AIエージェントがグループチャットで暴走する。ツールの処理中に中途半端な返信を投げ込み、会話のノイズが増える一方——OpenClawユーザーなら一度は経験した問題です。2026年4月30日リリースのv2026.4.29では、この根本原因にメスが入りました。
メッセージング制御の刷新に加えて、メモリが「人物」を認識するWiki構造へ進化し、NVIDIAがビルトインプロバイダーとして追加されています。
この記事でわかること
- エージェントの返信タイミングが変わった仕組み
- フォローアップ・コミットメントによる自動リマインド
- メモリのWiki化と人物認識の具体的な内容
- NVIDIAプロバイダー追加の意味
- その他の主なセキュリティ・チャンネル修正
エージェントが「考えてから話す」ようになった
今回のアップデートで最も体感に効くのは、メッセージング周りの変更です。
v2026.4.29では messages.visibleReplies がグローバル設定として追加されました。この設定を有効にすると、エージェントはツールの実行が完了するまで返信を保留します。SlackやDiscordのグループチャットで、処理途中の中途半端なメッセージが流れる問題が解消されます。
グループチャット専用の messages.groupChat.visibleReplies も引き続き使えるため、個別チャットとグループチャットで挙動を分けることも可能です。
もう一つの大きな変更は、アクティブラン中のメッセージキューイングです。ユーザーがエージェントの処理中に追加メッセージを送った場合、デフォルトで steer モードが適用されるようになりました。次のモデル境界でまとめて処理されるため、エージェントが古いメッセージに振り回されません。従来の1件ずつ処理する queue モードも残されています。
会話中の約束を自動で追跡する
新機能「フォローアップ・コミットメント」は、会話の中に含まれる期限やタスクを自動検出します。
仕組みはシンプルです。チャットで「金曜までにレポートを出す」と発言すると、エージェントがその約束を抽出し、期限が近づくとハートビート機能を使って自動でリマインドします。commitments.enabled と commitments.maxPerDay の2つの設定で制御でき、エージェント単位・チャンネル単位でスコープを絞れます。
オプトイン方式なので、既存の環境には影響しません。有効化するとCLIからコミットメント一覧を管理でき、不要なリマインドは個別に削除できます。
メモリが「人物」を理解するWikiに進化
OpenClawのメモリシステムが、単なる会話履歴の蓄積から構造化されたWikiへと変わりました。
中心にあるのは「People Wiki」です。エージェントが会話から人物情報を抽出し、正規名・エイリアス・関係グラフ・プライバシーレポートをメタデータとして保持します。「この人は先週何を言っていたか」「AさんとBさんの関係は」といった問い合わせに、証拠付きで回答できるようになります。
実用面では、Active Memoryに allowedChatIds / deniedChatIds フィルタが追加されました。特定の会話だけ記憶を有効にし、雑談チャンネルは除外するといった運用が可能です。
メモリのサブエージェントがタイムアウトした場合も、部分的なリコール結果を返すようになりました。従来は全データが破棄されていたため、長時間セッションでの信頼性が向上しています。REM(夢見)プレビューも読み取り専用のRPCとして提供され、ミューテーションなしで出力を確認できます。
NVIDIAがビルトインプロバイダーに
NVIDIAホスティングモデルがOpenClawのビルトインプロバイダーとして追加されました。APIキーの設定からモデル選択まで、OpenClaw内で完結します。
これまでもOpenAI互換エンドポイント経由でNVIDIAモデルを使う方法はありましたが、公式プロバイダーとして組み込まれたことで、カタログからのモデル選択やプロバイダープレフィックス付きのモデル参照が使えるようになりました。
同時に、Amazon Bedrock経由のClaude Opus 4.7でthinking(推論過程の表示)がサポートされ、OpenAI Codex互換ストリーミングの安定性も改善されています。
セキュリティとチャンネル修正
セキュリティ面では、OpenGrepルールパックの導入が目立ちます。PRスキャンとフルスキャンのワークフローが追加され、GitHub Code Scanningへの結果連携も可能です。
ツール設定のセキュリティも強化されました。tools.exec や tools.fs の設定が、制限プロファイル(messaging や minimal)を暗黙的に拡張しなくなり、必要な場合は明示的に alsoAllow を設定する必要があります。
チャンネル別の修正も多数含まれています。Slackではボット経由のメッセージに明示的な許可が必要になり、Telegramではプロキシ・Webhook・ポーリングの耐障害性が向上しています。Discord、WhatsApp、Microsoft Teams、Matrix、Feishuにもそれぞれ安定性の改善が入りました。
新チャンネルとして、TencentのYuanbaoが追加されています。
まとめ
OpenClaw 2026.4.29は、エージェントの「振る舞い」を改善するアップデートです。返信タイミングの制御とフォローアップ機能で日常の使い勝手が変わり、People Wikiで長期的なコンテキスト管理が強化されました。NVIDIAの公式対応により、モデル選択の幅も広がっています。
アップデートは openclaw update コマンドで適用できます。Docker環境では OPENCLAW_SKIP_ONBOARDING 環境変数による自動インストールのスキップにも対応しました。