AIエージェントが「忘れない」時代になりました。
Anthropicは2026年4月23日、Claude Managed AgentsのMemory機能を公開ベータとして提供開始しました。
この記事でわかること:
- Memory機能が解決する課題
- メモリストアの仕組みと主要機能
- PythonでのAPIコード例
- Netflix・楽天など先行企業の実績
- 導入時のセキュリティ注意点
これまでの問題
Claude Managed Agentsはこれまで、セッションが終わると学習した内容がすべて消えていました。エージェントに同じ設定を何度も伝え直したり、前回のセッションで判明した問題をまた繰り返させてしまったりと、「毎回ゼロスタート」という制約がエージェント活用の大きな壁になっていました。
Memoryが変えること
Memory機能は、このセッション間断絶を解消するための仕組みです。エージェントはセッションをまたいでユーザーの好み、プロジェクトの規約、過去の失敗などを保持できるようになります。
メモリの実体はファイルです。エージェントはセッションのコンテナ内で /mnt/memory/ ディレクトリにマウントされたメモリストアを、通常のファイル操作と同じ方法で読み書きします。ファイルベースにすることで、開発者はAPIを通じてメモリをエクスポート・編集・削除する完全なコントロールを持てます。
主な機能
メモリストアの共有と権限管理
メモリストアはワークスペーススコープのドキュメント群として管理します。複数のエージェントが同一のストアを共有でき、エージェントごとに read_write(読み書き)または read_only(読み取り専用)のアクセス権を設定できます。たとえば、組織全体の規約を格納したストアはread_only、ユーザーごとの設定を格納したストアはread_writeという構成が可能です。
セッションあたり最大8つのストアをアタッチでき、所有者やアクセスルールが異なるメモリを役割ごとに分けて管理できます。
バージョン管理と監査ログ
メモリへの変更はすべてイミュータブルなバージョンとして記録されます。どのエージェントのどのセッションが書き込んだかを追跡でき、任意の時点に巻き戻すことも可能です。コンプライアンス要件のある用途でも、エージェントの学習内容を説明責任のある形で管理できます。
並行アクセスへの対応
複数のエージェントが同じストアに同時アクセスしても、互いに上書きしません。大規模な並行処理が必要な本番環境でも安定して動作します。
導入方法
Memory機能を使うにはAPIリクエストに managed-agents-2026-04-01 betaヘッダーが必要です(SDK使用時は自動設定されます)。
まずメモリストアを作成します。
store = client.beta.memory_stores.create(
name="User Preferences",
description="Per-user preferences and project context.",
)
print(store.id) # memstore_01Hx...
次に、セッション作成時にストアをアタッチします。
session = client.beta.sessions.create(
agent=agent.id,
environment_id=environment.id,
resources=[
{
"type": "memory_store",
"memory_store_id": store.id,
"access": "read_write",
"instructions": "ユーザーの好みとプロジェクトのコンテキスト。タスク開始前に参照すること。",
}
],
)
ストアには事前にコンテンツをシードしておくこともできます。各メモリの上限は100KB(約25,000トークン)です。大きなドキュメント1つにまとめるより、役割ごとに小さなファイルへ分割するのが推奨されています。
先行企業の実績
楽天はタスクベースの長時間エージェントにMemoryを導入し、初回エラーを97%削減、コストを27%、レイテンシを34%それぞれ改善しました。エージェントが過去の失敗から学習して繰り返さないようになった結果です。
文書検証サービスのWisedocsは、よく登場するドキュメント上の問題をエージェントがMemoryに記録する仕組みを構築し、検証スピードを30%向上させました。
NetflixはMemoryを使って、複数ターンにわたる会話から得た洞察や人間からの修正内容をセッションをまたいで引き継いでいます。
セキュリティ上の注意
ユーザー入力や外部サイトの取得コンテンツなど、信頼できない入力を処理するエージェントには read_only ストアを使うことが推奨されています。read_write ストアの場合、プロンプトインジェクション攻撃が成功すると悪意のある内容がメモリに書き込まれ、後続のセッションで信頼済みの情報として読み込まれるリスクがあります。
参照用の情報や共有ルックアップテーブルは read_only で提供し、エージェントが変更する必要のあるストアのみ read_write にするのが基本方針です。
まとめ
Claude Managed AgentsのMemory機能は、エージェントに「経験の蓄積」を持たせる機能です。ファイルベースで透明性が高く、バージョン管理と監査ログによって企業利用にも耐えられる設計になっています。
公開ベータはClaude ConsoleまたはCLIから利用を開始できます。ドキュメントは Claude Platform Docs で参照できます。
