エージェントは作るより、安定して動かすほうが難しいです。ファイルを書き、コードを実行し、状態を持ち続けるなら、通常のコンテナ前提では足りません。Microsoft FoundryのHosted Agentsは、その運用負荷をまとめて肩代わりする設計です。

この記事では、Hosted Agentsが何を解決するのか、従来のコンテナ運用と何が違うのかを整理します。

  • 1セッションごとに分離された実行環境
  • スリープ後もファイル状態を戻せる仕組み
  • 企業向けのID管理とガバナンス
  • LangGraphやMicrosoft Agent Frameworkなどの持ち込み方

https://devblogs.microsoft.com/foundry/introducing-the-new-hosted-agents-in-foundry-agent-service-secure-scalable-compute-built-for-agents/

Hosted Agents で何が変わるか

Microsoft FoundryのHosted Agentsは、エージェントをコンテナの上で動かすだけの機能ではありません。各セッションに専用の隔離サンドボックスを割り当て、ファイルシステムを保持したまま実行します。公開ブログでは、2026年4月22日にpublic previewとして発表され、scale-to-zero、永続的なファイル状態、統合IDを前面に出しています。

この設計が効くのは、エージェントが単なるチャットではなく、コード実行やファイル編集を伴うからです。複数ユーザーが同じ実行環境を共有すると、状態の混線や権限の取り違えが起きます。Hosted Agentsは、そこを最初から分離します。

コンテナ運用の弱点を埋める

従来のコンテナやサーバーレスは、Web APIには向いていても、長く状態を持つエージェントには向きません。Microsoftは比較表で、従来方式では複数セッションが同じコンテナを共有し、状態管理やID、監視を自前で作る必要があると説明しています。Hosted Agentsでは、隔離、状態保持、観測がプラットフォーム側に寄ります。

特に重要なのは、アイドル時に停止しても$HOME/filesの内容が戻る点です。15分アイドルで計算資源は外れますが、セッション状態は保持されます。最長30日までセッションを維持できるため、長時間の調査、コード生成、レポート作成のような作業と相性が良いです。

使いどころは「長く動くエージェント」

Hosted Agentsは、短い関数実行よりも、継続的に仕事を進めるエージェント向けです。たとえば、リポジトリを読み込んで修正案を作るコードエージェント、複数資料を読み比べて要約する調査エージェント、運用ログを見て対処するopsエージェントが該当します。

ブログでは、各セッションが独立したVM隔離サンドボックスを持ち、予測しやすいコールドスタートとscale-to-zeroを両立すると説明しています。つまり、常時起動の高コストを避けつつ、作業再開時の遅延も抑える設計です。

フレームワークを固定しない

もう1つの特徴は、実装の自由度です。MicrosoftはHosted AgentsでLangGraph、Microsoft Agent Framework、Claude Agent SDK、OpenAI Agents SDK、GitHub Copilot SDKなどを持ち込めると明記しています。Dockerfileで必要な依存関係を定義し、azd deployで公開する流れです。

この方針は、エージェント基盤を1社のワークフローに閉じ込めないという意味があります。モデルもOpenAI、Anthropic、Meta、Mistralなどを前提にしており、ハーネスやモデルの差し替えをしやすくしています。

企業利用で効くのはIDとガバナンス

Hosted Agentsの実務上の価値は、性能よりも運用面にあります。各エージェントには専用のEntra IDが割り当てられ、ユーザー代理実行も扱えます。プロジェクト全体のマネージドIDを使い回さないので、監査と権限分離が明確です。

加えて、VNet連携、DLP、Responsible AIガードレール、OpenTelemetryベースの観測、評価機能が統合されています。個別に組み合わせると面倒な要素を、Foundryの中でまとめて扱えるのが強みです。

既存のエージェント基盤と比べる意味

Hosted Agentsは、エージェントを「動かす場所」ではなく「運用する単位」として見ています。セッションごとの隔離、状態保持、ID、観測、公開までを一体化するので、PoCから本番への落差を縮めやすいです。

すでに自前のKubernetesやコンテナ基盤で回しているなら、すべてを置き換える必要はありません。ただ、ファイル状態を持つ長寿命エージェントや、権限管理が厳しい業務エージェントを作るなら、Hosted Agentsのような専用基盤のほうが設計しやすいです。

Microsoft FoundryのHosted Agentsは、エージェント時代の「サーバー運用」をかなり前に進めます。作る段階より、壊れずに長く回す段階を楽にしたいなら、注目する価値があります。