固定ワークフローは1回きりの出力で終わる。Claude agentsは、実行・検証・修正をループし、条件を満たすまで動き続ける。
この記事では、AnthropicのClaude Agent SDKとClaude Codeが、なぜ従来の自動化を超えられるのかを整理します。エージェントループの中身、ツールとSkills、サブエージェントによる検証まで、実装の視点から解説します。
この記事でわかること
- 固定ワークフローとエージェントの決定的な違い
- エージェントループが「実行→検証→修正」を繰り返す仕組み
- Skillsとサブエージェントが長時間タスクを支える理由
- 検証ルールを設けると自律実行の精度が上がる理由
固定ワークフローの限界
従来のAI自動化は、入力を決めた手順に沿って処理を進める「ワークフロー」型が主流でした。メールの分類、RAG(Retrieval-Augmented Generation、検索結果を参照して回答を生成する方式)によるコード補完など、各ステップの入出力が事前に決まっています。
AnthropicのThariq Shihipar氏は、AI Engineer 2026のワークショップで、こうしたワークフローとエージェントの違いを次のように整理しています。ワークフローは構造化された多段処理で、エージェントは自ら文脈を組み立て、行動の順序を決め、高い自律性で動く(参考)。
固定ワークフローの弱点は、途中で失敗しても次の試行が組み込まれていない点です。テストが落ちても止まる、フォーマットが崩れてもそのまま出力する。人間が結果を見て手戻しする前提の設計になりがちです。
エージェントループが変えること
https://code.claude.com/docs/en/agent-sdk/agent-loop
Claude Agent SDKの中核は、Claude Codeと同じエージェントループです。公式ドキュメントでは、次の5段階で説明されています。
- プロンプトを受け取る
- Claudeがテキスト応答かツール呼び出しを返す
- SDKがツールを実行し、結果をClaudeに返す
- ツール呼び出しがなくなるまで2と3を繰り返す
- 最終結果を返す
「auth.tsの失敗テストを直して」という指示なら、テスト実行→ファイル読み込み→コード修正→再テスト→完了報告、という流れが1セッション内で自動的につながります。公式ドキュメントの例では、ツール呼び出しを含む3ターンのあと、テキストのみの最終ターンで終了します。
Anthropicのエンジニアリングブログでは、このサイクルを「文脈収集→行動→検証→繰り返し」と表現しています(参考)。検証ステップが入ることで、エージェントは出力を出して終わりではなく、結果を読み取って次の行動を選べます。
ツールが「コンピュータ」を与える
エージェントがループで動くには、テキストだけでなく行動手段が必要です。Claude Agent SDKには、Claude Codeと同じビルトインツールが備わっています。
| カテゴリ | 主なツール | 役割 |
|---|---|---|
| ファイル操作 | Read, Edit, Write | 読み取り・修正・新規作成 |
| 検索 | Glob, Grep | パターン検索・内容検索 |
| 実行 | Bash | コマンド・スクリプト・git操作 |
| Web | WebSearch, WebFetch | 検索・ページ取得 |
| オーケストレーション | Agent, Skill | サブエージェント起動・Skills呼び出し |
Anthropicは「Claudeにプログラマと同じ道具を渡す」設計を採っています。ターミナル経由でbashを実行し、ファイルを編集し、lintやテストを走らせる。コーディング以外でも、CSVの解析、Web検索、資料生成など、PC上の作業全般に応用できます。
読み取り専用ツール(Read, Glob, Grepなど)は並列実行され、WriteやBashなど状態を変えるツールは順次実行されます。競合を避けつつ、調査フェーズを高速化する仕組みです。
Skillsが専門知識を差し込む
https://www.anthropic.com/engineering/equipping-agents-for-the-real-world-with-agent-skills
