決済連携は、実装と日次運用の両方で手間がかかります。PayUは2026年6月25日、開発環境に直接組み込める2つのツール「PayU CLI」と「Builder MCP」を公開しました。実装フェーズではAIアシスタント経由で本番向けコードを生成し、運用フェーズではターミナルから支払いリンク作成や返金処理を実行できます。
この記事でわかること
- PayU CLIとBuilder MCPがそれぞれ解決する課題
- 各ツールの主な機能と対応言語
- 導入時の設定手順と使い分け
PayUが公開した2つの開発者向けツール
インドのフィンテック企業PayUは、決済ゲートウェイの実装と運用を分離して支援する2ツールを同時にリリースしました。Builder MCPは決済APIの組み込みコード生成に特化し、PayU CLIは本番稼働後の決済オペレーションをターミナル操作に移します。
PayU CTOのNarendra Babu氏は、リリース声明で「AIがソフトウェア開発を根本から変えた。加盟店と技術チームは、超高速な連携と運用の柔軟性を求めている」と述べています。2ツールは、開発者が普段使う環境——IDEとターミナル——にPayUの決済基盤を持ち込む設計です。
なぜダッシュボード依存がボトルネックになるか
決済連携の初期実装では、API仕様の読み込み、ハッシュ生成、Webhook検証など、ドキュメント横断の作業が発生します。従来はサンプルコードを探し、エラーハンドリングを自前で足す流れが一般的で、数日かかるケースも珍しくありません。
本番稼働後も、支払いリンクの発行、取引検索、返金、精算確認、レポート出力といった日常業務は管理画面を開いて操作する形が多く、DevOpsチームが複数加盟店を横断管理する場面では切り替えコストが積み上がります。
Builder MCP:AI IDEから決済コードを生成
Builder MCP(公式名称:PayU Devguide Builder MCP)は、MCP(Model Context Protocol)を使ったAIネイティブの開発支援サーバーです。Cursor、VS Code、Claude DesktopなどのAIコーディングアシスタントからPayUの開発ドキュメントと連携し、本番投入を想定したコードを取得できます。
https://docs.payu.in/docs/payu-devguide-builder-mcp-configuration
主な機能は3つです。get_payu_integration_catalogで製品・プラットフォーム別の連携一覧を参照し、get_payu_integration_codeで言語とスタックに合わせたコードスニペットを取得します。search_payu_docsは自然言語でPayU公式ドキュメントをセマンティック検索し、Webhookや返金フローなど概念面の質問にも答えます。
対応言語はPHP、JavaScript、Java、Python、Kotlin、Swiftなど7言語以上です。Pressリリースによると、従来数日かかっていた連携作業を数時間に短縮できるとされています。生成コードにはエラーハンドリング、Webhook検証、セキュリティのベストプラクティスが組み込まれます。
Builder MCPは開発ドキュメント専用で、OAuth認証は不要です。匿名利用は1分あたり30リクエスト、1日100リクエストまで。本番チーム向けにはAPIキーを ai-admin@payu.in へ申請してレート制限を引き上げられます。
PayU CLI:ターミナルから決済オペレーションを実行
PayU CLIは、PayUダッシュボードAPIをターミナルから直接呼び出すコマンドラインツールです。管理画面を開かずに、支払いリンク作成、取引検索、返金、精算確認、CSVレポート生成を実行できます。
https://docs.payu.in/docs/payu-cli
macOS/Linuxでは curl -fsSL https://payu-intrepos.github.io/payu-cli/install.sh | bash でインストールします。WindowsはPowerShell向けインストーラーが用意されています。初回利用前に、PayUダッシュボードの Developer > API Details から取得したClient ID、Client Secret、Merchant IDを payu config set で登録します。
コマンド体系は用途別に整理されています。payu pay create-linkで支払いリンクを作成し、payu txn listで期間指定の取引一覧を取得します。payu refund searchで返金を検索し、payu settlement getで精算情報を確認します。payu report createと payu report getの組み合わせで、取引・精算・返金・ペイアウトのCSVレポートを生成・ダウンロードできます。
複数加盟店の管理にも対応しています。payu account addと payu account switchでアカウントを切り替え、--profile testフラグを付ければサンドボックス環境と本番環境をプロファイル単位で使い分けられます。
2ツールの使い分けと連携イメージ
Builder MCPとPayU CLIは用途が異なりますが、決済ライフサイクル全体をカバーする組み合わせです。
| フェーズ | ツール | 主な用途 |
|---|---|---|
| 実装 | Builder MCP | 連携カタログ参照、コード生成、ドキュメント検索 |
| 運用 | PayU CLI | 支払いリンク発行、取引監視、返金、レポート |
Pressリリースの例では、Cursor上でBuilder MCPにPayUチェックアウト連携コードを依頼すると、エラーハンドリング付きのJavaScriptが返ります。一方、運用チームはCLIで「INR 5,000の支払いリンクを作成」「昨日の精算レポートを取得」といったコマンドを即座に実行できます。
なお、PayUには加盟店ダッシュボード操作向けのRemote MCP Server(https://api.payu.in/mcp)も別途存在します。こちらはOAuth 2.1認証が必要で、AIアシスタントから支払いリンク作成やレポート取得を直接実行できます。Builder MCPが「コードを書く」、Remote MCPが「本番データを操作する」、PayU CLIが「ターミナルから運用する」という3層構造になっています。
導入時の注意点
Builder MCPはドキュメントとコード生成に限定され、実際の決済処理やダッシュボード操作は行いません。本番デプロイ前には、PayUダッシュボードで認証情報、Salt、テスト環境と本番環境の設定を必ず確認してください。生成コードのハッシュアルゴリズムやエンドポイントは、最新の公式ドキュメントと照合する必要があります。
PayU CLIはClient IDとClient Secretをローカルに保存します。macOSでは初回利用時にKeychainアクセス許可が求められる場合があります。401エラーが出た場合は payu config show で認証情報を再確認してください。
決済開発の「場所」が変わる
PayUの今回のリリースは、決済連携をドキュメントサイトと管理画面から、開発者の作業環境へ移す動きです。Builder MCPが実装速度を上げ、PayU CLIが運用の手戻りを減らす。India発のフィンテックがAI時代の決済開発基盤を具体化した事例として、MCP対応の決済サービスを探している開発者は公式ドキュメントから試す価値があります。