AIエージェントが増えるほど、制御が難しくなる。SalesforceはこのジレンマをAgent Fabricのアップデートで正面から解決しようとしている。
2026年4月に発表された大型アップデートでは、マルチベンダー環境でのエージェント管理を大幅に強化。ドラッグ&ドロップのビジュアルエディタや、AIモデルを横断したガバナンス機能が新たに加わった。
この記事でわかること:
- Agent Fabricが何を解決するプラットフォームか
- 今回追加された主要機能の内容
- 利用開始できる時期と対応リージョン
AIエージェントが増えると何が起きるか
企業でAIエージェントの導入が進むと、気づけばOpenAI・Gemini・Amazon Bedrockなど複数ベンダーのエージェントが社内に混在する。誰がどのエージェントを動かしているか把握しにくく、コストも見えづらい。コンプライアンス上のリスクも、エージェントの数だけ積み上がる。
Agent Fabricは、この「エージェント乱立」問題を一元的な制御プレーンで解決するプラットフォームだ。
https://www.salesforce.com/news/stories/agent-fabric-control-plane-announcement/
2025年9月のリリース以来、CapitaやAlconなど大企業が採用。Diabsolut社のJohn Pettifor氏は「以前は数日かかっていたタスクが数秒で終わる。Agent Fabricはコントロールを失わずにAIをスケールする方法だ」と語っている。
今回のアップデートで何が変わったか
エージェントの自動検出が拡張された
従来のAgent Scannersに、Amazon BedrockとMicrosoft Foundry、GoDaddyのプラットフォームが新たに加わった。社内に点在するAIアセットを自動で検出し、エージェント登録を効率化する。5月にはMCPサーバーの検出にも対応する予定で、OAuth認証の統合は6月に提供される。
ドラッグ&ドロップでワークフローを設計できる
ビジュアルオーサリングキャンバスの追加により、コードを書かずにエージェント間のタスク引き渡しや人間の承認ステップを設計できる。MuleSoft Vibesと組み合わせると、最適なエージェントの検出からプロジェクトのスキャフォールディング生成まで一気通貫で行える。
既存のAPIをエージェント対応に変換するMCP Bridge
新設のMCP Bridgeは、既存APIをMCP(Model Context Protocol)対応に変換する機能だ。コードを変更することなく、エンタープライズレベルのセキュリティとレート制限をエージェントに適用できる。API資産を活かしながらエージェント化を進めたい企業にとって、移行コストを下げる仕組みになる。
複数LLMを横断して管理するLLMガバナンス
AI GatewayのLLMガバナンス機能では、OpenAI・Gemini・Salesforce独自モデルなど複数のLLMを横断したトークン管理とコスト制御を一元化できる。ルーティングルールを定義し、業務内容に応じて適切なモデルへ自動的に振り分けることも可能だ。高性能だが高価なモデルを使うべきタスクと、軽量なモデルで十分なタスクを分けて管理できるため、コスト最適化の効果が見えやすい。
高リスク操作には人間の承認を組み込む
Trusted Agent Identityは、権限の高い操作にユーザー固有の許可を紐づける機能だ。送金や法的レビューのような重要なタスクが発生すると、担当者のスマートフォンに承認リクエストが届く。すべての操作が記録・監査できる形で保持されるため、コンプライアンス対応の基盤としても機能する。
利用開始できる時期と対応リージョン
Agent FabricはカナダおよびAP地域(日本を含む)の新リージョンに展開済み。AI Gateway・MCP Bridge・Trusted Agent Identityはすでに一般提供(GA)が始まっている。
Agent Brokerの決定論的オーケストレーション機能は2026年4月にベータ開始。ビジュアルオーサリングキャンバスを含む完全版は2026年6月にGA予定だ。MCP対応のAgent Scannersは5月、OAuth認証は6月の提供が見込まれる。
Salesforceが目指す「エージェント型企業」
今回のアップデートは、SalesforceのAgentforce戦略の延長線上にある。単体のAIアシスタントを超えて、複数エージェントが協調動作する「Agentic Enterprise」への移行を支援するのがAgent Fabricの役割だ。
MuleSoftのAndrew Comstock氏は「断片化したエージェントの集まりを、統合された高性能なデジタルワークフォースに変える」と説明している。複数のAIプラットフォームを導入している企業ほど、制御プレーンとしての恩恵を受けやすい構成になっている。