AIで動画クリップを作っても、編集ソフトへの取り込みとカット作業は手作業のままです。Palmier Proは、生成から編集までをタイムライン上で完結させ、Claudeなどのエージェントがプロジェクトを直接操作できるmacOS向け動画エディタです。
この記事でわかること
- Palmier Proが解決する編集フローの課題
- Claude連携(MCP)の仕組みと接続手順
- 主な機能・対応AIモデル・料金体系
- RunwayやPremiere Proとの違い
AI動画制作の「往復作業」がボトルネックになる
これまでのAI動画ツールは、多くの場合「生成」と「編集」が分断されていました。Web上でクリップを生成し、ダウンロードしてPremiere ProやCapCutにインポートし、そこでカットや並べ替えを行う——この往復が日常の作業になります(参考)。
Palmier Proは、この分断を解消するために設計されたエディタです。生成したクリップはそのままタイムラインに配置され、トリミングや速度調整も同じ画面で行えます。自前の映像とAI生成クリップを同じマルチトラック上で混ぜて、最終的にMP4やDaVinci Resolve向けXMLとして書き出せます。
Palmier Proとは何か
Palmier Proは、Palmier社(Y Combinator S24)が2026年にリリースしたmacOS向け動画エディタです。Swiftで一から構築されており、Premiere ProをベンチマークにしながらAIをワークフローに組み込んだ設計になっています。
エディタ本体・MCPサーバー・アプリ内チャットはGPLv3でオープンソース公開されています。生成AIの処理パイプラインのみがクローズドソースで、ここが有料プランの対象になります。
動作環境はmacOS 26(Tahoe)以降のApple Silicon Macに限定されます。アカウント登録なしでエディタとMCPサーバーを利用でき、AI生成機能だけがログインとサブスクリプションを要求します。
Claudeがタイムラインを直接操作する仕組み
Palmier Proの最大の特徴は、MCP(Model Context Protocol)を通じて外部エージェントがプロジェクトにアクセスできる点です。MCPは、AIアシスタントが外部ツールと安全に連携するための標準プロトコルで、CursorやClaude Desktopでも広く使われています。
アプリを起動すると、ローカルでMCPサーバーが http://127.0.0.1:19789/mcp に立ち上がります。Claude Codeへの接続は、以下のコマンド一行で完了します。
claude mcp add --transport http palmier-pro http://127.0.0.1:19789/mcp
Claude DesktopやCursorは、アプリ内の「Help → MCP Instructions」からワンクリックで設定できます。接続後、エージェントはタイムライン上のクリップ構成・長さ・生成プロンプトなどのプロジェクト全体を把握したうえで、以下の操作を実行します。
- クリップのトリム・分割・並べ替え
- 画像・動画・音声の生成とタイムラインへの配置
- AI生成クリップのプロンプト修正と再生成
チャットで指示を出すだけで、エージェントが編集作業を代行する流れです。従来は「アドバイスをもらって自分で手を動かす」関係だったAIアシスタントが、実際の編集ソフト内で作業を遂行できるようになります。
主な機能
タイムライン上でのAI生成
Kling V3、Seedance 2.0、Veo 3.1、Grok Imagineなど複数の生成モデルに対応しています。タイムライン上でモデル・解像度・尺・アスペクト比を選び、プロンプトを入力するとクリップがその場に生成されます。ファーストフレームとラストフレームを指定して始点と終点を固定したり、参照画像でスタイルの一貫性を保ったりも可能です。
気に入らなければ再生成ボタンで別バリエーションを試せます。Webからダウンロードしてインポートし直す手順は不要です。
プロ向け編集機能
マルチトラック(映像・音声・画像・テキスト)、トリム、分割、速度変更、不透明度、変形など、一般的な非線形編集の操作を備えています。AI生成クリップをクリックすればアップスケールやAI編集もタイムライン上で実行できます。
書き出し形式はMP4(H.264、H.265、ProRes)と、Premiere Pro・DaVinci Resolve向けのNLE XMLです。Palmier Proだけで仕上げることも、既存の編集環境に引き継ぐことも選べます。
アプリ内AIアシスタント
MCP接続が不要な場合は、内蔵のPalmierチャットを使えます。自然言語でショットや編集内容を指示し、@ で参照画像を指定してルックを合わせることもできます。チャットが生成したアセットは自動的にタイムラインに配置されます。
料金体系
| プラン | 月額(ローンチ価格) | 内容 |
|---|---|---|
| Free | $0 | プロ向けエディタ、MCP接続、アカウント不要 |
| Pro | $29(通常$49) | 月5,000クレジット、画像・動画・音声生成 |
| Max | $69(通常$99) | 月12,000クレジット、優先サポート |
クレジットは動画・画像・音声の生成、アップスケール、Palmierチャットに消費されます。5,000クレジットの目安は画像約333枚、または生成動画3〜7分程度です(モデルと解像度により変動)。編集と書き出しは常に無料です。
RunwayやPremiere Proとの違い
Runway、Higgsfield、Artlistは「生成プラットフォーム」です。クリップを作ることに特化しており、完成した映像を別のエディタに持ち込む前提のワークフローになります。
Premiere ProやCapCutは「編集ソフト」として成熟していますが、AI生成は後付けの機能にとどまることが多いです。
Palmier Proは「生成がタイムライン上に存在するエディタ」という立ち位置です。生成→反復→トリム→仕上げを一つのプロジェクト内で完結させ、さらにClaudeなどのエージェントにそのプロジェクトを委ねられる点が他ツールとの決定的な違いです。
編集フローが変わる理由
Palmier Proは、AI動画制作の次の段階——チャットから業務ソフトへAIが入り込む流れ——を動画編集分野で具体化したツールです。エディタとMCPが無料で使えるため、まずClaudeやCursorを接続してタイムライン操作を試すハードルは低いです。
一方で、macOS 26とApple Siliconという環境制限、生成AIの有料クレジット制は押さえておく必要があります。AI生成と実務編集を一画面に統合したいクリエイターにとって、現時点で最も実用的な選択肢の一つと言えます。