スマホ単体でAIエージェントを動かす——その設計が、ついに形になった。
2026年6月28日、Write for iOSの開発者Tanmay氏が、iPhone向けAIエージェント「Halo」を発表しました。サーバーを介さず、端末内にエージェントの実行基盤(ハーネス)を置く設計です。MCPによるアプリ操作、Skills、サブエージェント、記憶とRAGの自動更新まで、個人向けエージェントに求められる要素がひとつのアプリにまとまっています。
この記事でわかること
- Haloが何で、従来のエージェントと何が違うか
- オンデバイス・ハーネス設計の意味と利点
- MCP・Skills・サブエージェント・記憶/RAGの各機能
- 類似プロジェクトとの位置づけ
Haloとは何か
Haloは、Tanmay氏が1年以上かけて開発したiPhone向けのパーソナルAIエージェントです。Tanmay氏はWrite for iOS、Write for Mac、Finama、SoorなどのiOS/macOSアプリを手がけてきた開発者で、発表ポストは約24.9万回の閲覧、2100件超のいいねを集めました(参考)。
従来のパーソナルエージェントの多くは、MacやVPS上にゲートウェイを置き、スマホはチャット画面に徹する構成でした。OpenClawのようなクライアント・サーバー型は、常時稼働のマシンとセットアップが前提になります。Haloはこの前提を外し、iPhone単体でエージェントの実行環境を完結させる点を打ち出しています。
サーバー不要のオンデバイス・ハーネス
Haloの中核は、端末上で動くカスタムのエージェント・ハーネスです。ハーネスとは、LLMの推論結果を受け取り、ツール呼び出し・権限管理・コンテキスト維持を担う実行基盤を指します。モデル本体とは役割が分かれており、同じハーネスに異なるLLMを接続できる設計です。
Tanmay氏は「任意のLLMプロバイダーに対応する」と明言しています。Claude、GPT、Geminiなど、ユーザーが選んだAPIをハーネス経由で使える想定です。推論そのものはクラウドAPIに委ねる場合もありますが、エージェントの制御ロジックとデータはiPhone上に留まります。
AI自動化に詳しいそら氏も、この設計を「サーバーなしでスマホ上にハーネスを置く」と評価しています(参考)。PCを常時起動しておく必要がなく、外出先でもエージェントを動かせる点が実用上のメリットになります。
MCPでアプリや外部ツールを操作する
MCP(Model Context Protocol)は、AIエージェントと外部ツールを接続するための標準プロトコルです。カレンダー、メモ、Web検索、ファイル操作など、MCPサーバーとして公開された機能をエージェントが呼び出せます。
HaloはMCPに対応しており、iPhone上のエージェントからアプリ操作や外部サービス連携を行える設計です。デスクトップ向けのMCPサーバー(iPhone操作系のblitz-iphone-mcpなど)が「PCからスマホを遠隔操作する」構成であるのに対し、Haloはエージェント本体をスマホ内に置き、MCPを内蔵機能として使う方向性です。
Skillsとサブエージェント
Skillsは、エージェントに追加できる再利用可能な手順セットです。Claude CodeのSkillsや、LoopHarnessのプラガブルなSkillシステムと同様、特定のワークフローをモジュールとして差し込む仕組みです。メール整理、リサーチ、コードレビューなど、タスクごとに手順を定義しておけます。
サブエージェントは、親エージェントから分岐して動く独立したエージェントです。長時間の調査や並列タスクをバックグラウンドで任せ、結果だけ親に返す構成が一般的です。LoopHarnessやPalviaといったiOS向けエージェント基盤でも同様の機能が実装されており、Haloもこの設計パターンを採用しています。
記憶とRAGの自動更新
Haloは「自己更新するWiki形式の記憶とRAG」を謳っています。RAG(Retrieval Augmented Generation)は、過去の会話や文書から関連情報を検索し、推論に組み込む手法です。
通常のチャットアプリは会話が終わると文脈を失います。Haloは対話の中で得た知識を端末内の記憶ストアに蓄積し、Wikiのように自動更新する設計です。次の会話で過去の事実を引き出せるため、「先週話した件の続き」といった長期タスクに向いています。データは端末内に留まるため、プライバシー面でもクラウド依存型と差別化できます。
類似プロジェクトとの比較
iPhone上でエージェントを動かす試みは、Halo以前から複数存在します。
LoopHarnessはiOS/macOS向けのオープンソース・ハーネスで、Skillシステムとサブエージェント、音声パイプラインを備えています。PalviaはSwiftDataによるオンデバイス記憶とサブエージェント、ブラウザ自動化を特徴とするiOSアプリです。PegasusはPythonランタイムを内蔵し、llama.cppでオンデバイス推論まで行う自律エージェントです。
Haloとの違いは、Tanmay氏がiOS/macOSアプリの商品設計に長年携わってきた実績を背景に、個人向けプロダクトとして統合した点です。オープンソースの基盤を自分でビルドする必要がなく、LLMプロバイダーの選択とMCP連携をアプリ内で完結させる体験を目指していると読み取れます。
現時点でわかっていることと不明点
現時点で公開されている情報は、Tanmay氏の発表ポストとデモ動画が中心です。GitHubリポジトリやTestFlightの公開リンクは確認できていません。リリース時期や料金体系についても、発表時点では言及がありません。
一方で、1年以上の開発期間、約24.9万回の閲覧を記録した発表、MCP・Skills・サブエージェント・RAGという2026年時点のエージェント設計の要点を押さえた機能セットは、個人向けモバイルエージェントの方向性を示す材料として十分な情報量です。PC常駐型からスマホ完結型へシフトする流れの中で、Haloは注目に値する一手と言えます。