Custom GPTを用途別に増やすほど、「どれを開くか」の判断が仕事そのものになります。Tom’s Guideの記者Amanda Caswell氏は、調査・ブレスト・校閲など5体の専門GPTを作ったあと、ルーティング専用の司令塔AI 1体に切り替えました。役割分担はそのまま、入口だけを1つにまとめる発想です。

この記事では、同じ仕組みを自分の環境で再現する手順と、OpenAIが推すマルチエージェント設計の考え方を整理します。

この記事でわかること

  • 専門Custom GPTが増えすぎると起きる非効率
  • 5体の専門エージェントと司令塔AIの役割分担
  • Custom GPTでルーティングAIを作る具体的な手順
  • 新しい専門GPTを追加しても運用が複雑化しない理由

専門GPTが増えると、選ぶ時間がボトルネックになる

Custom GPT(カスタムGPT)は、ChatGPTに指示・知識・ツールをあらかじめ設定した専用アシスタントです。OpenAI Academyの説明では、同じプロンプトを何度も書き直す作業を減らし、繰り返しのワークフローを安定させる用途向けとされています。

Caswell氏のサイドバーには、ファクトチェック用、ブレスト用、雑メモ整理用など、用途ごとのGPTが並んでいました。1体1体は有用ですが、タスクのたびに「調査GPTを先に開くか、執筆GPTに直行するか」と迷う状態が続きます。以前作ったGPTの存在自体を忘れることもあり、ツール管理が生産性を下げる典型例になっていました。

5体の専門エージェントと、1体の司令塔AI

Caswell氏が最初に用意した5体は、ジャーナリスト向けの役割分担です。読者の職種に合わせて中身は入れ替えられます。

エージェント 役割
Research Agent 信頼できる情報源の探索、不足コンテキストの指摘、執筆前の追加質問
Brainstorm Agent 雑なメモを整理し、実行可能なアイデアの箇条書きに変換
Fact-check Agent 根拠の薄い主張の指摘、引用が必要な箇所の通知
Editor Agent 読みやすさの改善、重複表現の削除、段落つなぎの調整
Review Agent トラフィック見込み、フォロー記事の可能性、エンゲージメントの観点

ここまでが「専門家チーム」です。新しく追加したのがルーティングエージェントで、仕事は1つだけです。「このタスクはどの専門GPTが担当すべきか」を判断し、必要なら複数GPTの実行順序まで提案します。

たとえば「Apple Intelligenceについて書きたいが、引用も情報もまだ少ない」と伝えると、Research Agentを先に使うよう案内します。近所の人へのメールを柔らかいトーンに直す程度の依頼なら、Fact-check Agentは不要と判断します。ブレストのあとに調査が必要なケースでは、Brainstorm Agentの次にResearch Agentを勧めるなど、ユーザーがワークフローを記憶しなくてよい点が変化の核心です。

OpenAIが示す設計:HandoffsとAgents as Tools

この構成は、OpenAIのエージェント設計ガイドが説明する「マルチエージェントのオーケストレーション」と同じ発想です。複数の専門エージェントを使うとき、大きく2パターンに分けられます。

  • Handoffs(引き継ぎ): 会話の主導権を専門エージェントに移す
  • Agents as Tools(ツールとして呼び出す): 司令塔エージェントが最終回答の責任を持ち、専門エージェントを補助として呼ぶ

Custom GPTでルーティングAIを作る方法は、コード不要のAgents as Tools型に近いです。司令塔GPTが「次はEditor Agentを開いてください」と指示し、ユーザーが各GPTを順に使う形になります。OpenAIは「最初は1体で始め、指示・ツール・ポリシーが本当に変わる場面だけ専門エージェントを増やす」とも述べています。Caswell氏の5体+司令塔は、執筆・調査・校閲で指示内容が明確に分かれるため、分割のメリットが出るケースです。

司令塔Custom GPTの作り方

https://chatgpt.com/

ChatGPTのサイドバーから「GPTs」→「Create」を開き、専門GPTと司令塔GPTを順に作ります。OpenAI Academyでは、Configureタブで名前・Description・Instructionsを直接編集する方法が推奨されています。

ステップ1:繰り返す作業から専門GPTを3〜5体つくる

分析、要約、ブレスト、執筆、画像生成など、週に何度も同じ手順で行う作業を洗い出します。1 GPT 1 役割が原則です。Instructionsには「何をするか」「何をしないか」を具体的に書き、Capabilities(Web検索、データ分析など)は必要なものだけ有効にします。

ステップ2:ルーティングGPTを1体追加する

Caswell氏が使っているInstructionsの骨子は次のとおりです。

You are my AI Routing Agent. Whenever I describe a task, identify my goal, decide which specialist agent should complete it, recommend the best sequence if multiple agents are needed and explain your reasoning briefly. If important information is missing, ask clarifying questions before continuing.

日本語で運用する場合は、同じ意味を保ったうえで「各専門GPTの名前と役割一覧」をInstructions末尾に追記します。Research Agent、Editor Agentなど、サイドバー上の名称と一致させると迷いが減ります。

ステップ3:5つの判断基準を組み込む

Caswell氏は、司令塔GPTに次の5問で毎回評価させています。

  1. ユーザーのゴールは何か
  2. どの専門GPTが最適か
  3. 複数GPTが必要か
  4. 必要ならどの順番で使うか
  5. 作業開始前に不足情報はないか

この枠組みをInstructionsに書いておくと、回答のぶれが小さくなります。

ステップ4:すべての作業を司令塔GPTから始める

「とりあえず執筆GPTを開く」習慣をやめ、最初の1通は必ずルーティングGPTに送ります。タスクを自然文で説明するだけで、次に開くGPTと順序が返ってきます。

運用を続けるうえでの注意点

SEO最適化、SNS投稿、コードレビューなど、新しい繰り返し作業が見つかったら専門GPTを追加します。司令塔GPTのInstructionsに「新メンバー」の名前と役割を1行足すだけで、以降のルーティングに反映されます。Caswell氏は、Sakana AIのように複数のチャットボットモデルを横断的に提案する仕組みとも類似していると述べています。違いは、ChatGPTやClaudeなど同じプラットフォーム内のGPTに限定できる点です。つまり切り替えコストが低い運用が可能です。

うまくいかないときは、専門GPTのInstructionsが広すぎないかを確認します。2つのGPTが同じ作業を引き受けると、司令塔の判断がぶれます。OpenAIのガイドが言う「Give each specialist a narrow job(各専門エージェントの仕事を狭く保つ)」は、Custom GPT運用でもそのまま有効です。

仕事の入口を1つに絞る

Custom GPTを増やすほど強くなるのは、各GPTの専門性です。同時に、どれをいつ使うかという新しい判断コストも増えます。5体の専門GPTを残したまま、司令塔AI 1体で入口を統一する方法は、コードや有料ツールなしで今日から試せます。まずは自分の繰り返し作業を3つ書き出し、ルーティングGPT用のInstructionsを1本だけ作ってみてください。