チャットボットに質問するだけでは、もう「AIを使う側」にはなれません。NvidiaのJensen Huang CEOは2026年2月のCisco AI Summitで、「AIに仕事を奪われるのではなく、AIを使う人に仕事を奪われる」と述べました。Fast CompanyのSummer 2026特集「42 Ways You Should Be Using AI Right Now」は、この危機感を逆手に取り、エージェント型AI(agentic AI)の具体的な入口を42個に整理した実務向けガイドです。
この記事では、同誌の内容をもとに、今日から試せる活用法と注意点を俯瞰します。
この記事でわかること
- 既存の業務アプリに組み込まれたAIエージェントの使いどころ
- 会議メモやスケジューリングなど、特化型ツールの選び方
- vibe codingとコンピュータ操作型エージェントの位置づけ
- 学習リソースと、企業導入の現状数字
既存アプリから始めるのが最短ルート
エージェント型AIに初めて触れるなら、すでに使っている生産性ツールの機能から試すのが最もハードルが低いです。Fast Companyは、業界の hype(過剰な期待)が高い一方で、実用的なものも確実に存在すると指摘しています。
Asana AI Teammates
プロジェクト管理ツールAsanaは、エージェントを「teammates(チームメイト)」と呼びます。指示に応じてタイムラインの作成や、市場データをもとにした競合分析などを代行します。
Canva AI
デザインツールCanvaはAIを積極的に取り込んでいます。Canva AIでプレゼン資料、PDF、動画、アプリの初稿を生成し、人間が仕上げを加える流れが想定されています。
Google Workspace Studio
Google Workspaceの一部として、Google Meet後の要約メール送信や、返信が必要なGmailの監視など、継続的な単純タスク用のエージェントを作成できます。
Notion AI
Notionはもともとのノートアプリから、AIを軸にした職場の司令塔へと進化しています。Notion内の機能だけでなく、SlackやGoogle Docsなど外部データにもアクセスして自動作業を実行します。
Slack Slackbot
Slack上の会話やチャンネルの情報を参照し、会議の準備、進行中プロジェクトのレビューなどを支援します。Slackを業務の中心に据えているチーム向けです。
Zoom AI Companion(ZoomMate)
ビデオ会議プラットフォームZoomのエージェントは、会議のスケジューリング、合意した目標の達成方法の提案、フォローアップ用ノートの共有まで担います。
会議メモとスケジューリングの特化型ツール
汎用プラットフォーム以外にも、特定の業務シーン向けにエージェント機能を持つツールが増えています。
Granola
会議中のAIメモ取りツールは乱立していますが、Fast CompanyはGranolaの正確さとシンプルさを、多忙なAI先進ユーザー層の定番として挙げています。ボットが会議に参加しない方式で、相手に気づかれにくくメモを残せる点が特徴です。
Reclaim
Dropbox傘下のAIスケジューリングアシスタントです。カレンダー上でToDoに時間を確保し、会議間のバッファを設け、忙しい日でも昼食の時間を確保するといった調整を自動化します。
Gamma
メモを渡すと、動的で視覚的に訴求力のあるプレゼン資料やWebサイトへ変換します。資料作成の下準備を任せたい場面向けです。
Paradigm
Webからデータを収集し、スプレッドシートへ投入する作業を自動化します。リサーチ内容を伝えるだけで、収集から整理までを任せられます。
Zapier
9,000以上のアプリとサービスをつなぐ「接着剤」として機能します。AIがどのツールを組み合わせれば目的を達成できるかを判断し、タスクを実行します。
vibe codingでアプリを自分の手で作る
エージェント型AIの目立った成果のひとつが、vibe coding(バイブコーディング)です。自然言語でソフトウェアの要件を伝えると、AIが動くコードを生成します。プログラミング言語を長期間学ばなくても、アプリ制作の入口が広がったのが背景にあります。
Fast Companyが特に注目するのはAnthropicのClaude Codeです。曖昧な指示でも意図を汲み取り、比較的バグの少ないソフトウェアを返す点が評価されています。OpenAI Codex、Google AI Studio、Bolt、Cursor、Lovable、Replitなども競合として並びます。言語の知識は不要ですが、データベースの設定やAPIキーの発行など、技術的な作業に触れる覚悟はあるとよいでしょう。
「ずっと欲しかったアプリ」や「自分の業務だけを解決する小さなツール」を、シンプルなToDoリストから試してみるのが同誌の勧めです。数分で形にできる体験は、エージェントの可能性を体感するうえで有効です。
コンピュータ操作型エージェントは慎重に
2025年11月に登場したOpenClawは、エージェント型AIの話題を一気に押し上げました。データセンター上ではなく、ユーザーのPC上でローカル実行され、キーボード操作のようにアプリやファイルを制御します。WhatsAppなどのメッセージアプリから指示を送り、起床前のメール仕分けのような多段階タスクを、監視なしで任せられる点が画期的です。
Fast Companyは、OpenClawが「アシスタント」という呼び名に最も近い存在だと評価しつつ、現状は一般向けではないと述べています。コマンドラインからのインストールと操作が必要で、PC内のアプリやデータへの深いアクセスはセキュリティリスクも伴います。愛好家の間では、専用のMac mini上で動かし、本番環境への被害を抑える運用が広がっています。
より慎重な選択肢として、AnthropicのClaude Coworkが挙げられます。Claudeデスクトップアプリの一部で、PC上のファイル整理や経費精算の定期実行などが可能です。メール送信はユーザー承認後に限るなど、危険な操作を抑える設計がOpenClawより進んでいます。
学習リソースで土台を固める
エージェント型AIの概念自体がまだ馴染み薄い読者向けに、Fast Companyは動画・無料コース・ニュースレター・ポッドキャストも紹介しています。
YouTubeでは、Jeff Suの「AI Agents, Clearly Explained」(10分)が入門向け、Tina Huangの「Vibe Coding Fundamentals in 33 Minutes」(33分)がvibe coding入門、Nick Saraevの「AI Agents Full Course 2026」(2時間)が深掘り向けです。無料コースはCodecademyの「Intro to AI Agents」(15分)、LinkedIn Learningの実務者向け・管理者向け講座が含まれます。
ニュースレターはJeremy Caplanの「Wonder Tools」、Wharton教授Ethan Mollickの「One Useful Thing」、The Neuronが推奨されています。ポッドキャストは「AI for Humans」(178エピソード・週2回)、Jordan Wilsonの「Everyday AI Podcast」(802エピソード・毎日)、Nathaniel Whittemoreの「AI Daily Brief」(1,000エピソード・毎日)が、過度な期待を避けつつ実務的な視点を提供すると紹介されています。
企業導入の数字と、続けて学ぶ理由
Fast Companyが引用する調査では、企業の51%がすでにAIエージェントを導入済み、16%は日常業務の半分以上をAIに任せる見込み、26%はコスト削減、28%は顧客体験の向上を目的にしています。一方で、2027年末までにエージェント型AIプロジェクトの40%が中止される可能性も示されています。
エージェント型AIは、通常のAI進化よりも速いペースで変わり続けています。既存製品の賢さが上がり、新製品が毎日登場し、主要企業間の覇権争いも始まったばかりです。Fast Companyの結論は明快で、今日のツールに満足しすぎず、新しいものを試し続けることが、エージェントの能力と限界を理解する最善の方法だと述べています。
まずは手元のAsanaやNotion、GranolaやReclaimのどれか一つから触れてみてください。42個すべてを一度に試す必要はありません。小さな一歩が、Jensen Huangが言う「AIを使う側」への転換点になります。