Arch LinuxベースのディストリビューションCachyOSが、2026年4月版ISOをリリースした。今回はGUIパッケージマネージャの刷新を筆頭に、DNS-over-HTTPS対応、ハードウェア検出強化、NVIDIA周りの整理など実用面での変更が多い。
この記事でわかること:
- パッケージマネージャがOctopからShellyに切り替わった背景
- DNS-over-HTTPSの設定と自動サーバー選択の仕組み
- NVIDIAプロファイル分割とNVMe I/Oスケジューラ変更の意味
https://linuxiac.com/cachyos-april-release-brings-shelly-package-manager/
パッケージマネージャがShellyに切り替わった
CachyOS(キャッシュOS)はArch Linuxをベースに、x86-64-v3/v4やZen4向けのコンパイル最適化を施したローリングリリースディストリビューションだ。パッケージはすべてLTOとPGO付きで再ビルドされており、汎用バイナリのディストリに比べて体感速度が速い点が特徴になっている。
今回の4月版で最も目立つ変更は、インストーラ標準のGUIパッケージマネージャがOctopからShellyへ置き換わったことだ。Shellyはコミュニティ主導のGTK4ベースのフロントエンドで、CachyOSの開発チームが独自に整備している。Octopは長らくManjaroやCachyOS系でGUIパッケージ管理の定番として使われてきたが、GTK3ベースのUIや更新頻度の低さが課題とされていた。
既存ユーザーの移行作業は不要で、通常の sudo pacman -Syu を実行すれば新しい構成が反映される。
インストール後の初期設定が変わった
セットアップ面でもいくつか変更が加わっている。インストール直後に自動でシステムスナップショットを作成し、初期状態のリストアポイントとして保持するようになった。万が一の設定ミスやアップデート失敗時に元の状態へ戻しやすくなる。
GRUBの os-prober がデフォルトで有効になり、デュアルブート環境でWindowsやほかのLinuxを自動検出するようになった。マルチブート構成のユーザーには手間が一つ減る変更だ。
デスクトップ選択肢もわずかに整理されており、GNOMEパッケージセットが更新・簡素化された一方、UKUIデスクトップは提供が終了した。新たにMangoWMがdotfilesつきで追加され、DMSシェルからもインストールできる。
WelcomeアプリにDNS-over-HTTPSが統合された
CachyOS付属のWelcomeアプリにDNS-over-HTTPS(DoH)設定ページが加わった。内部ではblockyというDNSプロキシサーバーを使っており、次のことができる。
- 接続速度を測定して最速サーバーを自動選択する
- サーバーの地域やフィルタリング種別などのメタデータを表示する
- カスタムDNSサーバーを追加する
- DHCPインジケーターの表示とリセット
DNS-over-HTTPSはISPやネットワーク管理者によるDNSクエリの傍受を防ぐ仕組みで、プライバシーと通信の改ざん耐性を高める。OSインストール直後にGUIから設定できるのは実用上の利点が大きい。
またAMD・Intel GPU向けのVRAM管理トグルとして dmemcg-booster が追加された。KDE環境では plasma-foreground-booster も合わせてインストールされ、フォアグラウンドアプリへのGPUリソース優先割り当てが効く。高負荷なゲームや動画編集でメモリ枯渇を緩和するための措置だ。
ハードウェア検出ツールchwhが強化された
CachyOS独自のハードウェア検出・設定ツール chwd がいくつかの機能を追加した。
libusbとsysfs経由のネイティブUSBデバイス検出- シャーシ種別(デスクトップ/ノート)の自動判定
- 指紋認証リーダーをsudoプロンプトへ統合
- IntelのCPUファミリー・モデル検出(
intel-lpmd向け)
シャーシ検出は後述のNVIDIAプロファイル分割と連動しており、自動判定の精度が上がるほど設定の出し分けが正確になる。
NVIDIAプロファイルがノート・デスクトップで分かれた
NVIDIA関連の変更がまとまっていて、デスクトップとノートPCで別プロファイルを提供する体制に切り替わった。これまで一つのプロファイルで両者を扱っていたため、デスクトップでノート向けの省電力設定が適用されるといった問題が起きていた。
具体的には次の点が整理された。
- 各プロファイルでインストール済みカーネルの検出精度を改善
- 非ポータブルデスクトップの
mkinitcpio.confからkmsフックを削除(ドライバー競合の防止) - NVIDIA 470xxプロファイルから強制Xorgセッションを削除(Plasma Login Manager対応を改善)
さらに cachyos-settings の変更として、NVIDIA 595ドライバーで問題が出ていた S01x 電源管理を削除し、VR環境でのNVIDIA不具合の原因になっていた AggressiveVblank を無効化した。
NVMeのI/OスケジューラがKyberに変わった
システム設定の変更として、NVMeストレージのデフォルトI/OスケジューラがNoneからKyberへ切り替わった。
Noneは追加のスケジューリングを行わずカーネルの基本キューに委ねる設定だ。SSDの高速性を素直に引き出せる一方、読み書きが同時に発生する混合ワークロードではレイテンシが乱れやすい。KyberはLinux 4.12から導入されたスケジューラで、読み込みと書き込みに別々の優先度キューを割り当て、混合負荷下でのレスポンスを安定させる設計になっている。
ソフトウェア開発やシステム管理のようなディスクアクセスが交錯する用途では、体感のもたつきが減ることが期待される。
アップグレード方法
新しいISOを使わずとも、既存のCachyOSユーザーは以下のコマンドだけで今回の変更をすべて取り込める。
sudo pacman -Syu
手動の設定移行やパーティション操作は不要だ。ダウンロードページからISOを取得したい場合は公式サイトから入手できる。
まとめ
CachyOS April 2026は、Shellyへの移行とDNS-over-HTTPS統合がユーザー体験の面で目立つ変更だ。NVIDIAプロファイルの分割とNVMe I/Oスケジューラの見直しは地味だが、デスクトップ用途での安定性に直結する。パッケージが常に最新に保たれるArch系の中で、ハードウェア対応と使いやすさの両立を継続して進めている印象の内容になっている。