住所を指定するだけで、実在の街並みをもとにした画像や動画が作れるようになりました。
GoogleのAI映像制作ツール「Google Flow」に、Google MapsのStreet View(ストリートビュー)と連携する機能が追加されています。2026年6月23日、Google Flow公式アカウントが発表し、クリエイター向けのチュートリアルも公開されました。本記事では、新機能の概要と使い方、背景にある技術、注意点を整理します。
この記事でわかること
- Street View連携で何ができるか
- Agent Modeでの具体的な操作手順
- Maps Imagery Groundingという技術の位置づけ
- 利用条件と料金プラン
何が変わったか
Google FlowのAgent(エージェント)が、Street Viewの実写パノラマ画像を参照して画像・動画を生成できるようになりました。
Google Flow公式の説明では、キャラクターを実在のローカルシーンに配置したり、都市のランドマークをスタイル変換したり、近所の風景を再解釈したりする際に、実世界の映像を参照するとしています。従来はプロンプトの文章だけで場所を指定していましたが、Street Viewの建築物や地形データが生成の土台になります。
現時点では、米国内のStreet Viewロケーションのみが対象です。日本を含む海外の住所は使えません。
背景にある技術
この連携の根底にあるのは、Google Maps Platformが提供する「Maps Imagery Grounding」です。Googleの生成画像モデルと、Google Mapsが収集したStreet Viewの実写データを組み合わせ、生成コンテンツを現実の場所に固定する技術です。
Google Maps Platformのブログでは、実在の建築物や地理的文脈を反映した高忠実度のストーリーを、現地撮影や複雑なVFXなしで作れると説明されています。同じ技術は、2026年5月にGoogle AI Ultra向けの実験プロトタイプ「Project Genie」にも導入済みです。
TechCrunchの取材(参考)では、Google MapsのJonathan Herbert氏が、Street Viewの完全な再現よりも「空間的連続性」がブレークスルーだと述べています。360度回転しても背後の環境を正しく記憶し、その上に新しい環境を構築できる点が強みです。クリエイターBilawal Sidhu氏は、この仕組みを「spatial RAG(空間的な検索拡張生成)」と表現しています。
Street Viewは20年かけて110カ国以上で2800億枚以上の画像を収集しており、Googleが持つ最大級の実世界データセットの一つです。Flowへの統合は、このデータ資産をクリエイティブ制作に直接つなぐ動きと言えます。
使い方
操作は3ステップです。
- Google FlowのAgent Modeを開く
- プロンプトに米国内の具体的な住所や場所を含める
- 生成された画像を確認し、必要に応じてアニメーション化する
クリエイターのJerrod Lew氏が公開したチュートリアル(参考)では、Agent Modeを有効にし、米国内の住所を指定して画像を再現させ、その後アニメーション化する流れを示しています。まず静止画としてStreet Viewの風景を再構築し、次のステップで動きを加える二段階のワークフローです。
プロンプトでは、場所名だけでなくカメラの動きやスタイルも指定できます。Google公式ブログのFlow活用Tips(参考)では、「wide shot」「tracking shot」「aerial view」などの映像用語を入れると、意図した構図に近づきやすいとされています。
既存機能との関係
Google Flowは、Google DeepMindのVeo(動画生成)、Imagen(画像生成)、Gemini(プロンプト理解・編集)を組み合わせたAI映像制作スタジオです。2025年5月のGoogle I/Oで公開され、公開から数週間で3500万本以上の動画が生成されたとGoogleは報告しています。
Street View連携以前から、Flowには「Frames to Video」(開始フレームを指定して動画化)や「Ingredients to Video」(キャラクターや小道具を一貫して使う)といった機能がありました。Street View連携は、これらの機能に実在の場所データを自動で供給するレイヤーとして位置づけられます。
手動でStreet ViewのスクリーンショットをアップロードしてFrames to Videoに渡す方法と比べ、Agent Modeなら住所を伝えるだけで参照画像の取得から生成までを一気通貫で処理できます。
料金と利用条件
Google FlowはGoogleアカウントがあれば無料で試せます。無料枠では1日50クレジットが付与され、Agent Modeも利用可能です。
有料プランは以下のとおりです。
| プラン | 月額 | Flowクレジット |
|---|---|---|
| Google AI Plus | $4.99 | 200/月 |
| Google AI Pro | $19.99 | 1,000/月 |
| Google AI Ultra | $99.99 | 10,000/月 |
| Google AI Ultra | $199.99 | 25,000/月 |
上位プランほどAgentへのアクセス上限が高くなります。クレジットは月末に失効し、翌月への繰り越しはありません。18歳以上が対象で、国や地域によって利用可能な機能に差があります。
活用シーンと限界
不動産の物件紹介映像、観光地のプロモーション、映画やCMのプリビジュアライゼーション(事前視覚化)など、実在の場所を背景にした制作に向いています。Google Maps Platformのブログでは、撮影コストを数ヶ月から数日に短縮できる点を強調しています。
一方で、現段階ではいくつかの制約があります。対象地域は米国のみ、生成品質はゲーム的な表現にとどまる場合がある、物理法則の再現はまだ不完全——TechCrunchの取材では、研究者が品質面で動画生成モデルより6〜12ヶ月遅れていると見積もっています。実在の街並みをそのまま写し取る用途より、雰囲気や構図を借りたクリエイティブ表現に向いています。
Project Genieと同様、Street View連携も実験的な機能です。精度や対応地域は今後拡大される見込みですが、現時点ではプロトタイピングやアイデア出しの段階で使うのが現実的です。
