エンタープライズAIの本番運用では、クラウドAPIだけでは足りない場面が増えています。データの移動ルール、ポリシー適用、パートナー連携まで含めた制御が求められるからです。

この記事では、データセンター事業者のDigital Realtyが2026年6月17日に公開した「ServiceFabric MCP」について解説します。

この記事でわかること

  • ServiceFabric MCPが解決する課題と位置づけ
  • 4つの機能領域と技術的な仕組み
  • 導入事例と今後の拡張方針

https://www.digitalrealty.com/platform-digital/connectivity/service-fabric

データセンター基盤をAIエージェントが直接操作できるようにした

Digital Realtyは、グローバルに800拠点超のデータセンターと第三者施設を束ねる相互接続基盤「ServiceFabric」に、Model Context Protocol(MCP)対応版を追加しました。正式名称はServiceFabric Model Context Protocol(MCP)です。

MCPは、Anthropicが2024年11月に公開したオープン標準で、AIシステムやエージェントがインフラやアプリケーション、企業内サービスと標準化されたインターフェースで安全にやり取りするための仕組みです。ServiceFabric MCPは、この標準をデータセンター運用に適用したプログラム可能な制御層として位置づけられています。

基盤となるのは、Digital RealtyのPrivate AI向け相互接続アーキテクチャ「AI Private Exchange(AIPx)」です。同社はポリシーとオーケストレーション技術に特許を持つと述べており、ServiceFabric MCPはAIPxの上に載る「AIネイティブな制御面」として機能します。

なぜ今、物理インフラのプログラム制御が必要か

Digital Realtyは、次のエンタープライズAI時代は電力密度、高度な冷却、主権的な配置といった物理インフラが鍵になると見ています。IDCのMary Johnston Turner氏は、Private AIインフラの企業導入が転換点に達したと指摘し、データ移動の制御やポリシー適用、パートナー連携を公共クラウドAPIだけでは賄えないケースが増えていると分析しています(参考)。

従来のネットワークオーケストレーションツールは、人間のオペレーターがGUIやAPIを通じて設定する前提でした。ServiceFabric MCPは、AIエージェントや大規模言語モデル(LLM)が標準インターフェースを直接解釈し、接続の設計からプロビジョニング、テレメトリ取得、セキュリティ制御まで自動化できる点が異なります。

4つの機能領域

ServiceFabric MCPは、次の4領域でAIネイティブな制御面を提供します。

設計とプロビジョニング

意図ベースの接続設計とプロビジョニングをMCP経由で行えます。APIとMCPインターフェースの両方から、接続リソースを設定できます。

ディスカバリとテレメトリ

容量、トポロジー、インベントリのリアルタイム発見に加え、スループット、レイテンシ、リンク健全性などのネットワークテレメトリを取得できます。

アイデンティティとセキュリティ

OAuth 2によるアイデンティティとアクセス制御を備え、ネットワーク接続に対するプログラム可能な制御を提供します。接続はすべてプライベートで、Layer 2およびLayer 3で動作します。

運用統合

エージェント支援の診断とトラブルシューティングに対応し、Slack、Microsoft Teams、Splunk、Datadogとの連携フックを備えています。

ベンダーロックインを避けた設計

ServiceFabric MCPは、公共クラウド、ネットワークサービスプロバイダー、ベアメタル、他社コロケーション環境を横断して動作するよう設計されています。商用・オープンソース・将来のAIモデルいずれにも対応し、Digital Realty施設のみでの運用や特定AIモデルへの固定を求めません。

同社は内部デプロイ、エンタープライズAI環境、パートナーエコシステムで検証済みとしています。パートナーにはePlus、Lenovo、Dellが名を連ね、NVIDIAやAMDの技術を使ったAIソリューションも展開中です。

医療画像AIを手がけるSee All AIのCEO、T. Michael Thornton氏は、NVIDIA DGX B200環境で大容量の画像データセットを安全に移動し、クラウドリソースへの動的接続を実現するために、Digital RealtyのBortonキャンパスとServiceFabricを利用していると述べています(参考)。

既存のServiceFabricとの違い

ServiceFabricはもともと、クラウド、パートナー、モデルプロバイダー、各拠点間のプライベート仮想接続を一元管理する相互接続基盤です。MCP対応前は、人間のエンジニアが接続を設計・プロビジョニングする運用が中心でした。

ServiceFabric MCPは、この基盤にAIエージェント向けの標準インターフェースを追加したものです。SDxCentralの報道では、ネットワーク分野でのMCP活用はトラフィックフローやガバナンスの下流処理に向く一方、Digital Realtyの実装はエージェントに接続の設計やプロビジョニングといった制御機能まで委ねる点が特徴的だと整理されています(参考)。

Foundation for AI戦略の第一歩

ServiceFabric MCPは、Digital Realtyが掲げる「Foundation for AI」アーキテクチャの最初のプログラム可能な層です。現時点ではプログラム可能なネットワーク接続が中心ですが、将来的にはスペース、電力、インベントリ、パートナーエコシステム、主権的デプロイパターンへと拡張する計画です。

CTOのChris Sharp氏は「ServiceFabric MCPはAIPxの基盤にプログラム可能な制御とエージェント対応インターフェースを追加するもので、特許ポジションはこのアーキテクチャへの長期投資を反映している」と述べています。

ServiceFabric MCPは2026年6月17日時点で利用可能です。Private AI環境の設計や運用を検討する企業は、Digital Realtyに容量、相互接続、統合オプションについて問い合わせる形で導入を進めます。