/docs/en/memory
CLAUDE.mdは、Claude Codeが毎セッションの冒頭で自動読み込みするMarkdownファイルです。Cherny氏はこれを「プロジェクトのメモリ」と表現しています。共通のbashコマンド、MCPツールの使い方、アーキテクチャ上の決定、重要ファイルの位置など、毎回説明したくない情報を書き留めます。
公式ドキュメントでは、1ファイルあたり200行以内を目安にするよう推奨されています。長くなるとコンテキストを圧迫し、指示の遵守率も下がります。チーム共有用はリポジトリ直下のCLAUDE.mdに置き、個人用はCLAUDE.local.mdとしてgitignoreする二層構成が基本です。サブディレクトリに置いたCLAUDE.mdは、その配下を触るときだけ読み込まれます。
手書きが面倒なら/initで自動生成できます。既存ファイルがある場合は上書きせず改善案を提示します。Cherny氏の「surprisingly vanilla(驚くほど地味)」という評価の核心は、派手な設定よりこのファイルへの投資にあります。
メモリショートカットで設定を速くする
動画で「memory shortcuts」と呼ばれているのは、セッション中に記憶や操作を素早く行うキーボード操作とスラッシュコマンドのことです。
#(シャープ)を入力して続けて指示を書くと、内容をメモリに保存できます。ツールの使い方を毎回訂正しているなら、この方法でCLAUDE.mdやauto memoryに反映させられます。/memoryを実行すると、読み込まれているメモリファイルの一覧表示、auto memoryのオンオフ、編集ができます。公式ドキュメントでも、/memoryはメモリ管理の中心コマンドとして定義されています。
その他の実務で使えるショートカットも動画で紹介されています。
!でbashモードに入り、コマンド出力をそのままコンテキストに載せる- Shift+Tabで編集の自動承認モードに切り替える(bashは引き続き確認)
- Escapeで実行中の処理を安全に止め、指示を差し替える
- Ctrl+RでClaude Codeが見ている全文出力を表示する
設定の階層も意識する価値があります。プロジェクト設定、ユーザー全体の~/.claude/CLAUDE.md、企業ポリシーと、スコープが分かれています。MCPサーバー定義をリポジトリにチェックインすれば、チーム全員が同じツール群を使えます。
並列セッションはgit worktreeで衝突を避ける
https://code.claude.com/docs/en/worktrees
Claude Codeの上級者は、複数セッションを同時に走らせる「マルチ・クローディング」と呼ばれる使い方をします。Cherny氏自身は通常1セッションですが、社内外のパワーユーザーはtmux越しのSSH、同一リポジトリの複数チェックアウト、git worktreeを組み合わせて並列作業していると説明しています。
同一ディレクトリで2セッションを動かすと、お互いの編集が衝突します。公式ドキュメントが推奨する解決策は、セッションごとにgit worktreeで作業ツリーを分けることです。claude --worktree feature-authのように起動すると、.claude/worktrees/配下に独立したブランチと作業ディレクトリが作られ、別ターミナルで別名を指定すれば真の並列が可能になります。
.worktreeincludeに.envなどを書いておけば、gitignoreされた設定ファイルも新しいworktreeへ自動コピーされます。サブエージェントにはisolation: worktreeを指定し、エージェント単位でもファイル衝突を防げます。セッション履歴はディレクトリごとに分かれ、auto memoryはリポジトリ単位で共有される点も押さえておくと、並列運用の設計がしやすくなります。
有料講座より先に試すべき3つの型
動画全体を貫くプロンプトの型は、次の3つに集約できます。
- 探索→計画→承認→実装 — いきなり数千行の実装を頼まない
- 検証ループの付与 — テストやスクリーンショットで自己修正させる
- コンテキストの事前投資 — CLAUDE.md、スラッシュコマンド、MCPを一度設定してチームで共有する
Cherny氏は、Anthropicの技術職の約80%が毎日Claude Codeを使っているとも述べています。製品の改善が社内利用から還元されている背景があり、動画の内容は机上の空論ではなく実運用に根ざしています。
Claude Code SDK(claude -p)をCIやインシデント対応に組み込む話も触れられますが、個人開発者が最初に取り組むべきは上記3型です。28分の動画は、インストール手順から並列運用まで段階的に並べられており、すでに使っている人でもCLAUDE.mdのチューニングやworktree運用の見直しに使えます。