Skills(スキル)は、指示・スクリプト・リソースをフォルダにまとめ、エージェントが必要に応じて読み込む仕組みです。Anthropicは「新入社員向けオンボーディング資料を渡す」イメージで説明しています。
たとえばWord文書やフロントエンドデザインの作成手順をSkillとして定義しておけば、エージェントはタスク開始時にSkillの内容を読み込み、コード生成やスクリプト実行に活かします。Shihipar氏はワークショップで、Skillsを「反復可能で専門性の高い指示を文脈に載せる方法」と位置づけています(参考)。
SkillsはClaude Code、Claude Agent SDK、Claude Developer Platformで利用できます。サブエージェント定義のskillsフィールドに指定すれば、起動時にSkill全文が注入され、探索コストを下げられます。
サブエージェントと検証
長時間タスクでは、コンテキストウィンドウ(1回の会話で扱える情報量の上限)がボトルネックになります。サブエージェントは独立したコンテキストで動き、結果の要約だけ親エージェントに返します。
用途は大きく2つです。複数の調査を並列実行する点と、検証を分離する点です。Anthropicのベストプラクティスでは、実装を担当したエージェントとは別のサブエージェントにレビューを任せ、作業者自身が採点しない構成を推奨しています(参考)。
検証の方法は3段階に分けられます。
ルールベース — lint、コンパイル、スキーマ検証など、pass/failが明確なチェック。Claude Codeでは、未読ファイルへの書き込みをハーネス側が拒否するといった決定論的な制約も入ります。
視覚的フィードバック — UI生成やHTMLメールなど、PlaywrightなどのMCPサーバーでスクリーンショットを取得し、出力を目視相当で確認する。
LLM as a judge — 別モデルやサブエージェントにトーンや正確性を評価させる。コストとレイテンシは増えますが、曖昧な基準のチェックに使えます。
Claude Codeのベストプラクティスでは、Stop hookでスクリプト検証が通るまでターン終了をブロックする方法も紹介されています。8回連続で失敗すると強制終了する安全装置付きです。
24時間動かす実用例
X上の開発者向け投稿では、Mac Miniを常時稼働させ、Claude・Obsidian・Whisperを組み合わせてYouTube講義を自動要約する例が紹介されています。YouTubeリンクから音声を抽出し、ローカルで文字起こし、Claudeがキーコンセプト・タイムスタンプ・関連ノートへのリンクを生成する流れです。
ここで重要なのは、要約して終わりではなく検証ルールを設ける点です。「4セクション構成」「Wikiリンク2本以上」「最大3回リトライして停止」といった条件を課すことで、品質のばらつきを抑えます。固定ワークフローなら1回の生成で終了しますが、エージェントなら条件を満たすまでループできます。
常時稼働のインフラとしてMac Miniが注目される背景には、クラウドSaaSの月額コストを自前サーバーに置き換える動きもあります。ただし推論そのものはAnthropic APIなど外部サービスを使う構成が一般的で、ハードウェアは「24時間エージェントを走らせるホスト」として機能します。
ワークフローとエージェントの使い分け
すべてをエージェント化する必要はありません。Shihipar氏は、入出力が固定されたGitHub Actions的な処理でもClaude Agent SDKを使う例を挙げています。Issueトリアージでリポジトリをcloneし、Dockerでテストまで走らせる必要があるなら、固定手順だけでは足りずエージェント的な柔軟性が要る、という判断基準です。
Anthropic自身の指針は明快です。作業結果を検証できるタスクほど、エージェント向きです。コードにはlintとコンパイルがある。調査には出典引用がある。検証手段がなければ、自律ループを回しても品質保証が難しくなります。
Claude agentsが通常の作業フローを置き換えうる理由は、文章生成力ではなく、ツール実行・ファイル操作・テスト・修正をループでつなぎ、検証まで自動化できる点にあります。Skillsで専門手順を注入し、サブエージェントで並列化と独立レビューを実現する。固定ワークフローが「1回の出力」で終わる設計なら、エージェントは「条件を満たすまで動くシステム」として設計できます。