AIエージェントやチームが、プロバイダごとにAPIキーを配布・回収する手間から解放されるツールが登場しました。

OpenClaw向けのAPIゲートウェイ「ClawRouter」が、MITライセンスで公開されています。Cloudflare Workers上で動き、単一のプロキシキーとGitHubログインで複数のモデルプロバイダへアクセスできます。本記事では、ClawRouterが解決する課題と主な機能、同種サービスとの違いを整理します。

この記事でわかること

  • ClawRouterが何をするツールか
  • 単一認証・プロキシキーで複数LLMを使える仕組み
  • 対応プロバイダと予算管理の概要
  • 似たサービスとの違い

複数プロバイダのAPIキー管理がボトルネックになる

エージェント開発やチーム運用では、OpenAI・Anthropic・Googleなど複数のLLM APIを併用する場面が増えています。プロバイダごとにキーを発行し、メンバーへ配布し、退職時に失効させる——この運用は手間がかかり、キーの漏洩リスクも高まります。

ClawRouterは、この課題を「中央ゲートウェイ+ポリシー管理」で解きます。上流プロバイダのシークレットはWorker側に集約し、エージェントや開発者には短命のプロキシキーだけを渡します。キーの無効化も、1件のクレデンシャル単位、またはポリシー単位で即時反映されます。

ClawRouterとは

ClawRouterは、OpenClawサービス向けの高スループットAPIゲートウェイ兼プロバイダルーターです。プロキシキー、サービスID、上流グラント、予算、従量課金の利用量を仲介し、モデルAPI・検索API・ツールAPIを横断してルーティングします。

エッジランタイムはCloudflare Workers上のTypeScriptで実装されています。アクセス制御はDurable Objectで直列化し、予算台帳や利用量レジャーもDurable Objectで管理します。リポジトリは2026年6月5日に作成され、MITライセンスで公開されています。

主な機能

単一認証とプロキシキー

管理コンソールはCloudflare Accessで保護されます。GitHub組織メンバーなど、事前に許可したアイデンティティでログインできます。デフォルトではopenclaw組織のメンバーが対象です。

ログイン後、ブラウザコンソールからプロキシキーを発行します。シークレットはブラウザ内でハッシュ化されてから登録されるため、平文のキーがサーバーに送られることはありません。エージェントやCodex、Claude Codeには、この1本のキーを渡すだけで複数プロバイダへアクセスできます。

16社超のモデル・ツールプロバイダ

プロバイダはYAMLマニフェストで宣言的に追加します。ビルトインの対応一覧は次のとおりです。

  • モデルAPI:OpenAI、Anthropic、Google Gemini、Azure OpenAI、AWS Bedrock、MiniMax、Mistral、Cohere、xAI、Groq、Perplexity、DeepSeek、Together、Fireworks、Hugging Face、Replicate
  • ゲートウェイAPI:OpenRouter、Cloudflare AI Gateway
  • ツールAPI:Tavily、Firecrawl

OpenAI互換のPOST /v1/chat/completionsPOST /v1/messages(Anthropic形式)に加え、POST /v1/proxy/<provider>/<endpoint>でマニフェスト定義のREST APIも転送できます。GET /v1/catalogで、キーに紐づく利用可能なモデルとルートを一覧取得できます。

予算と利用量の管理

ポリシーごとに月次予算(マイクロドル単位)を設定できます。リクエスト前にトークンコストの上限を予約し、応答後に実コストで精算します。SSEストリーミングもバッファせずに計測対象に含めます。

利用監査は30日間保持されます。プロンプトや応答本文は利用量レジャーには保存されず、ポリシー設定に応じてR2へ別途保管されます。/v1/usageで呼び出し元ポリシーの予算と利用サマリーを確認できます。

エージェント向けの設計

OpenClawネイティブのclawrouter-キールーティングや、エージェント属性ヘッダによる支出管理に対応しています。上流プロバイダのOAuthやSigV4認証も、マニフェストとスコープ付きグラント経由で同一のプロキシ経由で実行できます。

使い方の概要

Cloudflare上へのデプロイはWranglerとpnpmスクリプトで行います。pnpm cf:provisionでKV・キュー・Durable Objectを作成し、pnpm cf:accessでCloudflare AccessとGitHub IDプロバイダを設定します。本番ドメインの例としてclawrouter.openclaw.aiがREADMEに記載されています。

クライアント側は、発行したプロキシキーをAuthorization: Bearerヘッダに付けて、WorkerのベースURLへリクエストします。モデル指定はopenai/gpt-4.1-miniのようにプロバイダ/モデル名形式です。

類似ツールとの違い

同名の「ClawRouter」として、BlockRunAIが公開するローカルLLMルーター(GitHubスター数6,000超)も存在します。こちらはウォレット署名とUSDCマイクロペイメントで認証し、ローカルで15次元スコアリングによるモデル選択を行います。用途とアーキテクチャが異なる別プロジェクトです。

OpenRouterのようなマルチプロバイダゲートウェイに近い面もありますが、ClawRouter(openclaw/clawrouter)はCloudflare Accessによる組織認証、ポリシー単位の予算管理、Durable Objectによる即時失効に重点を置いています。チームやエージェント基盤の運用者向けの設計と言えます。

誰に向いているか

ClawRouterは、複数LLM APIのキー配布と失効を1本のプロキシキーに集約するゲートウェイです。Cloudflare WorkersとDurable Objectでエッジに近い場所で認証・予算・転送を処理し、16社超のモデルとツールAPIをマニフェストで拡張できます。OpenClawエコシステムの開発者や、エージェントにAPIキーを渡す運用を簡素化したいチームに向いた選択肢です。