AIコーディングエージェントを使うたびに、プロダクトの背景や優先事項を説明し直していませんか。2026年6月29日、開発者のidode氏が「Draft」を公開しました。デスクトップアプリとCLIで、チームのエージェント向け文脈をローカルに蓄え、自動で同期するオープンソースツールです。
この記事では、Draftが解決する課題と仕組み、主な機能、導入条件を整理します。
- Draftが自動で行うこと(文脈の収集・注入・チーム共有)
- 対応エージェントと連携先(Granola、Slack、GitHubなど)
- 個人利用とチーム運用の違い
- 導入に必要な環境と注意点
https://github.com/idodekerobo/draft
セッション開始のたびに説明し直す負担
Claude CodeやCursorなどのAIコーディングエージェントは、セッションごとにコンテキストがリセットされます。プロダクトの目的、直近の優先事項、チーム内の決定事項を毎回伝え直すと、作業開始までに時間がかかります。Notionやスプレッドシートにまとめても、エージェントのセッションに自動で読み込まれるわけではありません。
Draftは、この「説明の繰り返し」を減らすためのコラボレーション向けエージェント知識基盤です。作業用のコードとは別に、~/.draft/workspaces/<profile>/context/ 配下へ文脈ファイルを置き、セッション開始時にエージェントのシステムプロンプトへ注入します。インストール済みのスキルやMCPサーバーの情報も同じワークスペースで管理します。
バックグラウンドで文脈を集め、承認後に反映
Draftの動きは、入力ソースから文脈を集め、提案として届き、承認後にワークスペースへ書き込む流れです。
- Granola(会議メモ)、Slack(スレッドやチャンネル活動)、GitHub(PRやコミット、Issue)から情報を取得
- バックグラウンドデーモンがClaude経由で内容を要約・統合し、更新案を作成
- デスクトップアプリまたはCLIのインボックスに提案が届く
- ユーザーが承認した内容だけが
context/配下へ保存される - エージェントのセッション開始時にプラグインのフックが発火し、文脈を注入する
デーモンはmacOSのLaunchAgent(com.draft.daemon)として登録され、ログイン時に自動起動します。要約処理は利用者自身のClaudeサブスクリプション経由で実行され、Draft側がAPIを中継することはありません。データはローカルマシン上に留まります。
対応エージェントと連携先
Draftはエディタ非依存の設計で、Claude Code、Codex、Cursor、Hermes、OpenClawに対応しています。draft add <tool> コマンドで各エージェント向けプラグインをインストールします。プラグインは inject-context.sh をセッション開始時に実行し、on-session-end.sh でセッション終了後の要約ジョブをキューに入れます。
連携先は draft connect で設定します。GranolaはMCPまたはAPI、Slackはスレッドとチャンネル活動、GitHubはPRやコミット、Issueを対象にポーリングします。エージェントセッションの内容も分析対象に含まれ、会議やチャット、コード活動から文脈を継続的に更新します。
チーム共有はGitHubリポジトリ経由
チーム運用では、1人がキュレーターとなり、承認済みの文脈をGitHubリポジトリへ公開します。メンバーは draft load-team で最新の文脈をローカルに取り込み、各自のエージェントセッション開始時に同じプロダクト文脈が読み込まれます。
draft setup-collab # 共有リポジトリの設定(初回のみ)
draft publish # 承認済み文脈を共有リポジトリへプッシュ
draft load-team # チーム文脈をローカルへ取得
~/.draft/ 自体はGitリポジトリとして初期化されません。gh CLIの認証情報を使い、別クローンのパターンで同期します。リアルタイム共同編集ではなく、キュレーターが文脈を管理し、メンバーが読み取るモデルです。
導入方法と主要コマンド
macOS版デスクトップアプリは draftai.us からダウンロードできます。トレイアイコンとして常駐し、LaunchAgentの登録とエージェント向けプラグインの配線を自動で行います。ソースから動かす場合は、GitHubリポジトリをクローンして bash install.sh を実行します。
draft init # ワークスペースの初期設定(インタビュー形式)
draft daemon start # バックグラウンドデーモンの起動
draft proposals # 保留中の提案を確認
draft status # デーモン状態とアクティブプロファイルの表示
draft profiles # プロファイル一覧
draft switch <profile> # プロファイルの切り替え
デスクトップアプリにはBunとtmuxが同梱され、インストール時に自動展開されます。CLIのみでソース実行する場合は、Bunとtmuxを手動で入れる必要があります。チーム機能には gh CLIも必要です。
料金とライセンス
Draft本体はオープンソースで、GitHubリポジトリ idodekerobo/draft で公開されています。デスクトップアプリのダウンロードも無料です。ただし、バックグラウンドでの文脈要約には利用者自身のClaudeサブスクリプションが使われます。Draftがクラウド上にデータを保持したり、要約APIを代行したりすることはありません。
2026年6月30日時点の最新リリースは v0.4.2 です。
CLAUDE.mdとの違い
リポジトリ内の CLAUDE.md や .cursor/rules は、そのプロジェクト専用の指示を書く場所です。Draftはコードベースとは分離した ~/.draft/ 配下にプロダクト全体の文脈を置き、複数のエージェントや複数メンバーで共有します。会議メモやSlack、GitHub活動から文脈を自動収集し、提案→承認のフローで更新する点も異なります。プロジェクト単位のルール設定と、チーム横断のプロダクト文脈管理は役割が分かれます。
対応環境の注意点
Draftは現時点でmacOS(Apple Silicon)のみ対応です。Intel MacとWindowsは未対応とREADMEに明記されています。チーム全員が同じOS要件を満たす必要があるため、導入前に環境を確認してください。idode氏の公開ポストでは、完全ローカル・プライベート・オープンソースである点を強調しています。社内の会議内容やSlackのやり取りを扱うツールとして、データが端末外に出ない設計は実務上の安心材料になります。
Draftは「エージェントに毎回ブリーフィングする」作業を、ローカル文脈の自動注入とチーム同期に置き換えるツールです。AIコーディングエージェントをチームで使い始めた段階で、文脈の属人化が課題になっているなら、導入候補として検討する価値があります。