AIエージェントの設定を毎回ゼロから書く手間が、1コマンドで片付く時代が来ました。

この記事では、shadcn-labsが公開したオープンソースのエージェント配布キット「agentcn」の概要と、導入の流れ、収録レシピの内容を整理します。

この記事でわかること

  • agentcnが解決する課題と、shadcn/uiと同じ「コピペして所有する」思想
  • Eve・Flueのどちらでも使える17種のエージェントレシピ一覧
  • npx shadcn@latest add による1コマンド導入手順
  • 類似ツールとの違いと、カスタマイズのポイント

AIエージェント導入が遅れる理由

エージェントを本番運用に載せるには、プロンプト、ツール定義、ワークフロー、環境変数の設定がセットで必要です。多くのライブラリはnpmパッケージとして配布され、内部実装がブラックボックスのまま残ります。モデルを差し替えたり、ツールを1つ足したりする段階で、ライブラリの制約と格闘することになりがちです。

さらに、VercelのEve(ファイルシステムベースの耐久型エージェントフレームワーク)とFlue(サブエージェントやスキルを持つランタイム非依存のハーネス)では、エージェントの置き場所やファイル構成が異なります。参考実装を探しても、フレームワークごとに断片的な情報しか見つからないことが多いのが現状です。

agentcnが提供する解決策

agentcnは、shadcn/uiと同じレジストリ形式で、本番向けのエージェントレシピを配布するオープンソースプロジェクトです。2026年6月20日、shadcn-labs関係者のAniket Pawar氏がXで公開を告知しました。MITライセンスで無料利用でき、GitHubリポジトリは公開直後から開発が続いています。

最大の特徴は、ソースコードをそのままプロジェクトにコピーする点です。npx shadcn@latest add でレシピを取得すると、指示文(instructions)、ツール、スキル、ワークフローのファイルがローカルに展開されます。npmの依存パッケージとして隠れるのではなく、リポジトリ内の通常のソースとして残るため、読み込み・改変・バージョン管理がすべて手元で完結します。

公式ドキュメントでも「エージェントを不透明なパッケージとして配布するのではなく、フレームワークのプリミティブに近い形でソースを渡す」と明記されています(参考)。

主な機能

ゼロコンフィグと1コマンド導入

事前設定を最小限に抑えた状態で動くよう設計されています。Eveプロジェクトなら npx eve@latest init my-agent、Flueプロジェクトなら npx flue@latest init my-agent で土台を作ったあと、レシピ名を指定するだけでエージェント一式が入ります。

# Eve向け Deep Search レシピの例
npx shadcn@latest add @agentcn/eve/deep-search

Flue向けはパスが flue/ になります。

npx shadcn@latest add @agentcn/flue/deep-search

shadcn/ui互換のレジストリ形式

components.json にレジストリを1行追加すれば、以降は名前だけでインストールできます。

{
  "registries": {
    "@agentcn": "https://agentcn.vercel.app/r/{name}.json"
  }
}

shadcn CLIが使い慣れた開発者にとって、UIコンポーネントと同じ感覚でエージェントを追加できるのが大きな利点です。

EveとFlueの両対応

各レシピは、利用中のフレームワークに合わせた版が用意されています。Eve版は agent/ 配下にファイルが展開され、Eveが自動検出します。Flue版は agents/workflows/tools/skills/ に分散配置され、Flueのルートハンドラから呼び出せます。

フレームワーク 特徴 主な展開先
Eve Vercel Functions上で動く耐久型バックエンドエージェント agent/
Flue サブエージェント・スキル・ワークフロー対応のランタイム非依存ハーネス agents/ ほか

17種の実運用向けレシピ

レジストリには、業務シーンを想定した17種のレシピが収録されています。告知文の「10以上のproduction-ready agent recipes」は、この17種を指します。

レシピ名 用途の概要
Deep Search 質問を調査し、引用付きで回答が完成するまで反復
CSV to Questions CSVから質問セットを生成
Customer Feedback Summary 顧客フィードバックの要約
Meeting Notes 会議メモの整理
Chat with PDF PDF文書への質問応答
Flash Cards from PDF PDFからフラッシュカードを生成
Chat with YouTube YouTube動画の内容について対話
Docs Chatbot ドキュメント検索チャットボット
Chat with Database 自然言語からSQLでDB照会
GitHub PR Review PRの差分を取得しコードレビュー
Slack Agent Slack連携エージェント
Google Sheets スプレッドシート操作
Browser Agent ブラウザ自動操作
Claw Assistant サンドボックス付きアシスタント
Company Knowledge 社内ナレッジ検索
Docs Expert ドキュメント専門エージェント
Weather 天気情報の取得

各レシピのドキュメントページにはライブプレビューが埋め込まれており、インストール前に動作を確認できます。外部APIを使うレシピは EXA_API_KEY やデータベース接続文字列など、必要な環境変数がレシピごとに明記されています。

導入手順

1. フレームワークプロジェクトを用意する

EveまたはFlueのプロジェクトを先に作成します。どちらも npx で初期化でき、agentcnのレシピはこの土台の上に載せる形になります。

2. レジストリを登録する

プロジェクトの components.json@agentcn 名前空間を追加します。登録は1回だけで、以降は短い名前でレシピを取得できます。

3. レシピをインストールする

使いたいレシピ名を指定して shadcn add を実行します。CLIが依存パッケージ(eve または @flue/runtime)の不足を検知し、インストールを促してくれます。

4. 環境変数を設定して起動する

レシピが外部サービスを呼ぶ場合は .env にAPIキーを設定します。その後、各フレームワークの開発サーバーを起動し、エージェントを呼び出します。Eveは耐久セッション経由、Flueはルートハンドラ経由でアクセスします。

カスタマイズのしやすさ

インストール後のファイルはすべてプレーンなTypeScriptとMarkdownです。よくある変更は次のとおりです。

  • エージェント定義内のモデル名を差し替える
  • ツール定義ファイルを追加・編集する
  • 出力スキーマを業務要件に合わせて変更する

ランタイム依存を抱え込まない設計のため、レシピ導入後にフレームワークの生APIへ直接降りることも可能です。agentcnはあくまで出発点であり、長期的な制約にはなりません。

料金

agentcn自体はMITライセンスのオープンソースで、利用料はかかりません。ただし、レシピが呼び出す外部API(Anthropic、Exa、GitHubなど)や、EveをVercelにデプロイする場合のインフラ費用は別途発生します。コストはレシピとデプロイ先の組み合わせで変わるため、導入前に各サービスの料金表を確認してください。

類似ツールとの違い

shadcn-agents(LangGraph向けのPython CLI)や、Vercel AI SDKベースの agentcn.dev とは別物です。shadcn-labsのagentcnは、EveとFlueに特化したエージェントレシピ集であり、shadcn CLIのレジストリ形式をそのまま流用しています。

また、OpenCode向けに以前「AgentCN」と名乗っていた OCXkdcokenny/ocx)とも開発元・対象フレームワークが異なります。OCXはOpenCode拡張のプロファイル管理が中心で、shadcn-labsのagentcnはEve/Flueのバックエンドエージェント配布が中心です。用途とフレームワークを確認したうえで選ぶ必要があります。

こういう人に向いている

  • shadcn/uiの導入経験があり、同じCLI感覚でエージェントを試したい開発者
  • EveまたはFlueでエージェントを組み立てる予定があるチーム
  • ブラックボックスのSDKではなく、ソースを所有してカスタマイズしたい人

逆に、LangGraphやOpenCodeが前提の環境では、agentcnのレシピはそのまま使えません。フレームワークの選定から見直す必要があります。