エージェントループや長時間のコーディング作業に向けた2モデルが、OpenAI互換API経由で即日利用できるようになりました。
この記事では、QuickSilver Pro(QSP)が2026年6月13日に追加したQwen 3.7 PlusとKimi K2.7 Codeの対応内容を整理します。
この記事でわかること
- QSPで新たに使える2モデルの仕様と料金
- エージェントループ・長期コーディング向けに選ばれた理由
- 既存のリセラーとの価格差と接続方法
何が変わったか
QuickSilver Proの創業者であるRaullen Chai氏が、2026年6月13日にXで新モデル対応を告知しました。QSPはオープンソース系LLMをOpenAI互換APIで提供する推論サービスで、今回「エージェントループ(AIがツールを繰り返し呼び出す処理)」と「long-horizon coding(長時間にわたるコーディング作業)」向けに、次の2モデルを追加しています。
- Qwen 3.7 Plus(モデルID:
qwen3.7-plus) - Kimi K2.7 Code(モデルID:
kimi-k2.7-code)
いずれも既存のQSPアカウントから、APIキーとベースURLの変更だけで利用できます。
なぜこの2モデルか
コーディングエージェントは、ファイル読み込み・コード生成・テスト実行といったツール呼び出しを何十回も繰り返します。1回の応答だけでなく、会話履歴とツール出力が次のリクエストに積み上がるため、コンテキスト長とトークン単価がそのままコストに直結します。
QSPはこの課題に対し、長時間のエージェント実行を想定して設計された2モデルを選んでいます。AlibabaのQwen 3.7 Plusはエージェント向けフラッグシップ、Moonshot AIのKimi K2.7 Codeはコーディング特化版として位置づけられています。
Qwen 3.7 Plusの仕様
Qwen 3.7 PlusはAlibabaが提供するエージェント向けモデルです。QSP上では次の仕様で提供されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| コンテキスト | 262Kトークン |
| 入力料金 | $0.256 / 100万トークン |
| 出力料金 | $1.024 / 100万トークン |
| 推論モード | デフォルトで有効(thinking on) |
Alibabaの公式発表では、Qwen 3.7 PlusはAIME 2025ベンチマークで上位モデルのQwen 3.7 Maxと同等の推論性能を、約3倍の速度で達成すると報告されています。QSPのモデルページでは、ローンチデモとして11時間の自律コーディングセッション(1,000回超のツール呼び出し、1万行超のコード生成)が紹介されています。
価格面では、OpenRouterの$0.32 / $1.28(入力 / 出力、100万トークンあたり)に対し、QSPは約20%安い水準です。同系列のQwen 3.7 Max(出力$6.00 / 100万トークン)と比べると、出力コストは約6分の1です。最難関の単発推論や1Mトークン超のコンテキストが必要な場合はMaxへの切り替えを検討する余地があります。
Kimi K2.7 Codeの仕様
Kimi K2.7 CodeはMoonshot AIが提供するコーディング特化モデルです。K2.6と同じ1兆パラメータ(アクティブ32B)・256Kコンテキストのアーキテクチャをベースに、長期コーディング向けに再チューニングされています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| コンテキスト | 256Kトークン |
| 入力料金 | $0.60 / 100万トークン |
| 出力料金 | $2.80 / 100万トークン |
| 推論モード | 常時有効(非thinkingモード非対応) |
Moonshot AIの公式ドキュメントによると、K2.7 CodeはRust・Go・Pythonなど複数言語や、フロントエンド開発・DevOps・パフォーマンス最適化といった場面で長期コーディングの成功率を高めています。テキストに加え画像・動画入力、マルチステップのツール呼び出しにも対応します。
MoonshotはK2.6と比較してコーディング評価で高いスコアを維持しつつ、推論トークンを約30%削減したと報告しています。エージェントループでは前のターンの推論内容が次の入力に含まれるため、この差はタスク完了までの総コストに効きます。OpenRouterの$0.75 / $3.50に対し、QSPはこちらも約20%安くなっています。
接続方法
https://api.quicksilverpro.io/v1
QSPはOpenAI SDKと互換のチャット補完APIです。Pythonでの接続例は次のとおりです。
from openai import OpenAI
client = OpenAI(
base_url="https://api.quicksilverpro.io/v1",
api_key="your-api-key",
)
response = client.chat.completions.create(
model="qwen3.7-plus", # または "kimi-k2.7-code"
messages=[{"role": "user", "content": "Hello!"}],
)
ストリーミング、ツール呼び出し、json_schemaのstrictモード、レスポンスごとのusage.costによるコスト計測に対応しています。Cursor、Cline、Aider、Continue.devなどのコーディングエージェントからも、ベースURLとモデルIDを差し替えるだけで接続できます。
Kimi K2.7 Codeを使う際は、Moonshot公式ドキュメントの制約に注意が必要です。thinkingモードの無効化、temperatureやtop_pの変更はエラーになります。マルチステップのツール呼び出しでは、アシスタントメッセージのreasoning_contentをコンテキストに残す必要があります。
他モデルとの使い分け
QSPにはDeepSeek V4 Flash($0.08 / $0.16)やV3($0.16 / $0.616)など、より安価なモデルも揃っています。短いチャットや単発のコード生成なら、これらの方がコスト効率に優れます。
今回追加された2モデルは、数百回のツール呼び出しを伴う長時間エージェント向けです。Qwen 3.7 Plusは汎用エージェントとコーディングの両方、Kimi K2.7 Codeはコーディングエージェント特化と考えると選びやすくなります。一般向けのエージェント計画にはKimi K2.6($0.584 / $2.79)、純粋な数学推論にはDeepSeek R1が代替候補です。
料金は従量課金で、初回クレジット購入時に最大$50まで100%マッチするローンチボーナスが用意されています($5購入で$10、$50購入で$100相当)。
開発者への意味
オープンソース系の最新モデルは、公式APIと複数のリセラー経由で提供されることが多く、ベースURLを変えるだけで同じエージェント基盤を維持したままコストを最適化できます。今回のQSP対応は、エージェント開発者がQwen 3.7 PlusとKimi K2.7 Codeを既存のOpenAI互換ワークフローに組み込むハードルを下げる動きです。本番投入前に、自分のタスクセットでA/Bテストし、コンテキスト長・推論品質・トークン消費のバランスを確認するのが確実です。
