AIエージェントを本番投入したあと、応答の品質低下やコスト急増に気づけない——こうした運用の空白を埋める動きが進んでいます。

この記事では、Splunk Observability Cloudの「AI Agent Monitoring」が2026年第1四半期に一般提供(GA)となったことと、LLM・エージェント向け監視の具体的な機能を整理します。

この記事でわかること

  • AI Agent Monitoringが追跡する指標と画面構成
  • ゼロコード計装で対応するフレームワーク
  • Cisco AI Defense連携など今後のセキュリティ強化

https://www.splunk.com/en_us/products/ai-observability.html

本番運用で求められる「AI向けオブザーバビリティ」

LLM(大規模言語モデル)やAIエージェントは、同じ入力でも出力が変わる非決定的な挙動を持ちます。不正確な回答、偏り、幻覚(ハルシネーション)といった品質問題は、顧客信頼の低下やコスト増につながります。

従来のアプリ監視では、リクエスト数やレイテンシは見えても、「どのエージェントがどのツールを呼び、どんな品質リスクを抱えているか」までは追いにくいのが実情です。Splunkは2026年2月10日のQ1アップデート発表で、こうした課題に対応するAI Agent MonitoringをObservability CloudでGAとしました。オンプレミス向けにはAppDynamicsでも利用できます。

2026年6月21日、Splunk公式Xアカウントでも同機能を再告知し、LLMとエージェントの性能追跡、挙動のトラブルシュート、本番環境での信頼性維持を訴求しています。

AI Agent Monitoringで見える4つの軸

AI Agent Monitoringは、AIアプリケーションとエージェントの「性能」「品質」「コスト」「リスク」を横断して監視します。Splunk Application Performance Monitoring(APM)のトラブルシュート機能を拡張した位置づけで、AIアプリと非AIアプリをトレース単位で横断調査できます。

追跡できる主な指標は次のとおりです。

  • 性能:リクエスト数、エラー率、レイテンシ
  • 品質:幻覚、偏り、ドリフト、正確性、感情・毒性スコア
  • コスト:入力・出力トークン数と推定コスト
  • リスク:セキュリティ関連の品質指標

品質評価にはLLM-as-a-Judge(別のLLMが出力を採点する方式)のエバリュエーターを使います。公式ドキュメントでは、コストはプロバイダー公開単価とトークン数から算出する推定値であり、実際の請求額とは一致しない点に注意が必要です。

4つの専用画面で障害を切り分ける

データ収集後は、組み込み画面で監視と調査を行います。

AI overviewページでは、AIアプリとエージェント全体の状態を俯瞰します。AI agentsページでは、環境内のエージェント一覧と、各エージェントのリクエスト数・エラー・レイテンシ・トークン・品質スコア・リスクを個別に確認できます。異常なエージェントを素早く特定する入口になります。

AI trace dataページでは、プロンプト(入力)とレスポンス(出力)をトレースID単位で追い、幻覚や偏りなど品質問題の発生傾向を調べられます。サービスマップでは、LLMサービスの依存関係とユーザー操作の流れを可視化し、ワークフロー全体のボトルネックを把握できます。

さらにトレースビューでは、ツール呼び出しの実行時間・メモリ、エージェントの実行パスといったスパン詳細も確認できます。アラート設定にも対応し、ベースラインからの逸脱を検知して対応を早められます。

OpenTelemetry準拠で計装する2つの方法

https://help.splunk.com/en/splunk-observability-cloud/observability-for-ai/splunk-ai-agent-monitoring

計装方式は大きく2つです。ゼロコード計装はアプリコードを変更せず、OpenTelemetry GenAIユーティリティ経由でメトリクスとトレースを送ります。Python 3.10以上が前提です。コードベース計装はOpenTelemetry GenAIユーティリティのAPIを直接組み込み、Workflow・AgentInvocation・LLMInvocationといったGenAIデータ型で計測します。

ゼロコード計装が対応するフレームワークには、LangChain/LangGraph、CrewAI、OpenAI Agents、LlamaIndex、GCP VertexAI、FastMCP、Weaviateなどがあります。すでにサードパーティの計装ライブラリを使っている場合は、対応ライブラリ経由でデータを取り込む方法も選べます。

基盤はOpenTelemetryのGenAIセマンティック規約と、Linux FoundationプロジェクトのCisco AGNTCYです。AGNTCYは80社以上が参加するエージェント相互運用の標準化プロジェクトで、Splunkはベンダーロックインを避けた計測を掲げています。

Cisco AI Defense連携でセキュリティを補強

Splunkは今後、Cisco AI DefenseとAI Agent Monitoringを統合する予定です。双方向のガードレールにより、プロンプトインジェクション、機密データの流出、有害コンテンツなどのリアルタイム脅威をブロックし、AIセキュリティ標準への準拠を支援します。2026年2月の発表時点では、PII(個人を特定できる情報)漏洩やポリシー違反の検知も統合の対象とされています。

AI Agent Monitoringは、2025年から提供されているAI Infrastructure Monitoring(GPU利用率、ベクトルDB、Cisco AI PODなど)と合わせて、AIスタック全体の可観測性を担う構成です。実験段階から本番運用へ移行するチームにとって、エージェント単位の品質とコストを数値で追える点が実務上の価値になります。