AIエージェントが並列でタスクを走らせる時代、手元のMacだけではマシンリソースが足りなくなってきました。Crabboxは、ローカルのコードをクラウド上のLinuxマシンに同期し、テストやビルドをリモートで実行するオープンソースツールです。

この記事でわかること

  • Crabboxが解決する課題と基本的な仕組み
  • リモートテスト実行の具体的な流れ
  • Warm機能によるマシン再利用の方法
  • コスト管理とAIエージェント連携

ローカルマシンの限界を超える

CrabboxはOpenClawプロジェクトが開発したリモートテストボックスシステムです。Go製のCLIとCloudflare Worker上のブローカーで構成されています。

開発者やAIエージェントが複数のテストスイートを同時に回す場面で、ローカルマシンのCPUやメモリが逼迫する問題を解決します。コマンド1つでHetzner CloudやAWS Spotのインスタンスを借り、ローカルの作業ディレクトリをrsyncで転送し、テストを実行して結果をストリーミングで返します。

インストールはHomebrewで完結します。

brew install openclaw/tap/crabbox

1コマンドでリモート実行

使い方はシンプルです。crabbox runに実行したいコマンドを渡すだけで、リース取得からマシン返却まで自動で処理されます。

crabbox run -- pnpm test

内部では5つのフェーズが順に実行されます。まずローカルの設定を読み込み、一時的なSSH鍵を生成します。次にブローカーへリース要求を送り、クラウドプロバイダーからマシンを確保します。マシンが起動したらrsyncでローカルのファイルを転送し、指定したコマンドをSSH経由で実行します。完了後、マシンは自動で解放されます。

Gitのクリーンな状態である必要はありません。未コミットの変更を含むダーティチェックアウトをそのまま同期できる設計です。

Warmモードでマシンを使い回す

毎回マシンを起動するとプロビジョニングに時間がかかります。crabbox warmupを使えば、マシンを起動したまま保持し、複数のコマンドで再利用できます。

crabbox warmup
crabbox run --id blue-lobster -- pnpm test:changed
crabbox ssh --id blue-lobster
crabbox stop blue-lobster

リースにはフレンドリーなスラッグ名(例: blue-lobster)が付き、IDとして指定できます。アイドル状態が一定時間続くと自動で解放されるため、停止し忘れによるコスト増加も防げます。

ブローカーによるコスト管理

CrabboxのブローカーはCloudflare Worker上で動作するDurable Objectです。プロバイダーの認証情報を一元管理し、個々のCLIにはクラウドの鍵を持たせません。

コスト面では、リース作成時にTTL(有効期限)ベースの最大コストを事前に確保する仕組みを採用しています。月間の支出上限も設定でき、crabbox usageコマンドでユーザー別・プロバイダー別の利用状況を確認できます。

クラウドプロバイダーはHetzner CloudとAWS Spotに対応しています。容量が逼迫した場合は、サーバータイプやインスタンスファミリーをまたいで自動フォールバックします。

AIエージェントとの連携

CrabboxはOpenClawのプラグインとしても動作します。インストールするとcrabbox_runcrabbox_warmupなどのツールがAIエージェントから直接呼び出せるようになります。

エージェントがローカルで複数のタスクを並行実行する際、それぞれにリモートのLinuxボックスを割り当てられます。ローカルの開発環境を汚さず、テストの実行結果だけを受け取る運用が実現します。

GitHub Actionsとの統合

crabbox actions hydrateコマンドを使うと、リポジトリのGitHub Actionsで定義されたセットアップ手順をリモートマシン上で再現できます。CIと同じ環境をローカルの開発ループに持ち込めるため、CI上でだけ失敗するテストの調査が効率的になります。

類似ツールとの違い

GitHub ActionsやCircleCIなどのCI/CDサービスはプッシュ起点で動きます。一方、Crabboxはローカルの作業ディレクトリをそのまま同期するため、コミット前のコードをリモートで試せます。

Dockerベースの開発環境(Dev Containers等)と比べると、Crabboxはコンテナイメージの構築が不要です。素のUbuntuマシンにrsyncで転送する方式なので、セットアップのオーバーヘッドが小さく済みます。

リポジトリは2026年4月30日に公開され、5月1日にはv0.2.0がリリースされています。v0.2.0ではGitHubブラウザログイン、AWSのSSHセキュリティ強化、Blacksmith Testbox対応などが追加されました。MITライセンスで公開されており、macOS・Linux・Windowsに対応しています。

使い始めるには

Homebrewでインストール後、crabbox loginでブローカーに認証し、crabbox doctorで環境を検証すれば準備完了です。テストの実行時間がローカルマシンのボトルネックになっている開発者や、複数エージェントを並列稼働させているチームにとって、検討する価値のあるツールです。