Claude Codeのタブを20個開いたまま、誰が何をしているか追えなくなった経験はありませんか。Paperclipは、複数のAIエージェントを「会社」として束ねるオープンソースのコントロールプレーンです。GitHubのスター数は7万2千超え、2026年3月の公開から急速に注目を集めています。

この記事では、Paperclipが何を解決するのか、どんな仕組みで動くのか、どう始めるのかを整理します。

この記事でわかること

  • Paperclipが「エージェントフレームワーク」とは何が違うのか
  • CEO・エンジニア・QAなど役割分担の仕組み
  • Node.jsとReactで構成される技術スタックと導入手順
  • Claude CodeやOpenClawなど既存ツールとの連携方法

https://github.com/paperclipai/paperclip

Paperclipとは何か

Paperclipは、AIエージェントのチームを経営するためのコントロールプレーンです。公式READMEでは「OpenClawが従業員なら、Paperclipは会社」と表現されています。エージェントそのものを作るツールではなく、すでに使っているClaude Code、Codex、Cursor、OpenClaw、bashスクリプト、HTTP Webhookなどを組織に組み込む層が主役です。

見た目はタスク管理ツールに近いUIですが、裏側では組織図、予算管理、ガバナンス、目標の紐づけ、エージェント間の調整が動いています。MITライセンスで公開されており、セルフホストで動かせます。Paperclipのアカウント登録も不要です。

なぜ今注目されているのか

マルチエージェント運用の課題は、個々のエージェントの性能より「組織として回す仕組み」にあります。複数のClaude Codeセッションを並列で動かすと、タスクの重複、コンテキストの喪失、トークンコストの暴走が起きやすくなります。Paperclipはこうした問題を、会社のメタファーで正面から扱います。

GitHubリポジトリ paperclipai/paperclip は2026年3月2日に公開され、執筆時点でスター数は7万2千超え、フォーク数は1万3千超えです。TypeScriptが主言語で、Node.jsサーバーとReact UIで構成されています。話題性の高さは、単なるデモではなく実運用を想定した設計が評価された結果と読めます。

主な機能

組織図と役割分担

会社を立ち上げると、まずCEOエージェントを配置します。CEOは会社のミッションを受け取り、戦略を立案して配下にタスクを振り分けます。CTO、エンジニア、デザイナー、マーケター、QAレビュー担当など、任意の役割をエージェントに割り当てられます。各エージェントには役職、報告ライン、権限、月次予算が設定されます。

ハートビート実行

エージェントは「ハートビート」と呼ばれる定期実行で動きます。スケジュールまたはタスク割り当てのイベントで起動し、担当業務を確認して行動します。セッション状態は永続化されるため、再起動後も同じタスクの文脈を引き継げます。組織図に沿って、上位から下位へ、また横断的な依頼も自動でルーティングされます。

チケットと監査ログ

作業はチケット(Issue)単位で管理されます。会話、意思決定、ツール呼び出しはすべて追跡可能で、監査ログとして残ります。タスクには会社・プロジェクト・目標の系譜が紐づくため、エージェントは「何をするか」だけでなく「なぜやるか」も把握した状態で動けます。

予算管理とガバナンス

エージェントごとに月次予算を設定でき、上限に達すると自動で停止します。トークン消費は会社、エージェント、プロジェクト、モデル別に追跡されます。採用の承認、戦略の上書き、エージェントの一時停止や終了も、ダッシュボードから操作できます。人間は「取締役会(Board)」として最終判断を握る設計です。

Bring Your Own Agent

Paperclipは8種類以上のビルトインアダプターを備えています。claude_localcodex_localでローカルCLIエージェントを、httpアダプターでOpenClawなどのリモートエージェントを接続できます。カスタムアダプターのプラグインも追加可能です。公式の言い方では「ハートビートを受け取れるものなら採用できる」状態になります。

料金とライセンス

Paperclip本体は無料のオープンソースです。MITライセンスのもと、自分のマシンやクラウドに自由にデプロイできます。ただし、エージェント側でClaude CodeやCodexなどのAPIを使う場合、その利用料は別途発生します。Paperclipの予算機能は、こうした外部コストの暴走を抑えるための仕組みです。

類似ツールとの違い

CrewAIやAutoGenのようなマルチエージェントフレームワークは、エージェントの実装とメッセージングをコードから組み立てる前提です。一方Paperclipはエージェントの実装方法を規定せず、組織・予算・ガバナンスの層に特化しています。AsanaやTrelloのような汎用タスク管理ツールにエージェントを接続する方法もありますが、Paperclipはタスクのチェックアウト、セッション維持、コスト監視、承認フローをエージェント運用向けに組み込んでいます。

OpenClawやClaude Code単体との関係も明確です。これらは「従業員」であり、Paperclipはそれらを雇って動かす「会社」です。単一エージェントの利用ならPaperclipは過剰ですが、複数エージェントを並列運用する場面で差が出ます。

使い方

最短の導入は、次のコマンド一行です。

npx paperclipai onboard --yes

これでローカルのループバックモードが起動し、すぐに試せます。LANやTailscale経由でアクセスしたい場合は --bind lan--bind tailnet を付けます。

ソースから動かす場合は、リポジトリをクローンして開発サーバーを起動します。

git clone https://github.com/paperclipai/paperclip.git
cd paperclip
pnpm install
pnpm dev

APIサーバーは http://localhost:3100 で立ち上がります。PostgreSQLは組み込みで自動作成されるため、別途DBのセットアップは不要です。動作要件はNode.js 20以上とpnpm 9.15以上です。

基本的な流れは3ステップです。まず会社の目標を定義します(例:「年商100万ドルのAIメモアプリを作る」)。次にCEOエージェントを採用し、使用するランタイム(Claude CodeやCodexなど)を選びます。最後に戦略を確認し、予算を設定して実行します。CEOが追加のエージェント採用を提案したら、Boardとして承認する形になります。

運用のコツと注意点

エージェントの挙動は、アダプター設定にあるペルソナプロンプトで制御されます。公式のX投稿でも触れられているように、エージェントが意図とずれた動きをした場合、パイプライン全体を組み直すのではなく、プロンプトを修正して軌道修正する運用が想定されています。新人社員への指導に近いイメージです。

一方で、ルール設計が甘いとエージェントが無関係なチケットを量産するリスクもあります。予算上限と承認ゲートを最初から設定し、小さな目標で試してから組織を拡大するのが現実的です。Paperclipはコードレビューツールではない点にも注意が必要です。PRのレビューは別プロセスで回す前提です。

最新リリースはv2026.626.0(2026年6月27日公開)で、Hermesアダプターのビルトイン化、タスクウォッチドッグ、Askワークモードなどが追加されています。開発は活発に続いており、クラウドエージェントやデスクトップアプリもロードマップに載っています。

こんな人向け

  • 複数のAIエージェントを24時間自律運用したい開発者
  • Claude CodeやCursorの並列セッション管理に限界を感じているチーム
  • トークンコストをエージェント単位で把握・制限したい人
  • スマホから複数のAI会社を監視したい個人起業家

Paperclipは「AIで会社を回す」という発想を、セルフホスト可能な形で具体化したプロジェクトです。エージェントの個々の賢さではなく、組織として動かす仕組みが主役です。複数エージェントの運用に悩んでいるなら、まず npx paperclipai onboard --yes で触ってみる価値があります。